アルゼンチン、抗議デモ参加者と警官隊が衝突 経済改革法案めぐり

アルゼンチンの首都ブエノスアイレスにある議事堂の外で12日、ハビエル・ミレイ大統領が進める経済改革法案に抗議するデモ参加者らに対し、機動隊が催涙ガスや放水銃を放った。議会上院ではその後、同法案が予備的に承認された。

抗議者たちは、改革法案は何百万人ものアルゼンチン国民を苦しめるものだと訴え、火炎瓶や石を投げたり、車に火をつけたりした。

多数の負傷者が報告されている。地元メディアは現場は「戦場」のようだと伝えた。

右派のミレイ大統領が経済立て直しのために提案した改革法案には、経済非常事態の宣言や年金の削減、労働者の権利を弱めることなどが含まれている。

同法案には複数の左派政党や労働組合、社会団体が反対している。

この法案は当初、上院で賛成と反対が共に36と同数だったが、議長を務めるビクトリア・ビジャルエル副大統領が賛成し、12日に予備的に承認された。

「苦しみ、(助けを)待ち、子どもたちに国を離れてほしくないと思っているアルゼンチン国民のために(中略)私は賛成票を投じる」と、ビジャルエル氏は採決後に述べた。

全328条からなるこの改革法案は13日にも正式な承認を得る見通し。その後、最終承認のために下院に戻される。

暴力的な抗議

上院での改革法案の承認に先立ち、抗議者は「この国は売り物じゃない。この国は守られる」と叫んだり、「国家のトップがどうして国家を憎めるのだろうか」と書かれた横断幕を掲げたりした。

抗議者がフェンスを越えて議会へ向かおうとし、ペッパースプレーを噴射する警官に石を投げつける場面もあった。

事態の推移を追っている人や野党議員らによると、抗議者数十人と議員数人が手当てを受けたという。群衆の中にいた少なくとも5人の野党議員が入院したと、セシリア・モロー議員はAFP通信に語った。

少なくとも20人の警官も負傷したとされる。

治安部隊は15人を逮捕したと発表した。

報道機関のものを含む車両2台に火がつけられたと報じられた。警察はその後、抗議者を押し戻した。

「アルゼンチンで、私たちを100年前に後退させるような法律を議論しているなんて信じられない」と、抗議に参加した弁護士のファビオ・ヌニェス氏(55)は述べたと、AFP通信は伝えた。

大統領府はクーデターを企てる「テロリスト」を鎮圧した治安部隊に感謝する声明を発表した。

「我々はアルゼンチンを変え、世界で最も自由な国にしていく」と、ミレイ大統領はブエノスアイレスでの会議で語った。

大きな対立を生んだこの改革法案は、大幅な修正が加えられた後の4月、下院を通過した。

ミレイ氏は公共支出にチェーンソーで切り込んでいくことを公約に掲げ、2023年に大統領に就任した。

選挙戦では、自身の決意を象徴するように、演説中にチェーンソーを振り回していた。

大統領就任以降、内閣の規模を半減させ、公務員5万人を削減し、新規の公共事業契約を停止したほか、年間インフレ率が300%に迫る中、燃料や交通機関に対する補助金を廃止している。

(英語記事 Buenos Aires rocked by clashes over Milei reforms

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