BRAHMAN・RONZI「音楽のことをラーメンって呼べばいいんじゃないかな?」

ミュージシャンは普段どんな「メシ」を食べているのか、実はめちゃくちゃこだわっている「メシ」があるんじゃないか? ニュースクランチの編集部員が個人的な趣味で聞きまくる「ミュージシャンのこだわりメシ」。

今回は、BRAHMANのドラマーとして活動しながら、好き好きロンちゃん名義でアイドルとしても活動するRONZIさんが登場! 「ラーメン、つけ麺、ぼくブラフ麺! 幡ヶ谷のラーメンアイドル好き好きロンちゃんです!!」でお馴染みの彼に、ラーメン愛についてたっぷりと話を聞きました。

▲ミュージシャンのこだわりメシ ~RONZI(BRAHMAN)~

『北海道ラーメン 味源』に感動してラーメンの虜に

――RONZIさんのラーメン好きは多くの方がご存じだと思いますが、改めてラーメンにハマったきっかけを教えてください。

RONZI:ラーメンは小さい頃から好きでした。ラーメンを初めて食べたのは、スーパーのフードコートみたいなところで食べていた、という記憶があります。僕の小さい頃の大好物が、たまご豆腐だったんですけど、中華麺がたまご豆腐の味がした記憶があるんですよ!

たまご豆腐みたいな味がして美味しい! と思った記憶が残っていて。だから、小さい頃からラーメンは好きな食べ物で、美味しいなと思っていたんです。

――それが原体験なんですね。

RONZI:そうなんですよ。そこから月日が経って、高校を卒業して八王子に出てきたんですけど、八王子に『北海道ラーメン 味源』という味噌ラーメンをメインにやっている店があって。そこで初めて食べたときに「ラーメンにはすごいものがあるんだ!」と感動したんですよね。だから、ラーメンのすごさを体感したのは、味源の味噌ラーメンな気がします。

――ちなみに、幼少期の頃に食べていたラーメンのお味は?

RONZI:醤油だったと思いますね。なんてことのないTHE醤油。ラーメンって、やっぱり外で食べるほうが美味しいんですよ。家でも作ってくれていたけど、親は説明書き通りに作るんですよね(笑)。例えば、3分茹でるのであれば3分茹でて、あとは栄養のバランスを考えて野菜とかを入れてくるんですけど、それがあんまり好みじゃなくて……。

説明書き通りに麺を茹でると、どちらかというと柔らかくなってしまうイメージがあって。それがあんまり好きじゃなかった。ちょっと硬めのほうが、たまご豆腐のような風味がして好きだった気がします。

――味源の味噌ラーメンに衝撃を受けて、そこからどんなラーメン遍歴を辿っていかれるんですか?

RONZI:八王子ラーメンってご存知ですか? 自分は、八王子に住んでいたから馴染みがあるんですけど、当時はあまり意識していなくて。そういえば、薬味が玉ねぎだったかなという感じ。普通の醤油ラーメンなんですが、美味しいなという記憶があって。もっと意識して食べていればよかった……と後悔している節もあるんです。

その頃から、美味しいラーメンって世の中にたくさんあるんだと意識するようになりました。せっかくだからと、いろんなところに食べに行ってみようと意気込んだものの、当時はまだ若い頃でしたから、お金もなく……。ラーメン=外食なのでお金がないと食べれない。だから、たくさん食べれるようになったのは、BRAHMANのツアーを回るようになってからでした。

――お気に入りだったお店はありますか?

RONZI:やっぱり、味源が好きだったのと、『ラーメンショップ』が八王子にあったので、そこが美味しかった。ただ、お金がないから通ったりはできず、本当にたまに食べる感じ。

――月1のご褒美みたいな?

RONZI:いや、月1回も行けてないんじゃないかな? 本当に家賃も払えないくらいだったので……。当時は内装屋をやっていたんですけど、そこの親方が食べさせてくれるときにラーメンは食べていましたね。

――ちなみに、それって何年くらいのお話ですか?

RONZI:僕が19歳とか20歳くらいなので、30年前くらい。1990年代の話です(笑)。

美味しくないラーメンも好きです(笑)

――なんとなくですが、ラーメンが好きな人って、美味しいラーメン屋をたくさん知っていることにステータスを感じていると思うのですが、RONZIさんはちょっと違いますよね?

RONZI:確かにそうかもしれません。笹塚に名前も出したくもないようなお店があるんです。なんかね、美味しくないお店があるんですよ。食べて“うわ、美味しくないな”って思うんですけど、僕は、美味しくないラーメンも好きで(笑)。美味しくないなと思いながら食ったりもするんです。

――え、それってどういう感情なんでしょう?

RONZI:自分でもよくわからないんですけど(笑)。

――臭い匂いが嗅ぎたくなるというか……?

