「負の実績しかない」少子化対策「ラストチャンス」煽られても響かず…鬼の岸田政権「意味不明の少子化対策」増税に国民総絶望

1人の女性が産む子どもの数の指標となる出生率は去年、1.20となり過去最低を記録した。林芳正官房長官は「危機的状況にあり少子化対策は待ったなしの瀬戸際」として、前例ない対策を強調していたが、はたして単純な経済的支援だけで少子化問題が解決していくのか。X(旧ツイッター)には「30年悪化させ続けたという負の実績しかないんだから、何もするな」という辛辣なコメント経済アナリストの佐藤健太氏が見解を語る――。

2050年までに20~39歳の女性が「半減」

女性が生涯に産む子供数を示す「合計特殊出生率」が8年連続で過去最低となった。未婚化・晩婚化などの影響で少子化の進行は危機的な状況だ。国は児童手当や育児休業給付の拡充といった子育て支援策を講じるものの、一方で増税や公的保険料アップによる国民の負担増を強いる。20~39歳の女性が2050年までに半減するとの予測が発表される中、日本の衰退は加速し続けるのか。

「少子化の要因は、経済的な不安定さや仕事と子育ての両立の難しさなど個々人の結婚や出産、子育ての希望の実現を阻む様々な要因が複雑に絡み合っている。いまだ多くの方の子供を産み育てたいという希望の実現には至っていない」。林芳正官房長官は6月5日の記者会見で、少子化対策の難しさを率直に認めた。

人口の急減に伴って最終的には消滅する可能性

この日に厚生労働省が発表した「人口動態統計」によれば、2023年の出生数は72万7277人となり、合計特殊出生率は1.20。いずれも過去最低だ。東京都は8万6347人で戦後最も少なかった。

もちろん、これらの数字は現在の岸田文雄政権だけに原因があるわけではない。産まれてくる赤ちゃんの数は、そもそも親となる女性の数が少なければ影響を受けるからだ。ちなみに、2023年に20歳を迎えた2003年生まれの女性は54万6874人、30歳の女性ならば57万8038人(1993年)、40歳は73万3481人(1983年)だった。

民間有識者による「人口戦略会議」が4月に発表した報告書によれば、20~39歳の女性人口は2020年からの30年間に全体の4割にあたる744自治体で半数以下となり、人口の急減に伴って最終的には消滅する可能性があると警告している。

第3子以降は月3万円給付…はたして「異次元の対策」なのか

林官房長官が言及したように、たしかに少子化の原因は複雑だ。岸田首相は2023年1月の施政方針演説で「少子化問題はこれ以上放置できない待ったなしの課題だ」と述べ、異次元の少子化対策に挑戦すると宣言した。首相は同年4月に「こども家庭庁」を発足させ、子供・子育て予算を増額するなど手を打ってはいるのだが、それらが少子化に歯止めをかけるとは到底思えない。

まず、経済的な面だ。少子化対策を盛り込んだ「子ども・子育て支援法」の改正案は6月5日に参院本会議で可決され、成立した。今回の改正によって児童手当は拡充され、支給対象が高校卒業まで延長。所得制限は撤廃され、第3子以降は月3万円に倍増となる。多子加算は人口減からの反転を目指すという意味があるのだろうが、第1子・第2子の支給額が変わらない上、第3子の月3万円が「異次元」と言えるのかは大いに疑問だ。

一般的に子供にかかるお金は「2000万円」(学費や食費など含む)と言われる。もちろん、家庭や学習環境によって数字は大きく変わるが、「人生の3大支出」の1つである教育費をにらめば、今回の児童手当拡充だけでプラスに作用するとは考えられない。

東京都では年額上限48万4000円の授業料助成金受付がスタート

たとえば、小学生から学習塾に通い、中高一貫の私立中学に進学。高校3年生から大手予備校に通うとした場合、国公立大学に進学するケースでも最低1500万円は必要だ。入塾のタイミングが早かったり、講座数を増やしたりすれば教育費は膨らみ、子供が2人ならば親の負担額は倍増する。第3子が誕生すれば18年間に「月3万円×12カ月×18年=648万円」を支給されるからといって、親が多子世帯になることを決断できるかと言えば答えは「NO」だろう。

