汚泥から得たエネルギーとIoT活用でエビ養殖 ベトナムで産学連携の実証実験

裕幸計装、九州大学、工学院大学、インターネットイニシアティブ(IIJ)は6月13日、ベトナム南部ティエンザン省において、グリーンエネルギーとIoTを活用した「省エネ型エビ養殖統合システム」の実証実験を開始すると発表した。

本実証は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「脱炭素化・エネルギー転換に資する我が国技術の国際実証事業」の助成を受け実施する。実証期間は、7月から2025年6月まで。

実証を行う「省エネ型エビ養殖統合システム」は、「循環型エネルギー創出ユニット」と「エビ増産ユニット」から構成される。循環型エネルギー創出ユニットは、エビ養殖地の汚泥とレモングラスの加工廃棄物を発酵させ、生成したバイオガスを固体酸化物形燃料電池(SOFC)に供給することで発電を行う。

エビ増産ユニットは、IoTデバイスを使い、溶存酸素濃度、pHなどをセンサーで計測する。またIoTプラットフォームを設計し、養殖地の水質データ、バイオガス発酵槽とSOFCの状態監視などを含むデータの保存と可視化を行う。データの閾値監視やアラート通知機能などのシステムを構築することで、養殖環境とエビの育成状況の相関性を分析し、養殖効率の向上を目指すという。

裕幸計装で事業開発部次長を務める木戸章氏によると、ベトナムの主要産業であるエビ養殖は、電力の供給不足、大量に発生する養殖汚泥による周辺土壌と地下水の汚染、温室効果ガスの発生、養殖池での病気のまん延など、複合的な課題を抱えている。エビの大量死や地域の環境汚染を低減するシステムへの転換が急がれており、今回の産学連携の取り組みによって、環境問題と電力不足という2つの深刻な課題を同時に解決することが期待されているという。

各者の役割は、裕幸計装がシステムの設計と構築、現場管理、ベトナム政府関係者との折衝などを担当し、事業全体を統括する。九州大学は、エビ養殖の汚泥と近隣のレモングラス製油工場から出る抽出残渣を用いた、効率的なメタン発酵法の確立を目指す。工学院大学は、先進工学部機械理工学科で教授を務める白鳥祐介氏が、バイオガスで作動する燃料電池技術の確立に携わる。IIJは、IoTデバイスを使った養殖地の溶存酸素やpHなどの水質を測定し、IoTプラットフォームの設計と構築を行う。

本実証の成果として、1000立方メートルの単位養殖地あたり年間40トンのCO2の削減と、年間平均生残率57%のエビ生残率を、85%まで向上させることを見込む。

裕幸計装でイノベーション本部の本部長を務める菅原俊英氏は、「日本国内のみならず世界各国で電力供給が切迫しており、カーボンニュートラルに向けた動きが加速している。本プロジェクトでは、日本とベトナム両国の研究機関と民間企業の先進技術を結集させ、現地が抱える課題を解決し、地球規模のエネルギー問題へ向け貢献していきたい」と述べた。

プレスリリース

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