若年層にも急増中…「糖尿病性白内障」に気をつけろ

糖尿病の方は高頻度で白内障が発症する(C)iStock

白内障なんて高齢者の病気。私には当面関係がない──。30~40代の人の中にはそう考える人も多いのではないか。しかし、糖尿病の人はその考えを改めるべきだ。糖尿病がある人は健康な人よりも早期かつ高頻度で白内障が発症することが報告されている。その発症頻度は5倍といわれ、糖尿病患者の20%はすでに白内障を発症しているという。コロナ禍以降、リモートワークが増えたことで糖尿病とその予備群が増加傾向にあり、糖尿病性白内障の患者が目立って増えているという。専門家に聞いた。

「糖尿病患者の目の合併症といえば、糖尿病性網膜症が有名ですが、最近目につくのが白内障です。加齢による白内障の場合は手術は60代以降が多いのですが、糖尿病による白内障は30~40代に発症することも多く、放っておくと白内障手術を受けられなくなる場合も出てきます」

こう言うのは糖尿病専門医で「しんクリニック」の辛浩基院長だ。

会社経営をしていた40代男性は10年前に糖尿病と診断され、会社近くのクリニックに通っていた。最近、目のかすみやぼやけと同時に視力低下を自覚した。「メガネがあわないのかも」と考えてメガネを新調したが、視力は戻らない。医師に相談したところ、「白内障の疑いがある。すぐに糖尿病に詳しい眼科専門医を受診しなさい」と言われ、ある眼科医を紹介された。

ところが、「そのうち行けばいいや」と軽く考えて多忙な仕事を口実にして受診を先延ばしにしているうちに目をいくら凝らしても手元の書類すらよく見えなくなった。慌てて眼科専門医に駆け込んだところ、「目の状態が悪く、もう少し遅かったら白内障手術はできなかった」と告げられた。

幸いこの男性は真面目に血糖コントロールに取り組んだうえで、白内障手術を受けられたという。

「この男性は、それでも手術できたから良かったのですが、中には糖尿病網膜症など他の目の疾患がその後に見つかり、白内障手術では視力回復できないケースもあります。また、白内障の疑いを告げられた糖尿病患者さんの中には、その足で糖尿病のことをうるさく言わない眼科で白内障手術を受けてしまおうとする人もいます。しかし、これは危険です。高血糖のまま白内障手術を受けると、傷口の治りが遅く感染症のリスクが高まるため手術後の衛生管理が難しくなります。さらに、糖尿病性網膜症がある場合はそれが進行する可能性もあることなどが考えられます」(辛院長)

■月単位で進行し急激に視力が低下

そもそも白内障は、カメラのレンズにあたる水晶体が濁ることで視力が低下する目の病気。原因の多くは加齢によるものだが、糖尿病性白内障には加齢のものとは別のある特徴がある。眼科専門医で「自由が丘清澤眼科」(東京・目黒区)の清澤源弘院長が言う。

「白内障は3種類に大別されます。水晶体の中心にある核が濁る核白内障、核の周辺の皮質が濁る皮質白内障、水晶体の奥にある後嚢下白内障です。一般的に、核白内障は強度近視により核が硬化するなどして発症し、皮質白内障は加齢により発症します。一方、糖尿病性白内障で多いのは後嚢下白内障です。その特徴は、加齢による白内障は年単位で進行するのに対して糖尿病性白内障は進みが早く、月単位で進行し急激に視力が急低下してしまう点です。1.0あった矯正視力が3カ月後には0.2にまで低下するケースも珍しくありません。これは加齢による白内障は水晶体の周囲が徐々に白濁する皮質白内障と呼ばれる濁り方に対して、糖尿病性白内障の多くに見られる後嚢下白内障は、水晶体の後面中央がすりガラスのような濁り方となり、光をブロックするからです。2つ目は、糖尿病では特殊な糖やタンパクが水晶体内に蓄積し、浸透圧の関係で水晶体の屈折状態が変化するといわれます」(清澤院長)

むろん、糖尿病でも多くの場合白内障は手術すれば視力は回復するだろうが、その手術は容易ではない。糖尿病では白内障で急激に視力が下がるからこそ、早めに血糖コントロールを整えなければすぐには手術できないケースもあり、手遅れになることも考えられるという。

「糖尿病で大事なことは日頃から血糖コントロールのための治療と目の定期検診を継続して受けることです。受診の際、糖尿病の人は必ず自分に糖尿病の持病があることを告げましょう」(清澤院長)

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