なぜシリア戦後半に4バックへ戻したのか 森保ジャパン、3バック採用で左サイドが抱える問題【前園真聖コラム】

前園真聖氏が指摘【写真:徳原隆元】

現時点では3バックがW杯で通用するとは思えない

森保ジャパンは6月の北中米ワールドカップ(W杯)アジア2次予選のミャンマー戦、シリア戦でともに5-0と大勝を収めた。すでに最終予選進出を決めているなかで3バックを試し、新しい選手も融合させた日本代表は着々と歩を進めているように見える。だが、元日本代表MF前園真聖氏は今回の戦いで残念な点があったという。その不満点は何か訊いた。(取材・構成=森雅史)

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6月6日のアウェー・ミャンマー戦、11日のホーム・シリア戦は評価すべき点と不満に思える点が両方ある戦いでした。

まず良かった点から振り返ります。この2試合ともに3バックでスタートしたのはとても良かったと思います。ここまでこれほど長く3バックを試したことはこれまでありませんでした。戦術のバリエーションを増やすという課題に、きちんと取り組んでいました。

また、その3バックが攻撃のためのシステムになっていたのも良かった部分です。2022年のカタールW杯の時も3バックでしたが、実際のところは5バックになってしまいました。今回は、日本がしっかりボールをキープして押し込むための3バックの形ができました。

僕はアジア相手なら3バックがいいと思います。自分たちがボールを保持する時間を長くできるので、3バックの時のウイングバックが攻撃的なポジションを取ることができるのです。そのため試合を支配しやすくなります。そういう確認ができたのは成果です。

ただし、現時点では3バックがW杯で有効的とはまだ思えません。5バックになるとスペースは消せますがうしろに重くなります。ポゼッション率を上げてウイングバックを高い位置でプレーさせる時間をなるべく作りたい。そのための課題を突き詰めないといけません。カタールW杯のような戦い方が2回は通用しないと思います。

なぜシリア戦の後半に慣れ親しんだ4バックに戻したのか

では、僕が不満に思った点は何か。たしかに2試合とも5-0で大勝しました。ですが、シリア戦の後半は、戦い方と選手の組み合わせをもっと試すべきだったと思うのです。

シリア戦の後半、森保一監督は4バックに変更しました。冨安健洋(アーセナル/イングランド)の右サイドバックを試したかったのでしょう。また、ディフェンスラインに遠藤航(リバプール/イングランド)を下げて、冨安と左サイドバックに入った伊藤洋輝(シュツットガルト/ドイツ)をボランチの位置に置くというテストも行っていました。

ですが、4バックはこれまでもずっとやってきました。わざわざ試すこともなかったと思います。それよりも3バックのままでもっと選手の組み合わせを試して良かったのではないでしょうか。その選手の組み合わせには問題点がありました。

右サイドと左サイドを比べてみると、その問題点がハッキリします。右は堂安律(フライブルク/ドイツ)と久保建英(レアル・ソシエダ/スペイン)が、お互いに縦にも行けるし、カットインもできるというコンビでポジションを入れ替えながら効果的にプレーしていました。

一方で左サイドの中村敬斗(スタッド・ランス/フランス)と南野拓実(ASモナコ/フランス)の組み合わせでは、南野が外に張れないため縦への突破は中村1人の役になっていました。中村は自陣深くまで戻って守備をしたあと出て行くため、疲労の蓄積が避けられない状態でした。

だったら、そこで南野の代わりに鎌田大地(ラツィオ/イタリア)を置いて、どんなコンビネーションができるか試したほうが良かったと思います。鎌田なら左の縦にも行けますし、ボールを持ってタメも作れます。さらに言えば、町田浩樹(ロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ/ベルギー)に代えて伊藤を入れておけば、中村、鎌田、伊藤のコンビが試せたのです。

南野を左サイドに持ってきたため停滞し、それを打破するために相馬勇紀(カーザ・ピア/ポルトガル)を入れました。そして、南野が中でプレーするようになってゴールを奪ったというのは忘れてはいけない事象でしょう。

その意味で、最後の45分間はもったいなかったと思います。アジア2次予選も終わって、本大会までの試合数も減りました。残りの試合ではさらに有効にテストを行ってほしいと願います。(前園真聖 / Maezono Masakiyo)

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