RONZI:うーん……。たしかに、笹塚のラーメンは臭いですね。僕、大阪とかに行ったりすると、今でこそ美味しいラーメン屋さんがいっぱいありますけど、昔は『どうとんぼり神座』か『金龍ラーメン』の2択だったと思うんです。

僕は、金龍って正直あまり美味しいとは思わないんですけど、めっちゃ好きで(笑)。食べて、“今回もあまり美味しくないな……”って思いながら食べている。一応、金龍は豚骨って言われているんですけど、あんまり味がしない。ただそれが食べたくて、大阪で味がしない薄い豚骨を探したりします。

――RONZIさんのように美味しいお店もクセのあるお店も楽しむって、めちゃくちゃラーメン愛を感じます。

RONZI:自分の好みではないものでも好き、というのがあるんですよね。ただ、最近思うのは、他のラーメン屋さんのレベルが上がっているから、僕が昔食べていたラーメン、例えば、中野の『青葉』とかは、今でこそスタンダードになってきているけど、僕の中には最初に食べたときの衝撃や美味しいと思っていた記憶が残っているわけです。

だからこそ、スタンダードになった今でも美味しくいただける。僕は過去を振り返ることは大事だと思っているんです。きっと今の皆さんはすごいラーメンをたくさん食べているから、ラーメンに対して不感症になっているのかもしれないですね。

――コレクターだからこその嗅覚というか。ツアー中もライブハウスの近辺だけでなく、遠方まで足を伸ばしたり?

RONZI:そうですね。ただ、全員を連れて行くのは悪いなと思うんです。当然ですけど「またラーメン?」って言うメンバーもいるので(笑)、なるべく自分一人で済ませるようにしていて、機材車を借りていろんなところに食べに行ったりしますね。特に地方だと、なかなか行くことができないので、午前中で3杯くらい食べ終わっていることもあります(笑)。

――すごい! やはり、RONZIさんのお話を聞いていると、自分はラーメン好きとは言えないなと思ってしまいます。

RONZI:いやいや、僕もサニーデイ・サービスの田中貴に比べたら、全然ですよ!

――あはは(笑)。それだけたくさんのラーメンを食べていると、変わり種のラーメンに出合うことも多いのでは?

RONZI:もちろん、たくさんあるけど、最近、西伊豆の土肥ってわかりますか? そこに『河津屋』というお店があって。「葱油湯麺(キョーソーメン)」というのがあったんですけど、それが面白かった。(ネギラーメン)と記載されていて、ネギとチャーシューを絡めた餡が素ラーメンにポチョンと乗っているんですよ。

それがまた、よくわからない味がするんです! 胡椒がめっちゃ効いていて、とろみがかかっていて、餡を溶かしながら食べていくと知らない味がするんですよ! 素ラーメンは、いわゆる中華屋にあるシンプルなもの。特徴がなく麺は伸び伸びに茹でてあるから、硬めが好きな人は絶対イヤだなという感じのものだけど(笑)。

澄んだスープにちぢれ麺が泳いでいて綺麗だな

――たくさんのラーメンとの出合いのなかで、思い出深いラーメンはありますか?

RONZI:そうですね〜。今となっては、三陸にはめっちゃ行くようになったんですけど、岩手県の宮古市に『たらふく』というお店があって、そこはずっと憧れのお店でした。澄んだ綺麗な浄土ヶ浜の水のようなスープの写真をずっと見ていて、“いつか食べれたらいいな”と思っていたんですけど、宮古市によく行くようになったので、最近はめちゃくちゃ食べていますね(笑)。

でも、最初に食べたときの感動は今でも忘れない! 煮干しがすごく効いているんですが、最近の流行りのような煮干し感ではなくて、綺麗で澄んでいるタイプの優しい味。油もほぼ浮いていなくて、そこにちぢれ麺が泳いでいて、綺麗だな〜って。

――RONZIさんが思う、音楽とラーメンの共通点ってなんだと思いますか?

RONZI:ラーメンと音楽……。めちゃくちゃ共通してますよ! ラーメンには種類があるかじゃないですか。それは、作り手によっても違うし、チェーン店であればお店ごとに味も違う。そして、季節によっても食べたい味って変化しません? 冬であれば味噌が食べたくなるし、九州に行けば豚骨が食べたくなったりとか、土地や風土でも変化していく。

音楽も一緒で、楽しいときには楽しい音楽が聴きたくなるだろうし、悲しいときには逆にポップな音楽を聴いて勇気を出すこともある。そのときの気分で聴きたい音楽は変わっていくし、流行りの音楽が聴きたいとき、古くからある音楽を聴きたいときだってある。だからラーメンと一緒だなって思うんです。

いっそのこと、音楽のことをラーメンって呼んじゃえばいいんじゃないかな? もしくはラーメンのことを音楽と呼ぶとか。全く同じものなんだから、僕はそう呼んでもいいと思ってる(笑)。食べるか聴くかの違い。人間が感じるということでは同じなんです。

――なるほど(笑)。RONZIさんにとってラーメンの魅力とは?

RONZI:そうですね〜、いろんな種類があるラーメンを一括りにしてしまうことも多いけど、例えば、その地方にしかない中華そばであったり、そういうものはそこに行かないと食べれないですよね。

じゃあ、そこになぜその中華そばがあるのかと考えると、歴史的背景があったりするんです。そういうものが面白い! ラーメンの成り立ちを知るだけで、その土地の歴史の勉強になったりもするし、ラーメンを介してというのがいいじゃないですか! 土地土地の歴史をラーメンで知る。とても面白いと思うし、そこが魅力ですね。

(取材:笹谷 淳介)


© 株式会社ワニブックス