社説:骨太の方針 見えぬ財政健全化の道

 政府は経済財政諮問会議を開き、予算編成の基本指針となる「骨太方針」の案を公表した。

 財政健全化を巡り、2022、23年度の骨太方針では外していた基礎的財政収支の黒字化の達成目標については、現行の「25年度」を堅持すると明記した。

 一方で、日銀がマイナス金利政策を解除し「金利のある世界」に移行しつつあると言及した。国債の利払い費が増え、財政悪化につながる懸念に対し、具体策には踏み込んでいない。

 「骨太」というからには、政権の政策の全体像や優先順位を示すのが本来だ。「経済再生と財政健全化の両立を前進させる」などとしているが、各論でメリハリがなく、総花感が否めない。これで骨太といえるのか。

 岸田文雄政権は裏金問題で求心力の低下が著しい。自民党内の財政規律派と積極財政派の対立を避けた結果、国民負担につながりかねない議論は回避され、玉虫色の書きぶりに収まったのだろう。

 財政不安が社会保障などに対する国民の将来不安につながり、個人消費の長期低迷を招くばかりではないか。

 収支黒字化は出発点であり、本来は巨額債務を抱える財政の再建への道筋を示す必要がある。

 経済の将来像については、人口減が本格化する30年以降も実質国内総生産(GDP)の成長率を1%超とし、物価を上回る賃上げや中小企業の収益改善策などを強調した。

 現実には物価高騰に追いつかず、実質賃金はマイナスの状態が続いている。

 事実上、形だけになっている経済目標の在り方を含め、人口急減社会に見合った産業戦略を考えることも必要ではないか。

 賃上げ促進と物価高対策については、最低賃金の全国平均を30年代半ばまでに1500円に引き上げる目標の前倒しを盛り込んだ。

 サプライチェーン全体で中小企業が取引先に対して必要な価格転嫁を行えるよう、下請法の執行強化や法改正も検討するとした。

 だが、最低賃金の引き上げ時期の目標は、物価の上昇ぶりに比べあまりにも悠長ではないか。事実上の先送りとみられても仕方あるまい。

 中小企業の価格転嫁についても、従来から骨太方針に盛り込まれてきたが、改善はいっこうに進んでいない。停滞の原因は何かを深掘りし、克服の道筋を示すことを求めたい。

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