肺がん治療の今(3)分子標的薬と免疫チェックポイント阻害剤で攻撃

オーダーメイドの治療ができれば、治療成績も向上する

肺がんといっても、性質はそれぞれだ。その性質に合ったオーダーメードの治療ができれば、治療成績も向上する。難治性のがん、肺がんの治療成績が良くなっているのは、がん細胞の発生・増殖に関わる遺伝子変異を調べることができ、かつ、その遺伝子変異に応じた分子標的薬が開発されたことで、変異が生じている遺伝子に直接アプローチできるようになったからだ。

さらに治療成績向上に大きな役割を果たしているのが、免疫チェックポイント阻害剤だ。岐阜県にある中部国際医療センター肺がん治療センター長の樋田豊明医師(呼吸器内科部長)が言う。

「本来はがん細胞を攻撃するT細胞にブレーキがかかり、がん細胞を認識できず攻撃しなくなっている。これを免疫チェックポイントというのですが、そのブレーキを外しT細胞ががん細胞を再び攻撃できるようにするのが、免疫チェックポイント阻害剤です」

免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイントが起こっている場合に効果を発揮する。そのため、肺がんと診断されると遺伝子変異の検査と併せて(前回参考)、T細胞にブレーキがかかっているか、免疫チェックポイントの有無を調べる検査が行われる。免疫チェックポイントがあれば、T細胞のブレーキを外す免疫チェックポイント阻害剤が使われるのだ。

なお、遺伝子変異の検査は肺がんの85%を占める非小細胞肺がんでしか行われないが、免疫チェックポイント阻害剤は、小細胞肺がんにも承認されているものがあるので、肺がんであれば免疫チェックポイントの検査が行われる。

「遺伝子変異がある場合、ドライバー遺伝子によっては免疫チェックポイント阻害剤を使用することで治療効果が高くなるものがあります。また、免疫チェックポイント阻害剤単体ではほとんど効かないが血管新生阻害剤をプラスすることで効き目が良くなるケースもある。ただ、抗がん剤や分子標的薬は耐性が出現するので継続して投与すると効き目が落ちてしまうのに対し、免疫チェックポイント阻害剤は効果がある一部の人には、その効果が長期間持続します」

分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤双方にメリット、デメリットがある。進化した検査法、薬を駆使し、必要に応じて併用療法を行い、生存期間を延ばすのだ。(つづく)

© 株式会社日刊現代