「ポテンシャルが失われる前に、行けるところまで行きたい」中邑真輔が心境告白 「萎縮せずに気持ちを解放して」WWEジャパンツアーに向けファンにメッセージも

「WWE Super show Summer Tour」が7月25日に大阪・エディオンアリーナ大阪第1競技場、7月26、27日に東京・両国国技館で開催されることが決定した。日本でのWWE開催は2019年6月以来、じつに5年ぶりということで早くも大きな反響を呼んでいる。

【映像】心境を激白した中邑真輔

このWWEジャパンツアーで、統一WWE王者コーディ・ローデスと並ぶ“主役”のひとりである中邑真輔が、Zoomでインタビューに応じ、日本大会への思いやトリプルH体制の新時代を迎えたWWEについて語ってくれた。

(聞き手・文/堀江ガンツ)

――WWEジャパンツアーが5年ぶりに開催決定したことについて、どんな思いがありますか?

中邑 うれしいのもあるし、家族、友だちが早くもざわついてますね。「招待してくれるんでしょ」「終わったらどこご飯食べにいくの?」とか連絡が来て。「試合に集中させて」って思うんですけど(笑)。でも、ぼくも含めてレスラーはみんな楽しみにしてますね。

――日本での反響もすごいですよ。チケットの前売り状況もかなりいいと聞いています。

中邑 それはありがたいですね。

――いまWWEは、ますます世界で人気が広まってますよね。

中邑 やっぱりどこの国に行っても声をかけられますね。フランスでのPLE(5.4「バックラッシュ」)当日は試合がなかったので、ひとりでリヨンの街をうろちょろして。その後、電車に乗ってマルセイユに行って、また街をうろちょろしたんですけど、どこに行っても声をかけられて困りましたね(笑)。

――フランス大会は、Smackdownもバックラッシュもものすごい盛り上がりでしたよね。

中邑 はい、本当に。ぜひ、オンエアに映りたかったです。

――その後、コーディ・ローデスとの連戦が行われたUKツアーはいかがでしたか?

中邑 UKはしょっちゅう行ってる感じがするんですけど、今回もどの会場も非常に反応が良かったです。スケジュールがハードだったので、体はキツいですけど、あの歓声を聞くと力が出ますね。

――今春からWWEは本格的なトリプルH体制となり、なにか変わったと感じる点はありましたか?

中邑 変わった点は、PLEにおいては試合数が少なくなり、「試合内容をしっかりと見せる」という部分が強くなった気がしますね。選手としては、やっていることはあまり変わらないんですけど、ディテールを微調整したというか、試合に関して以前よりも自由が効くようになった感じはありますね。

――最近はRAWやSmackdownの放送を見ても「プロレスリング」という言葉が頻繁に出てきたり、レスリングにより重点を置くようになった感じもあります。新体制になって期待することはありますか?

中邑 自分もいろいろ溜まってるんで、そろそろこの思いを解放させてくれよと。俺もよくここまでコンディションを保ってんなと思うので、そのポテンシャルが失われる前に、行けるところまで行きたいと思ってますね。

――ライバルのAJスタイルが「自分には残された時間は多くない」という発言をこのところしていますが、中邑選手も自分に残された時間というものを考えたりすることがありますか?

中邑 ありますね。今年44になりましたから。控室にいても、自分がいちばん年上の時もある。もちろん自分より年上の選手もいるし、R-トゥルースなんて「一体いくつだよ?」って思ったりもするので(笑)。まだまだできると思っているし、コンディションさえ維持しておけば、上がって行けると思ってますけど。性格上、でっかい博打が打ちたくなる時が来るんですよね。それがいつになるのか。自然と流れでそうなるのか。そういう時が来るといいなと思ってますね。

――現WWE王者のコーディ・ローデスとは昨年から抗争が続いていることについて、手応えは感じていますか?

