ガザ停戦案、ハマスが修正要求 「条件交渉やめる時」と米国務長官

アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は12日、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が続くパレスチナ自治区ガザ地区での停戦と人質解放に向けた現行案をめぐり、ハマスの指導者たちが「多数の変更」を求めてきたとし、もう「条件交渉はやめる時」だとハマスに訴えた。

ブリンケン米国務長官はカタール・ドーハで記者団に対し、ハマス側が求めた停戦案の変更には「実行可能」なものとそうでないものがあるが、アメリカと仲介役のカタール、エジプトは「合意成立に向けて取り組んでいく」と述べた。

ハマスは11日、「この戦争を終わらせる合意に達するため、前向きに関与する」用意があるとしつつ、イスラエルが恒久的な停戦とガザからの完全撤退に同意する必要があると強調した。

イスラエル政府はコメントしていないが、匿名の政府関係者は、ハマスの反応は要するに停戦案への拒否だと述べた。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は今回の停戦案をまだ公には承認していない。

しかしブリンケン氏によると、ネタニヤフ氏は10日にエルサレムで行われた会合で「自身のコミットメントを再確認」したという。

国連安全保障理事会も同日、この停戦案を支持する決議案を可決し、米政府による外交的圧力を増幅している。

ブリンケン氏のカタール訪問にはBBCなどのメディアが同行した。

同氏はムハンマド・ビン・アブドルラフマン・アール・サーニ首相兼外相と会談し、笑顔で抱擁をかわした。

ハマスの政治指導部を10年以上受け入れ、イスラエルとの交渉のパイプ役を務めるカタールは、ガザの危機的状況において重要な役割を担っている。

カタールで共同記者会見に応じたブリンケン氏は、いら立った様子で、アメリカが支持する現在の停戦案にハマスが要求した変更について協議したと述べた。

「ハマスが5月6日に示したのと事実上同じ提案が、交渉のテーブルにあった。全世界が支持し、イスラエルが受け入れたものであり、ハマスも一言『イエス』と答えることができたはずだ」

しかし、「そうする代わりに、ハマスは2週間近くたってからさらなる変更を求めてきた。その多くはハマスがこれまでに受け入れたものを超えるものだった。その結果、ハマスが始めた戦争は続き、より多くの人々が苦しむことになる。パレスチナ人が苦しみ、さらに多くのイスラエル人が苦しむことになる」と述べた。

ハマスが要求している変更内容については語らなかった。

ハマスは停戦案に「前向き」と

ハマスは11日夕に短い声明を発表したが、要求の内容は明らかにしなかった。一方で、「ガザに対する継続的な侵略行為の完全停止」とイスラエル軍の完全撤退は、声明で改めて求めた。

ハマス政治部門のイザット・アル・リシュ氏は、今回の対応は「責任ある、真剣で前向きなもの」で、合意に達するための「広い道筋」を開いたと述べた。

イスラエル首相官邸は公には反応を示していない。

しかし、匿名のイスラエル政府関係者は声明で、ハマスが「主要かつ最も意味のある条件をすべて変更」することを求め、「バイデン米大統領が提示した人質解放案を拒否」したと説明している。

ロイター通信が報じたハマスの12日の声明では、合意に達するための努力においてハマスは「全面的な積極性」を示してきたと主張。ブリンケン氏に対し、イスラエルに「直接的な圧力」をかけるよう求めた。

仲介役、イスラエルとハマスの譲歩必要と

交渉が停滞しているにもかかわらず、ブリンケン氏はアメリカはカタール、エジプトと共に「合意成立に向けて取り組んでいく」と述べた。

「これらの溝は埋められると信じている。しかし、実際に埋められるという意味ではない。最終的には、ハマスが決断しなければならないので」

カタールのムハンマド首相兼外相は、ハマスとイスラエルの双方が譲歩する必要があると語った。

「我々はこの紛争の変化を目の当たりにしており、この戦争を終わらせるという明確かつ確固たる呼びかけがある」

ブリンケン氏もまた、恒久的な戦闘終結を実現するには、ガザにおける「紛争後」の計画をできるだけ早期に策定することが極めて重要だと述べた。

そして、「今後数週間のうちに、統治、治安、復興の管理方法に関する具体的なアイデアを含む『紛争後計画』の重要要素を提案していく方針」だと付け加えた。

新停戦案の内容は

現在の戦争は、ハマスが昨年10月7日にイスラエル南部に前代未聞の攻撃を仕掛けたことで始まった。イスラエルは直後にハマス壊滅を掲げてガザへの報復攻撃を開始した。

ハマス運営のガザ保健省は、これまでに3万7200人以上がガザで殺害されたとしている。

昨年11月に実現した7日間の戦闘休止では、イスラエルの刑務所に収容されていたパレスチナ人囚人約240人と引き換えに、105人の人質が解放された。ガザでは今も116人の人質が拘束されており、そのうち41人は死亡したと、イスラエルは推定している。

バイデン氏が先月末に発表した新たな停戦案は3段階からなる。第1段階で6週間の停戦と、イスラエル人の人質の一部(女性、高齢者、病人や負傷者を含む)の解放、パレスチナ人の囚人の一部を釈放をする。イスラエル軍が「ガザのすべての人口密集地域から」撤退し、人道支援を「急増」させることも含まれる。

第2段階では、「恒久的な敵対行為の停止」の一環として、ハマスが残りの人質を解放し、イスラエル軍はガザから全面撤退する。ただ、撤退は交渉の対象となる。

第3段階では死亡した人質の遺体が返還され、ガザの大規模復興計画が開始される。

米ホワイトハウスは実質的に、イスラエルとハマスの双方を合意に向かわせようとしている。しかし、イスラエルの指導部は依然としてこの停戦案に非常に懐疑的だ。

極右の閣僚たちは米政府による外交を無視するよう、ネタニヤフ氏に圧力をかけている。仮に、アメリカが支持する停戦案に進展があれば、ハマスへの降伏とみなし、連立政権を離脱して政権崩壊の引き金を引くと警告している。

ネタニヤフ首相はこの停戦案が戦時内閣に承認されたことは認めているが、これまでのところ、停戦案への支持を明確には表明していない。

バイデン氏が提示した要旨よりも内容が多いと報じられているイスラエル側の提案は、内容が公表されていない。そのため、バイデン氏が伝えた内容と異なるのかどうかはわかっていない。この停戦案は先月末のバイデン氏の発表に先立ち、ハマス側に伝えられていた。

(英語記事 Gaza ceasefire plan in balance as US says Hamas proposed 'changes'

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