【ひとり旅】ひとりだから行きたくなる、全国の美術館

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**誰かと行く旅もいい。
でもなんだか今は、ひとりで旅がしたい。
おひとりプロデューサー・まろさんによる街ガイド&お楽しみごとエッセイ。**


ひとり時間を提案するメディア「おひとりさま。」を運営している、おひとりプロデューサーのまろです。
連載の第3回目は、「ひとりだから行きたくなる、全国の美術館」をお届けします。

※掲載している情報は、2024年6月現在のものです。店舗情報は変更となる場合がございます。旅行の際は、事前にご確認ください。

ひとり旅で美術館がいい理由

私がひとり旅をするようになって、おそらく最初のマイブームが“旅先の美術館に行くこと”でした。
私は決してアートに詳しい方ではないのですが、美術館という空間そのものが好きで。特に地方の美術館は、建築の設計を含めてその土地らしさを魅力的に引き出しているので、その場にいるだけで土地の風情を味わえるのです。

しかも、ひとりだからこそ、五感でその空間をじっくり味わえるし、自分のペースで気ままに楽しめる。まさにひとり旅向きのスポットだなと思っています。

アートを鑑賞するだけでなく、併設のカフェでひとり時間をゆったり過ごすなんていうのもアリ。そして、美術館のスタッフさんはとても親切で、ものすごい知識量と熱量で教えていただけるのも個人的には楽しみの1つだったりします。
最近はひとり旅で行き先が決まったら、まず「〇〇(地名) 美術館」とその土地の美術館を検索するほど、私のひとり旅には欠かせない目的。今回は、特にお気に入りの3つの美術館をご紹介します。

ひとりで味わいたい、美しい雪景色の“作品”「青森県立美術館」

青森県青森市に位置する「青森県立美術館」。
建築を手掛けた青木淳氏は、私の好きな建築家の方で、実はずっと行きたいと思っていました。

そんな折、仕事で青森に行く機会があり、念願叶って足を運ぶことができました。

訪れた時期はちょうど冬で、美術館がすっぽりと雪に覆われていて。タクシーを降りて、この光景を目にした時、吸い込まれそうになるほどうっとり。時間を忘れてしばらくその場に佇んでしまいました。

美術館の中に入ると、大きな窓から降り積もる雪を眺めることができて、どこを切り取っても“絵画”のよう。作品を鑑賞する合間に、青森らしい美しい雪景色を堪能しました。

もちろん展示作品も素晴らしく、マルク・シャガール氏による舞台背景画の大作4点や、青森県出身の奈良美智氏「あおもり犬」など、ひとりだからこそ、普段より時間をかけてじっくり鑑賞できた気がします。

中でも私が胸を打たれたのが、奈良美智氏の「Miss Forest /森の子」。屋外スペースに展示されているのですが、静寂な空気に包まれてしんしんと降り注ぐ雪と、“森の精”が見事に調和していて、思わず涙してしまいました。こんな風に作品と対峙できるのは、ひとり旅ならではかもしれません。

四季折々、様々な表情を見せてくれそうな美術館ですが、私はやっぱりまた冬を目がけて行きたいなと思っています。

青森県立美術館

〒038-0021
青森県青森市安田字近野185
TEL:017-783-3000
休館日:毎月第2、第4月曜日 (この日が祝日の場合は、その翌日)、年末年始
Instagram:@aomorikenbi
公式HP:

美術館巡りの続きは次のページへ!

