高齢者などからヤクルトレディが不要品回収 メルカリとヤクルト連携「捨てるをへらす」全国初の実証実験【広島発】

「環境の日」の6月5日、メルカリとヤクルト山陽が全国でも先進的な実証実験をスタートさせると発表した。ヤクルトレディが高齢者などの自宅を訪問した際に不要品を回収し、メルカリへの出品も代行する取り組みだ。

地域密着のヤクルトとメルカリが連携

広島県北部に位置する三次市で、高齢の客を訪ねるヤクルトレディ。
「こんにちは、お世話になります」と元気よくあいさつをして、商品を手渡すと慣れた様子で話しかけた。

「今日は体調どうですか?」
「体調はよろしくないですね」
「はやく元気になってくださいね」

高齢の客は体の不調を訴えながらも、気にかけてもらい嬉しそうだ。こうしてヤクルトレディは商品の販売だけでなく、地域住民の悩みにも寄り添ってきた。その“距離の近さ”をいかし、日本最大のフリマアプリ「メルカリ」と連携した新たな実証実験がスタート。

その発表の場で、メルカリ・吉川徳明執行役員は「地域で拠点を持っている会社と組んで、なおかつ、その会社に“出品”のかなりの部分を担ってもらえる。モノの回収だけでなく、実際に訪問して回収していただける。そこまで踏み込んだ実証実験は全国でも初めて」と述べた。

不要品の回収から出品まで代行

メルカリは、これまで「捨てるをへらす」取り組みとして自治体と連携してきた。その背景の一つには「ゴミの最終処分場が減少し、確保が厳しい」状況がある。

環境省の調査では、新規の最終処分場が整備されなかった場合、埋立処分が可能な期間は全国平均で「23.4年」とされている。

そうした中、広島や山口で営業する「ヤクルト山陽」に白羽の矢が立った。ヤクルト山陽は社会貢献活動として、2023年からリユースを推進する「メルカリ教室」を展開。

そして今回、メルカリと自治体(三次市・安芸高田市)の連携に加わり、地域の不要品の回収から出品までの作業を代行して行うことにしたのだ。

ヤクルト山陽の大澤誠社長は「メルカリで上がった収益については、それぞれの市にお返しさせていただく」と話し、収益を循環型社会に役立てる意欲を示している。

困っている高齢者を助け、ゴミ削減

ヤクルト山陽は“まだ使える不要品”を2カ所の営業所で回収するほか、持ち込むことが難しい高齢者などに対してはヤクルトレディが訪問回収する。

使い道のない数多くの食器に頭を悩ませていたという高齢者は、「困っていて、ヤクルトさんに話をしたら『回収できる』と言われたので頼みました。喜んでいます」と話した。

営業所に集められた不要品は、和服、子ども服、新品の鍋などまだまだ使えそうなものばかり。担当スタッフがスマホで写真を撮って必要な情報を入力する。
手間のかかる出品作業を代行してもらえるなら、不要品を出したいという人が増えるかもしれない。

こうした動きについて、三次市の福岡誠志市長も「今まさに処分場の問題で、このままだとあと何年しか使えないという状況にあります。次の処分場をどうするのか。それらを計画的に進めていかなくてはいけないが、行政だけでなく“市民全体”で取り組むことで意識の醸成、『捨てるをへらす』につなげられるよう啓発していきたい」と、期待を寄せている。

実証実験は2025年3月までの予定。今回の取り組みによる「温室効果ガスの削減貢献量」を算出する効果測定も行うということだ。

定期的な訪問によって高齢者の孤立感すら補うヤクルトレディー。安心できる人に不要品の回収を頼み、ゴミが減っていく。このような人と地球に優しい取り組みがますます広がってほしい。

(テレビ新広島)

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