故郷への「恩返し」選んだのは教師の道 2児の母、南アフリカ在住の元陸上選手が母校で教育実習(島根)

かつて島根県代表として国体などで活躍した元陸上選手の錦織育子さん。自分を育てくれた故郷に恩返ししたいと、5月から6月にかけて出雲市の母校で教育実習をしました。結婚後、夫の母国である南アフリカに移住。2人の子どもを育てる傍ら、島根県で教壇に立つ決意した錦織さんに思いを聞きました。

出雲市の県立平田高校。朝8時に元気に姿を見せたのは錦織育子さん。現在44歳、教員免許の取得を目指し、母校で3週間の教育実習です。

錦織育子さん:
23歳差なんですけれど同じ実習生で…。

教育実習生:
生きていた年数の2倍の方なので、種目は違えど大先輩という感じ。

錦織さんは高校時代、陸上部に所属。100メートル障害や走り幅跳びでインターハイや国体に出場。大学時代に棒高跳びを始め、2006年には当時の日本記録を更新。オリンピックの強化指定選手に選ばるなど、島根県を代表する選手として活躍しました。その後、2009年の結婚を機に夫の母国である南アフリカに移住し、2人の男の子に恵まれました。
現役時代は、自分を育てたふるさと・島根、そして平田地区の人たちに恩返ししたいという思いを胸に戦ってきた錦織さん。子どもが小学校に上がって、子育てにひと区切りついた時、教員として教壇に立ち、次の時代を担う子どもたちを育てることが1番の恩返しになると考え、教職の道を目指す決意を固めました。

錦織育子さん:
ずっと自分が主体で、自分が競技者で自分のことばかりして、母になってどういう風に伝えれば子どもが分かってくれるのか考えて、セカンドキャリアを考えた時に若い世代の力になりたいと思った。

教師である夫の後押しも受け、錦織さんは5年前、中学・高校の保健体育の免許取得を目指し、オンラインで授業が受けられる日本の大学に入学、2024年に教育実習に取り組むことになりました。

錦織育子さん:
慣れたような、慣れてないような、たくさんの生徒の前で話すのはまだ毎日緊張します。

教師の卵として、実際に学校の現場に立つ教育実習。1日1日がハードスケジュールです。朝の職員朝礼のあとは…。足早に受け持ちの1年1組の教室へ。

錦織育子さん:
朝礼始めましょう。おはようございます。

持ち前のスマイルで生徒に向き合います。ホームルームが終わると、スーツ姿からジャージ姿に変身、空き時間には授業を見学し、さらに実習授業の準備と、休む時間はありません。
この日は、2回目の実習授業で1年生のクラスでバレーボールの実技です。

錦織育子さん
ボールの下に入ってキャッチして投げて、とりあえず落とさないように続けてみよう。

錦織さんは生徒に「失敗したらドンマイ!!」などと積極的に声をかけながら元気いっぱい、笑顔で生徒に接します。

生徒:
来たばかりなのに馴染んていて、楽しくて明るくていい先生だと思います。

錦織さんを指導する日高圭教諭:
人生にプラスになるような関わりをどれだけしてあげられるかが大切だと思うので。その部分を大切にしていただきたいです。

そして放課後…錦織さんも高校時代に汗を流したグラウンドで、後輩の陸上部員の練習を見守りました。

陸上部員:
自分の出来ていないところを毎回的確なアドバイスを下さるので、練習がやりやすくて楽しいです。

陸上部員:
一流のアスリートの方に指導していただけることはめったにないので、精神的なメンタル面の指導もしていただいているので、そこも活かしていきたいです。

現役の部員たちにとって、高いレベルを知る先輩のアドバイスは大きな刺激になったようです。

錦織育子さん:
ほんとうに幸せなことです。選手が1秒でも速く走れたり、母校で育ててもらったように私も恩返しがしたくて・・・。

実習も残り4日となったこの日、恩返しの一つとして錦織さんは、運動部員を前に講演。メンタルとフィジカル両面で自分自身をどのようにコントロールするかなど、国内トップレベルを経験したアスリートの視点で話しました。

生徒:
怪我をしても諦めずに練習してすごいと思いました。

生徒:
自分も怪我したりしているのですが、怪我した時のメンタル面だったり、自分にもつながる部分があったりして良い機会でした。

錦織育子さん
島根に帰ってきたいです。島根県で国スポがあるということは、必ず選手の強化をしないといけないので、そこの部分に携わっていけたたらいいなと思います。

平田高校・野津孝明校長:
錦織さんが2030年に島根の指導者として活躍されていらっしゃれば、またこれは素晴らしいことだと思っています。

島根県で開かれる2030年の国スポは、またとない恩返しのチャンス。念願の教員免許が取得できれば、錦織さんは、夢への最終関門となる島根県の教員採用試験に臨みます。

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