[石野純也の「スマホとお金」]「LINEMOベストプラン」と「Rakuten最強プラン」、どちらが“ベストで最強”なのか

by 石野 純也

ソフトバンクは、7月中旬に“10GB以下最安”をうたうLINEMOベストプランを開始。20GBまでと20GB超30GB以下で料金が変動するLINEMOベストプランVも合わせて導入される

ソフトバンクは、7月中旬以降にLINEMOの新料金プランを導入します。「LINEMOベストプラン」「LINEMOベストプランV」が、それです。

新料金プランは、前者が3GBを境に料金が変動し、10GBで打ち止めになります。後者は20GBを超えると料金が上がり、30GBで高速通信に制限がかかります。

“ベスト”と銘打っていることからも分かるように、LINEMOベストプラン/ベストプランVは楽天モバイルの「Rakuten最強プラン」を強く意識した料金体系に仕上げられています。ベストと最強では意味合いも似ており、プラン名から対抗してきたか格好です。

では、本当にベストで最強なのはどちら なのでしょうか。ここでは、2つのプランを比較しました。

10GB以下では「ベスト」がベスト、ただし10GB超は空白地帯に

まずは改めて基本情報から。LINEMOベストプランは3GBまでが990円、3GB超10GBまでが2090円の料金プランです。現行プランのミニプランは、3GBで990円。新料金プランになっても3GBまでにとどまるのであれば、料金は変わりません。逆に、ここを少しでも超えると料金は2090円まで上がります。

LINEMOベストプランの料金。3GBを境に料金が変わり、10GBで打ち止めになる

3GBまでと3GB超~10GBまでの料金差はちょうど1000円 。LINEMOでは、1GBのデータ量追加を550円に設定しているため、2GB追加するのであれば、LINEMOベストプランの方が安くなる計算です。

ソフトバンクの専務執行役員 コンシューマ事業推進統括 寺尾洋幸氏によると、3GBを超えているミニプランのユーザーは24年4月時点で34%。このユーザーがどの程度3GBを超過しているかにもよりますが、少なくともミニプランで5GBを使うより、LINEMOベストプランで10GB使った方がお得になります。

LINEMOユーザーのデータ容量は年々増加しており、3GBを超過する人の比率は3割を超えているという

LINEMOベストプランが「ベスト」と自称するゆえんもここにあります。

ソフトバンクは、MNO(自社で基地局などの設備を持つキャリアのこと)における10GB以下での“最安”をうたっており、Webサイトなどのビジュアルでも、この点を強く打ち出しています。最強ならぬベストはうちだというわけです。

最安で最強というと楽天モバイルのRakuten最強プランを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、こちらは3GBまでの料金が1078円 。この時点で、LINEMOの現行料金プランであるミニプランよりも高くなっています。また、 3GBを超えると料金が1段階上がり、20GBまで2178円 になります。LINEMOの閾値である10GBもこの範囲に収まるため、10GBまではRakuten最強プランの方が割高になると言えます。その意味では、ベストの名に偽りなしと言えます。

3GB以下の料金は、LINEMOベストプランの方が安い
3GB超10GB以下で区切った場合も、LINEMOベストプランがRakuten最強プランより安くなる

一方で、LINEMOベストプランには10GB超~20GB以下の設定がなく、10GBを超えると通信速度が128Kbpsに制限されます。

これに対し、Rakuten最強プランは2178円で普通に通信可能。10GBを超えるユーザーにとっては、Rakuten最強プランの方が最強 になります。逆にLINEMOは10GBを超える人はLINEMOベストプランVにプランを変更せざるをえず、料金が2970円に上がります。比較すれば一目瞭然ですが、この容量では必ずしもベストではないと言えるでしょう。

家族込みだとRakuten最強プランが最強に、「ベスト」は単独契約前提

また、楽天モバイルは2月から「最強家族プログラム」を導入しており、2回線以上を家族で契約すると、それぞれの料金が110円割引になります。家族契約というハードルはあるものの、その条件は緩く、my楽天モバイルで契約者同士を紐づけるだけ。元々は同一苗字という制限がありましたが、4月にはそれも撤廃されました。その意味では、かなり条件は緩めです。

