公設民営化から1年が経過 宮城・白石市の公立刈田綜合病院 1年での黒字化に向けた取り組み

深刻な経営危機から脱出するため、宮城県白石市の公立刈田綜合病院が1年前に民営化しました。1年で黒字化という意欲的な目標を掲げた病院の取り組みです。

4月1日。新規採用者のオリエンテーションには緊張の面持ちの看護師など12人の姿がありました。刈田病院の民営化2年目がスタートしました。
白石市外二町組合山田裕一管理者(白石市長)「この運営状況の中で資金を確保しなければ運転資金としてですね、病院を運営することは不可能になります」

仙南地区の医療の重要拠点の1つ、公立刈田綜合病院は2022年度までは白石市、蔵王町、七ヶ宿町でつくる組合が運営する公設公営の病院でした。
しかし、累積赤字は170億円以上に膨らみ経営が困難になり様々な議論と紆余曲折を経て、2023年4月に設置主体を白石市、運営は民間の医療法人が行う公設民営の病院として再出発することになりました。

受け入れ態勢強化

経営を任された医療法人の仁誠会は、前の年度と比べ常勤の医師を13人から16人に増員し内科や外科を問わず幅広く診療可能な総合診療科を新設しました。病院が掲げた改善の柱の1つは、患者受け入れ態勢の強化です。救急患者は24時間365日受け入れることにしました。当直医が自らの専門分野を超え、幅広い領域を診られる体制作りを進めています。夜間の受け入れ患者数は、月平均で40件ほど増加しました。
今村豪院長「何科じゃないから診れないから救急車断ることが少なくなって、整形外科の先生でも小児科のことまで全部診てくれている」

改善のもう1つの柱が、業務の効率化です。そのために、深い医療知識や技能を持つ医療事務のスペシャリストを起用しました。カルテの入力や検査日程の調整など、医師が行っていた事務作業の労力を半分ほどに減らすことができました。

更に、医師の事務作業の軽減は丁寧な診察ができるといった医療の質の向上にもつながっています。こうした取り組みにより病床稼働率は56.4%(2022年度)から74.5%(2023年度)と、安定的な収入が見込まれる稼働率6割を超えています。

多くの患者を受け入れられるようになったことで、仙南地域の課題であった大河原町のみやぎ県南中核病院との連携やすみ分けも進んできました。重症の患者は中核病院へ、そのほかの患者を刈田病院に搬送したり重症患者が回復したら中核病院から刈田病院に転院させたりなどしています。
今村豪院長「中核病院で手術を終えて退院した人を刈田病院で受ける。刈田病院の範疇ではない時は中核病院にお渡しすることをしっかりやっています」

連携とすみ分け

一連の施策により、民営化1年目の2023年度の収支は白石市からの交付金を含めると数百万円の黒字見込みになりました。交付金は、民営化初年度に交付される3億円と指定管理委託料1億円の計4億円ですが、以前の十数億の赤字と比べれば大幅な改善を達成しました。

月に1回、病院と経営状況を共有している山田裕一白石市長は評価します。
山田裕一白石市長「救急患者の受け入れの急増、それから午後の外来も刈田病院で行うようになりました。これまでよりも多くの患者様をしっかりと受け入れられる体制になって、結果として病院の収益も非常に安定的な収益になってまいりました。想像以上の結果を出してくれていると理解しています

人手不足が課題

一方で、人手不足が課題になってきました。
刈田綜合病院看護師金子はるかさん「ちょっとスタッフが少ないというところで、1年前より患者数も増えておりますしなかなか定時で仕事を終わらせるっていうところは難しくなってますね。(公設民営化)2年目はもう少し過ごしやすい職場になればいいかなと思っております」

病院では、15人ほどの看護師を採用するなどして改善に取り組むとしています。今村院長は2024年度、交付金を除いた黒字化を目標に掲げます。
今村豪院長「2024年度の目標は、通年の黒字を目指していきたいです。しっかり黒字を出して、仙南地域に寄与するような病院を目指していければと思っております」

民営化1年を受け、かつてともに運営に関わっていた蔵王町と七ヶ宿町の町長のコメントです。
村上英人蔵王町長「経営形態が変わっても、刈田病院は地域にとって必要な病院であり、蔵王町の町民もお世話になっているものと認識しています。これからも、仙南医療圏の各医療機関が役割を分担しながら連携し、地域住民の生命と健康を守っていくことが大説だと思っています。刈田病院は、特に人工透析やリハビリテーション部門が充実していると思いますので、こうした特性を生かしながら、地域医療に貢献いただくことを期待しております」
小関幸一七ヶ宿町長「刈田病院が、1市2町立病院か白石市病院であるかによって、患者(住民)様の利用に大きな違いはないと思っておりますので、地域にとっては必要な病院であると認識しています。これからは、仙南医療圏(2市7町)の中で、それぞれの医療機関が連携し、役割を分担し必要な医療人材等を確保して、住民の生命と健康を守っていくことが求められていくと考えております。是非、刈田病院には、大きな役割を担っていただきたいと期待しています」

一方、周産期医療の再開が今後の課題となっています。2023年11月から小児科の常勤医1人が入ったことがその第一歩ですが、産科・婦人科の医師は不在のままで、再開のめどは立っていません。

© 株式会社東日本放送