フェラーリ、WECスパで却下された抗議に控訴。前代未聞のレース延長について「明確化を求める」と主張

 フェラーリのグローバル・エンデュランス部門の責任者であるアントネッロ・コレッタは、WEC世界耐久選手権第3戦スパ・フランコルシャンのレース後において却下された抗議に対し、イタリアのブランドが控訴したことを明らかにした。

 5月11日(土)にベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットで開催された6時間レースでは、アール・バンバーがドライブする2号車キャデラックVシリーズ.R(キャデラック・レーシング)とショーン・ゲラエル駆るBMW M4 GT3(チームWRT)がケメル・ストレートが衝突。この事故の直後から両マシンやデブリの回収、ガードレールの補修などによってレースが2時間近く中断されたことを受け、FIA国際自動車連盟はレース時間を延長するという前代未聞の決定を下した。

 アクシデントの発生当時、2台のフェラーリ499P(フェラーリAFコルセ)はワン・ツー体制を築いてレースをリードしていた。しかし、予想外となってレースの再開後は赤旗が出る直前にピットインしていた12号車(ハーツ・チーム・JOTA)と6号車(ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ)のポルシェ963がワン・ツーに。対して、フェラーリを含めた他メーカーのハイパーカーは優勝のチャンスを失った。

 そのグループの中でもっともトップに近づいたアントニオ・フォコ/ミゲル・モリーナ/ニクラス・ニールセン組50号車フェラーリは、姉妹車51号車フェラーリをひとつ上回る総合3位でフィニッシュしている。

■過去のWEC富士やセブリングでは延長されず

 この結果に対するフェラーリの最初の抗議は認められなかったが、先週、フェラーリの広報担当者は詳細を明かさずにル・マン24時間レースの精査中に不服申立てが行われたことを認めた。

 コレッタは、フェラーリによる控訴の法的根拠の詳細には触れなかったものの、このプロセスによって“赤旗中断時に何が起こるのか”が今後、より明確になることを期待していると語った。

「我々は不服申し立てと上訴を行った」とコレッタは水曜日に記者団に語った。

「現段階では、詳細は明かしたくない。我々は話し合いを待っているところで、審理の日程は決まっていない」

「しかし、今後(赤旗によってレースが中断された状況で)どのようなことが起こるのか、(ルールの)解釈を知ることは重要だ」

「何年も前(2013年)の富士や、(2022年の)セブリングのように、過去にはさまざまな解釈がなされた状況がたくさんあった。私たちの戦略や決断に影響を与える可能性があるため、この部分を明確にする必要がある」

「スパでは、何が起こったのか誰も想像できなかった。私たちは驚かされたよ。戦略的には完全に予想外だった」

ランキング5位で“ダブルポイント”となるル・マン24時間レースに臨む50号車フェラーリ499P(アントニオ・フォコ/ミゲル・モリーナ/ニクラス・ニールセン組)

■ル・マン前の序盤3戦を振り返って

 スパでの出来事は、フェラーリのWECタイトルの望みにも打撃を与えた。とくに499Pがドライコンディションではトップクラスであることを証明したものの、ウエットコンディションではタイヤ戦略で出遅れたイモラでの悔しいレースの後だっただけになおさらだ。

 フォコ、モリーナ、ニールセンの3人は、ハイパーカー・ドライバーランキングで首位のポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ6号車のトリオ(ケビン・エストーレ/アンドレ・ロッテラー/ローレンス・ファントール)から34ポイント差の5位でル・マンを迎える。

 51号車のジェームス・カラド、アレッサンドロ・ピエール・グイディ、アントニオ・ジョビナッツィは、さらに22ポイント差の9位につけている。

 これまでのシーズンを振り返るよう求められたコレッタは、「チャンピオンシップの順位を考えると喜んではいられないが、クルマの競争力には満足している」と述べた。

「スパではレースの途中で首位と2番手、さらに4番手につけた。イモラでは予選でトップ3を独占した。レースでは(戦略)ミスを犯したがね」

「そのミスの代償は大きかった。それはゲームの一部だ。だが、スパでは非難されるようなことは何もなかったし、いい結果に値した」

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