『ブルーモーメント』丸山が明かした灯の死の真相 伊藤英明がSDMの新たな障壁に

晴原(山下智久)を助けようとして、土石流に巻き込まれた上野(平岩紙)は命を落とす。上野の遺体を前にSDMメンバーたちが肩を落とすなか、彼女の代わりに5年前の出来事の真相を話し始める丸山(仁村紗和)。豪雨の夜、氾濫に巻き込まれる可能性のある保育園へ上野の息子・海斗(石塚陸翔)を迎えに行った灯(本田翼)。当時保育士として働いていた丸山と共にそれぞれ子どもを抱え、雨のなかを走って避難していた灯は、はぐれた末に海斗を守ろうとして自分だけ流されてしまうのである。

6月12日放送の『ブルーモーメント』(フジテレビ系)第8話は、これまでのエピソードでちょっとずつ明かされてきた5年前の灯の死の真相――すなわち晴原がSDMでその使命を全うしながら追い続けてきた、彼の心のなかに引っかかり続けていたものがようやくすべて解かれることとなる。物語は前回から半年後。上野の死によって運用休止となり、今後については保留状態のSDMがいかにして息を吹き返すのかが今回の大きなトピックである。ただ再始動するのではなく、そこには大きな前進の瞬間が幾度も訪れるのだ。

まず1つ目は、母である上野を失った海斗がSDMを訪ねてくるシーンでの一連だ。5年前にはまだ幼かった海斗は、自分を救う代わりに命を落とした灯のことをかすかに覚えており、思い出すと苦しみを感じる。そんな彼が、灯の着ていたレインコートの一部を手に晴原と対面。大人びているとはいえまだ8歳の少年が、自分の母の死を受け入れ、自分の命を守るために亡くなった人がいるという事実に葛藤する姿を真正面から、同じ立場の者として受け止める晴原。気象予測の無力さに打ちひしがれ半年間も下を向きっぱなしだった晴原は、そこでようやく顔をあげることになる。

SDMの“空気”の中心である晴原の復活は、自ずとSDMそのものの復活を示す。半年の間に難関の気象予報士試験に合格した雲田(出口夏希)が兆候に気付いた危険な熱雷の発生場所を特定するため、呼びかけに即座に応じて行動に移すSDMメンバーたち。前回がSDMの現場における活動での“総力戦”だったのに対して、今回はその前段階として欠かせない気象予測における“総力戦”といったところか。もちろん一通りの役目を終えて完全復活を遂げた後に晴原は、SDMのジャンパーを羽織る。そして、灯の死以降食べられずにいたドーナツを口にする。ようやく晴原に、“いつも通りの朝”が戻ってきた瞬間といえよう。

その熱雷をめぐる一連、雲田が晴原の代わりに出演する藤村(田中圭)の報道番組の裏側で、新たに“次期総理候補”と目される政治家の新島(伊藤英明)が登場する。彼へのインタビューよりも熱雷の報道を優先した藤村の姿勢に好意的な様子を見せる新島だが、終盤で発覚する園部(舘ひろし)の不祥事に対してはなにやら意味深な表情を向ける。さすがにこのキャスティングで、1回限りの登場というわけにはいかない。これまでSDMに否定的な立場を貫いてきた立花(真矢ミキ)がその立場を覆したとなれば、政治的な部分で新たな障壁となるのは、この新島という男なのだろう。

(文=久保田和馬)

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