米FRB、利下げ「年内1回のみ」想定 金利据え置き

Howard Schneider Ann Saphir

[ワシントン 12日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は11─12日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を5.25─5.50%に据え置いた。

最新の金利・経済見通しでは年内に1回の0.25%ポイントの利下げ実施が想定され、利下げ着手は12月になる可能性が示された。

前回3月の金利・経済見通しでは、年内3回の0.25%ポイントの利下げが想定されていた。最新の金利・経済見通しで示された一連の予想で、11月5日の米大統領選挙前に利下げが行われる可能性はほぼなくなった。

ただ、FRBは声明のインフレに関する文言を「ここ数カ月間、委員会の2%のインフレ目標に向けての緩やかなさらなる進展が見られた」とし、前回声明の「2%のインフレ目標に向けてのさらなる進展は見られない」から変更した。

パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で、インフレ率は経済に大きな打撃を与えずに低下したとし、この状況は持続可能と発言。このところの月次データは「幾分か緩和した」ものの、インフレ率が2%に向けて持続的に低下するという「一段と大きな確信」を得るには十分ではないと述べた。

予想より良好だった5月の消費者物価指数(CPI)については、「単月の指標に過ぎない」とし、より強い確信を持てるようになれば「政策緩和を検討できる」と語った。

また、インフレ抑制の代償として雇用市場の崩壊を容認することはしないと表明。最大雇用と物価安定というFRBが担う2つの責務のバランスを取るよう、金融政策を決定していくと述べた。

<金利の長期見通し上昇>

金利・経済見通しで示された政策金利の長期見通しは2.8%と、前回の2.6%から上昇。年末時点のインフレ率は2.6%と、前回2.4%から上昇した。

利下げ開始の予想時期が後ずれし、ペースも予想より緩やかになるとみられる中でも、政策金利は2025年と26年は共に1%ポイント引き下げられるとの見方が示された。

パウエル議長は政策当局者の見解が変化していると説明。「われわれは現在の経済状況を踏まえて政策を策定している」とし、政策金利の長期見通しが2.8%になったことは、新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的大流行)前の極めて低い金利環境には戻らないという見方に当局者が「徐々に」近づいていることを示していると語った。

エバーコアISIのクリシュナ・グハ副会長は、パウエル氏がインフレ見通しを「保守的」と表現したことは、インフレ低下が続く場合に9月利下げの可能性も大きく残していることを示していると指摘した。

最新の金利・経済見通しで示された経済成長率は24年が2.1%。失業率は年内は4%にとどまるとの見通しが示された。

FRBは声明で「最近の指標は、経済活動が引き続き堅調なペースで拡大していることを示している。雇用の伸びは引き続き力強く、失業率は依然低い」とし、前回声明の文言を維持した。

パウエル氏はまた、金融政策は現時点では制約的であり、期待通りの効果が出ているという証拠はかなり明確だと述べた。

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