国の支援策が中途半端と言える中、東京都の小池百合子都知事は「スピード感を持って子育て世帯をサポートする」として私立を含む全ての高校授業料を実質無償化する方針を表明。6月20日から授業料の助成金受付をスタートする。所得制限はなく、年額48万4000円を上限に助成するもので、さらに0~18歳に1人あたり月5000円を支給する東京都独自の「018サポート」も始めている。

あろうことか岸田政権はアクセルとブレーキを同時に踏んでいる

計算してみると、国の児童手当に「018サポート」を加算したトータルの「支援額」は、0~3歳未満(第1子・第2子)が月2万円、3歳~高校生年代までは月1万5000円(同)、第3子は3万5000円となる。

こうした小池都知事の施策には、財政力が弱い自治体からは不平等と映ることもあるだろう。だが、これらは本来ならば国として全自治体で実施すべきものだ。ただちに出生率の向上にプラスとは言えないかもしれないが、「異次元の少子化対策に挑戦する」とまで首相が言うのならば国家として全国での支援策拡充に踏み切るべきだろう。

しかし、あろうことか岸田政権はアクセルとブレーキを同時に踏んでいる。子育て支援策の財源確保のために「支援金」制度を創設し、その負担を公的保険料に上乗せして徴収することになったのだ。

こども家庭庁が4月に発表した試算によれば、会社員や公務員は2026年度に年収400万円の人は月400円、年収600万円ならば月600円、年収1000万円の人は月1000円を負担。2028年度にはそれぞれ月650円、月1000円、月1650円となる。

一方岸田政権は電気・ガス代の補助金を打ち切り

すでに決定されている防衛費大幅増に伴う所得税・法人税・タバコ税の増税に加え、6月からは1人あたり年間1000円の「森林環境税」が徴収されることになった。電気・ガス代の補助金制度は5月使用分で終了し、電気料金などの負担は6月分から増加する。冷房が欠かせない夏場を前に補助金を打ち切る感覚が理解できない。

今春闘で大企業の賃上げ率は5.58%(1次集計)と高水準を見せたが、日本商工会議所が6月5日に発表した調査結果を見ると、中小企業の正社員賃上げ率は3.62%と大幅に下回っている。小規模事業者は賃上げの恩恵を得られていない上、最近の物価上昇によって生活が一向に上向かないといった声は根強い。

4月の毎月勤労統計調査によれば、実質賃金は前年同月比0.7%減少となり、過去最長の25カ月連続マイナスとなった。岸田首相は「所得倍増プラン」「資産所得倍増」などと掲げてきたが、岸田政権が発足した2021年秋から国民全体の生活は改善されているとは言えない。可処分所得が減っていけば、少子化対策にとってマイナスに働くのは自明だろう。

政府の「本気」はいつ見ることができるのか

首相は「少子化問題はこれ以上放置できない待ったなしの課題だ」と言うならば、1日でも速く“異次元”の施策を放つことが望まれる。だが、そうした期待とは逆に政府は「東京都は飛び抜けた支援策を実施し、けしからん。それなら財源を奪ってしまえ」とばかりに東京都の税収剥奪に乗り出すのだという。

「出る杭は打たれる」と言うが、率直に言って本末転倒だろう。子育て支援策はそれぞれの自治体が競うべきで、財源がない自治体には国がサポートすれば良い。そもそも国家として総力を挙げるテーマのはずだ。それなのに「出る杭」から財源を奪い、その分を他の自治体に実質的に配るならば単に現在あるパイを再配分しているだけに過ぎない。

少子高齢化が加速し、国力が衰退していく中で日本は大きな転換点を迎えている。そろそろ、単なるスローガンではなく、政府の本気度を見せなければならない時だ。

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