中邑 そうですね。でも、それだけで満足はできないので。それ以上というか、ここからさらにもう一段階上を求めているのが今だと思うので。結果はどうあれ、WWEに来てからの長いスパンの中で証明するべきことはしてきたと自負しているので、それを今後にどうつなげていくかでしょうね。

――昨年から中邑選手が行っている日本語での独白映像なんかは、WWEの中でも独特の個性を出せているな感じます。

中邑 あの映像に関しては、「こういうふうに言ってくれ」というものはあるんですけど、それを一回ぼくが噛み砕いて、自分の言葉にして話していますね。直訳してしまうとわけのわからない日本語になってしまうので、そういうものをちょっとアレンジし直して。それをまた英語に直してスタッフに戻したりとか。そういうヘルプもしてますね。

――ちゃんと中邑選手自身がディレクションもしてるんですね。

中邑 自分でアレンジを効かせてもらえる自由度もあるんですよ。だからアドリブで日本人しか笑えないようなネタや言葉をちょっと入れたりもしてますね(笑)。そういうことができるのもトリプルH体制になってからの変化でもあると思いますし、昨年RAWに移籍してそこのスタッフと親密になって作り上げていったものでもあるので。今年、SmackDownに来ると、また違うライターたちがいるので、その人たちにもまた自分のキャラを理解してもらわないといけないという作業が待ってますけどね。

――海外から昨今の日本マット界を見て、何か思うことはありますか?

中邑 日本は、次世代に向けた群雄割拠の状況にあるなと思ってますね。新日本プロレス、全日本プロレス、プロレスリング・ノア、DDT、ドラゴンゲートを含めて、20代ないし30代の選手たちが揃っていて。ただ、まだ頭ひとつ抜ける選手が出てきていない。そんな戦国時代っぽい感じが見て取れて、今じゃないと楽しめない雰囲気でもあるかなと思いますね。

――中邑選手たちの世代がトップに上がってきた頃のようなことが、約20年ぶりに起こっている感じですかね。

中邑 例えばぼくらの世代で言うと、同じ団体に棚橋弘至、柴田勝頼、中邑真輔、真壁刀義、後藤洋央紀がいて、NOAHに丸藤正道、KENTAがいるっていうような状況でしたけど。今の日本は、その頃よりも頭数は揃ってると思うんですよ。だから、ここでどう違いを見せて、個性を強烈にアピールできるかが鍵になってくると思うので。ここから誰が飛び出してくるのかなという期待感はありますね。

――先日、サイバーファイトの岡本新社長が、NOAHとWWEの関係強化を進めたい意向を明言したんですが、今後、日本とWWEの関係で期待することはありますか?

中邑 ぼくが年に数回、日本に帰国できるようになればいいなと思ってますけど(笑)。それ以外では、もっとWWEないし世界に挑戦してくる日本人が増えてきたらいいなと思ってますね。海外で生活するのは大変だとか危険だとかメディアを見て感じるかもしれないけれど、そこで普通に人が生活しているわけだから、実際に自分の目で見て肌で感じて経験することで違った感覚があるだろうし、その気があるなら、わき目もふらずに挑戦したらいいんじゃないかと思いますね。

――プロスポーツ選手が世界の舞台を目指すっていうのは、いまでは多くのスポーツで当たり前ですし、夢がありますもんね。

中邑 そうですね。自分も“日本代表”という気持ちは持ち合わせていますし。やはり、自分がどれだけのレスラーなのかを証明するためにも、リミットを設けずにがんばってほしいなと思いますね。

――WWE新時代を牽引するコーディ・ローデスのチャンピオンぶりを中邑選手はどう評価していますか?

中邑 すごく丁寧でマメなやつだと思いますね。あと、いい意味で悦に入ってる。そういうナルシスト的な部分もあそこまで行く人間にとっては持ち合わせるべきものなんじゃないかと。ぼく自身、彼から学ぶものもいっぱいあるし、彼もぼくから貪欲に学び取ろうとする姿勢が見られるし。実際、直接ぼくに聞いてきたりしてきた人間なので、これから闘っていきたいですよね。

――日本でも中邑真輔vsコーディ・ローデスが見たいという声がたくさんあります。

中邑 正直言うと、テレビで放送された試合以外も含めて「通算、何回やったんだ?」って思う部分もあるんですけど、そのクオリティに関しては絶対的な自信があるので。日本のファンにも生で見せたいなという思いはありますね。

――WWEジャパンツアーに関して、中邑選手自身はどんな期待感を抱いていますか?

中邑 これを中邑真輔のいい起爆剤にしたいですね。日本はホームなので、お客さんからもらえる力もハンパないし、観客席から感じ取れるものも格段に上がると思うので。お客さんも楽しみでしょうし、ぼく自身もすごく楽しみです。

――フランスに負けない盛り上がりに期待したいですね。

中邑 萎縮せずに気持ちを解放してくれたらいいなって思いますね(笑)。

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