最強家族プログラム適用時のRakuten最強プランは、3GBまでが968円でLINEMOのミニプランやLINEMOベストプランの3GBまでの料金を下回ります。この時点で、10GB以下で最安というLINEMOベストプランのうたい文句が成立しないことになります。

Rakuten最強プランに最強家族プログラムを適用すると、LINEMOベストプランを料金で下回る

また、3GB超20GB以下の料金は、最強家族プログラム適用で2068円まで下がります。LINEMOベストプランは10GB以下で2090円。わずか22円の差ではありますが、10GB以下もRakuten最強プランが“最強”になります。

3GBを超過した場合も、上記と同様だ

先に述べたように、LINEMOベストプランには10GB超の料金設定がないため、ここでは無条件に最強家族プログラムを提供したRakuten最強プランが勝利。LINEMOベストプランも安いことは間違いありませんが、ベストであるための条件はある程度限定されていることが分かります。

これに加えて、LINEMOベストプランには音声通話の料金が含まれていません。音声定額オプションをつけない場合の金額は、他のブランドと同じ30秒22円。そのため、LINEMOベストプランで2分程度通話してしまうと、3GB超10GB以下の料金がRakuten最強プランに並んでしまいます

対するRakuten最強プランは、RCS対応の「Rakuten Link」に限定されますが、通話料は無料。通常の音声通話アプリを使わないよう注意するだけで、無制限に通話できます。LINEMOベストプランで通話定額をつけようとすると1650円の料金がかかるため、同一条件にするとRakuten最強プランの安さが際立ちます。

Rakuten最強プランは、Rakuten Linkを通じた音声通話が無料になる。広告は多いが、音声定額が無料なのは大きい

20GB超はベストならず、経済圏も考慮すべし

では、20GB以上の場合はどうでしょうか。

LINEMOベストプランVの料金は20GBまで2970円。20GBを超えると、30GBまでは3960円に料金が上がります。

20GB以下の料金が現行のスマホプランの2728円より上がっているように見えますが、これは5分の通話定額がセットになったため。スマホプランでは、1回5分までの国内通話が無料になる「通話準定額」が550円で提供されているため、合算すると3278円になります。

右がLINEMOベストプランV。5分間の通話準定額が料金プラン内に含まれている

通話準定額をつける人にとっては308円の値下げ、そうでない人にとっては242円の値上げになると言えるでしょう。

先の寺尾氏によると、「10GB以下の人は価格コンシャスだが、それ以上になると両方あった方がいい。今はキャンペーンで7カ月目まで無料にして、終了前に複数回ご連絡しているが、やめる人はほとんどいない」と言います。付帯率が高いオプションを込みにしたという意味では、実質的に値下げになる人の方が多いのかもしれません。

ソフトバンクの寺尾氏は、ほとんどの人が通話準定額を付けていると明かす

一方で、Rakuten最強プランとの比較だと、LINEMOベストプランVはベストとは言いづらい部分があります。

Rakuten最強プランの場合、20GBまでは2178円。それを超えると3168円になりますが、20GB超はデータ容量の制限がなくなります。これに対し、LINEMOベストプランVは20GBまでが2970円。この時点で、料金差がつけられています。

また、20GB超過時、LINEMOベストプランVは3960円になり、Rakuten最強プランの無制限になった場合の料金の3278円よりも高くなっています。

先に挙げたように、Rakuten最強プランにはRakuten Linkによる音声通話無料が自動的についてくるため、5分の通話準定額をつけているぶん、LINEMOベストプランVが不利になる構図です。

LINEMOベストプランVとRakuten最強プランの比較。いずれのケースでも、Rakuten最強プランの方が料金は安い

付け加えるなら、楽天モバイルには楽天市場のSPU(スーパーポイントアッププログラム)があり、毎月、最大で2000ポイントまで楽天ポイントの還元を受けられます。

これらを加味すると、Rakuten最強プランの最強度が増す形になります。こうした点を見ていくと、LINEMOベストプランが“ベスト”なのは1人契約かつ10GB以下で、音声通話や経済圏を重視しない場合 であることが分かります。それ以外のケースでは、Rakuten最強プランが依然として最強と言えそうです。

© 株式会社インプレス