作り手にじっくり思いを馳せて 「碌山美術館」

次は、自然豊かな安曇野の地に佇む「碌山美術館」。
日本の近代彫刻の先駆者として名を馳せた、荻原守衛(碌山)の作品を公開・展示するために開館した美術館です。

まず目を惹くのは、蔦に絡まれた西欧教会風の碌山館をはじめとする美しい建築。建物のディテールをじっくり堪能していたら、あっという間に時間が過ぎてしまいます。

ただ美しいだけではなく、ほっこりする要素もあるのが魅力的。
碌山館は、建設にあたり隣の中学生たちの協力もあり、授業時間を割いて玉石、煉瓦や瓦運びに参加してくれていたのだとか。他にも、「グズベリーハウス」「美術の倉」はボランティアによる手作りだそう。みんなの思いが詰まった“手作り感”にも胸を打たれているのだなと思いました。

お庭にはベンチも点在しているので、座って本を読みながらこの風景を独り占めするなんてことも。なんて優雅な時間でしょう!

そして、なんと言っても見どころは、その美しい空間に溶け込む荻原守衛(碌山)氏が残した名作の数々。作品の背景にある彼の数奇な運命を知ると、グッとくるものがありました。

例えば、日本近代彫刻の最高傑作ともうたわれる「女」。想い人が先輩の奥さんだったという荻原守衛(碌山)氏は、叶わぬ想いを作品として昇華してたそうです。「一体どんな思いでこれを作っていたのだろう」「どんなにやるせなかったのだろう……」とひとりで思いを巡らせながら、作品と向き合いました。

「なんかいいなあ」と直感的に作品を鑑賞するのもいいけれど、こうしてじっくり作り手の思いに触れるのも、またいいですね。

碌山美術館

〒399‐8303
長野県安曇野市穂高5095-1
TEL:0263-82-2094
休館日:12月21日~31日、月曜日と祝祭日の翌日
※ 5月~10月は無休開館
Instagram:@rokuzan_art_museum
公式HP:

美しい日本庭園とお茶も嗜める 「藤田美術館

最後は、大阪市都島区にある「藤田美術館」。
美術品愛好家だった実業家の藤田傳三郎氏と、息子の平太郎氏・徳次郎氏による、国宝9件、重要文化財53件を含む貴重な東洋古美術のコレクションを収蔵する美術館です。

2022年4月にリニューアルオープンされ、ガラスのファサードなど開放的な空間に生まれ変わり、入り口には茶屋も併設されています。

「美術館に行く」ことにあまり馴染みのない方もいるかもしれませんが、まずはこの茶屋でゆったりひとり時間を過ごすことを目的に訪れてみても◎
お茶とお団子を嗜み、洗練された空間をじっくり味わえて、とても優雅な時間を過ごせました。

気分が高まったところで、美術館内へ。
コレクションの数々も大変素晴らしいのですが、なんといっても感動したのが館内の“動線”。

重厚感のある藤田家邸宅の蔵だった扉から館内に入り、展示室を抜けると、美しい庭園が……! 始まりから終わりまで、まるで物語を見ているような魅せ方で、心打たれました。

△「冊子形香合」(右)の展示期間は2024年5月1日~7月31日。

そして、旧藤田邸庭園は公園としても開放されています。今回は残念ながら閉園時間を過ぎていて行けなかったのですが、美術館の余韻に浸りながら、ここでゆったり過ごすのもいいなあと。 “次の宿題”が見つかったので、大阪に行く際にはまた立ち寄ろうと思います。

藤田美術館

〒534-0026
大阪府大阪市都島区網島町10-32
TEL:06-6351-0582
休館日:年末年始(12/29~1/5)
Instagram:@fujitamuseum_official
公式HP:

こんな風に、ひとり旅に行く際には、目的地の1つとして美術館を取り入れてみてはいかがでしょうか?
逆に旅先に迷った時、美術館から決めるのもありかもしれません。美しい美術館がある街は、いい街という私の持論もあります!
それでは、良いひとり旅を。

ひとり旅の1枚

碌山美術館の「グズベリーハウス」のドアノブには、こんな可愛らしいヤモリもいました。愛おしすぎる……!

*次回は7月11日(木)更新予定です。

\2024年6月7日発売!/
おひとりホテルガイド
著:まろ
発行:朝日新聞出版

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