核種の分析...時短 デブリ取り出し監視強化、福島大が開発着手

 福島大は、東京電力福島第1原発の溶融核燃料(デブリ)の取り出し時に、原子炉格納容器に注いでいる循環冷却水や原子炉建屋地下の滞留水に放射性物質がどの程度移行したかを迅速に分析する技術の開発に着手する。分析にかかる時間を短縮することで、汚染の拡散を抑制するモニタリング技術の高度化や、廃炉作業の効率化につなげる狙い。2030年度までの実用化を目指す。

 同大共生システム理工学類の高貝慶隆教授が12日、定例記者会見で発表した。物質を構成する原子や分子をイオン化して測定する「質量分析」の手法を用いる。ウランやプルトニウムなど「アルファ線」を出す核種と、ストロンチウムやテクネチウムなど「ベータ線」を出す核種について、それぞれどの程度含まれるのかをまとめて同時に分析できる技術を開発する。同大によると、今の技術ではウラン、プルトニウムなど核種ごとに別々に分析する必要があり、同時定量システムの開発によって分析にかかる時間が短縮できる。

 また、試料に複数の核種が含まれる場合、測定前に分離するなどの処理に時間がかかっているが、この前処理工程を省力化、自動化する技術も開発する。

 現在、例えばアルファ線を出す核種のウランやプルトニウムなどの測定には1週間以上かかっているが、こうした技術が確立されれば、1時間ほどに短縮できるという。研究は廃炉の技術開発を支援する経済産業省の基金を活用し、東電と協力して取り組む。学生も積極的に参画し、地元企業もプロジェクトに加わる。

 デブリの取り出しは廃炉の最難関とされ、東電は2号機で8~10月に始めることを目標としている。

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