【特集】24時間体制で家庭と両立する女性消防士に密着「ワークライフバランス」と市民守る使命【新潟】

勤続23年のベテラン消防士・伊藤恭子さん

最近は、仕事と家庭を調和させる「ワークライフバランス」を重視した生き方が求められています。

警察や消防など、24時間体制の仕事に携わる人は、このバランスをどう保っているのでしょうか。今回、新潟市消防局の女性消防士を取材しました。市民の暮らしを守りながら、家庭生活や子育てに取り組む姿をカメラが追いました。

いつ起きるかわからない災害から、市民を守る消防の仕事。勤続23年のベテラン消防士は、その最前線にいます。
午前7時半、新潟市東消防署。雨が降る中、出勤してきたのは伊藤恭子さんです。
■伊藤恭子さん
「いままでお母さんとして弁当作ってきたりとか、子どもの支度をしてきたので、(制服着て)ようやく仕事モードに切り替わる。」

県内で去年起きた火災は、612件。いつ起きるかわからない火災に備えて新潟東消防署では、43人の隊員たちが24時間交代で勤務しています。なかでも伊藤さんは・・・
■伊藤恭子さん
「先着隊の情報によっては、大型除染システムの導入を考慮する、その旨、司令本部に飛ばしてください!」
■隊員
「了解!」

現場で隊員の役割や動きを決める指揮隊、その隊長を勤めています。市民だけではなく、消防士の命も背負う現場の最高司令官です。
■伊藤恭子さん
「救助活動が必要な事案はどのタイミングで救急隊が関わって、どのタイミングで救助隊出すかっていうところで大事だなというのが、毎回事故現場にあうと実感している。」

「訓練はじめ!」住宅火災を想定した放水訓練。全員の連携に目を光らせます。
■隊員
「(放水ロープおいて)放水準備よし!」

しかし・・・ホースの接続が上手くいかず、水が外に出てしまいました。
■伊藤恭子さん
「しっかり押さえてから圧をかけないと、送った水が途中で水が跳ね上がってた。」
■隊員
「わかりました。」

隊員への指導も、隊長の仕事のひとつです。
■伊藤恭子さん
「半分手作りで冷凍食品半分。子どもが高校生で弁当作らないといけなくて、そのあまりだけ入れた。」

後輩たちは…
■後輩隊員
「面倒とかみてくださって、いろいろ指導もしてくてくださるので、お母さん的な存在。」
「私も子ども2人いるんですけど、朝5時に起きて弁当作るっていうのはまだできない、親としても尊敬する。」

消防を目指したのは、高校生の頃。友人を事故で亡くしたことがきっかけでした。
■伊藤恭子さん
「搬送先が見つからなかったというのが話で聞いていて、それで1番に傷病者のところにかけつけて、運ぶ救急車の仕事がしたいなと思った。」

■2001年消防学校入学式のときの伊藤恭子さんインタビュー
「女性だからっていって特別視されるようですけど、この職場は男女の差はないと思うので、男性に負けないよう一生懸命頑張るだけだと思ってます。」

2001年、新潟市初の女性消防士として入隊。消防学校卒業の1年後、希望の救急隊に配属されました。しかし当時は、差別的な扱いを受けることもありました。
■伊藤恭子さん
「救急にいっても『なんで女性がいるの』と反応されることも多かった。なんですけど、今は普通に活動していても違和感を感じられなくなったので、働く女性が進出してきてくれたおかげなのかなと感じる。」

救急隊配属から2年後、研修期間中に指導を担当していた男性と結婚し、2人の子どもに恵まれました。
■伊藤恭子さん
「子どもたちの会話の中で『お母さんなにやってるの』と話が出てくる、そこでうちの子が話したときに友達から『かっこいいね』と言われる。プライベートでもかっこいい母親でいたい。」

夫婦そろって、24時間の交代勤務。子どものため、どちらかは必ず家にいるようにしていて〝仕事と家庭の両立〟はできているといいます。新潟市消防局は、育児休暇や子どもの看護休暇を設けて子育て世代の職員を支援しています。しかし、女性職員の割合は全体の2%と女性の活躍が進んでいるとはいえません。
■新潟市消防局企画人事課人事育成係 坂上和将係長
「災害現場にいる市民は子ども・女性の方いろんな方がいるので、それに対応する消防士も男性・女性いろんな視点で対応することは多様性が広がるので、女性消防士の方が当たり前に世間で活躍しているようにしていきたい。」

「(館内放送)東区火災司令」セキュリティ会社から火災発生の通報!
■伊藤恭子さん
「必要なうちに壁紙はがしといて。」
■後輩隊員
「了解。」

移動中も時間を無駄にすることなく、隊員の動きを考えます。
通報から約10分後、現場に到着。さっそく、消火活動へ。しかし...
■伊藤恭子さん
「すでに消し止められていて、いま火災原因調査をしている。」

たばこによるボヤ。住人が火を消し止めていて、幸い大きな火事にはなりませんでした。
署に戻ったのは2時間半後。休む間もなく、報告書を作成します。
■伊藤恭子さん
「緊張の糸を張りっぱなしでは切れるのも早いので、事務仕事をしているときはいつ災害があってもいいように思いつつも、気持ち抜きつつ。24時間、気がもつようにやっています。」

勤務は朝10時まで続きました。
■伊藤恭子さん
「気分としては次に家帰って何しようかなっていうところ、子どもが帰ってくる前にやれることやって、ゆっくりしようかな。」

息子の優希くんと、壮良くん。この日は、2人を美容院に連れてきました。
■伊藤恭子さん
「初テストどうだった?」
■息子
「いまのところいい感じかな。」

■伊藤恭子さん
「子どもたちが大きくなったので、親子で話せるときがこういうときしかない。(息子に)ね、(息子)こういう時しか話さない。」

2人とも高校生で、平日の帰宅は夜9時ごろ。月に1度の美容院で、部活や勉強に関する悩みを聞いています。
■息子・壮良さん
「自分も働くことになったら、目指したい姿ではありますね。」
■息子・優希さん
「決めたことは最後までやるし、家事も仕事も両方ともやってるので、それがお手本。習うべきところなのかな。」

24時間市民の命を守る消防士。2人の子どもを育てる母親。これからも両立を続けます。
■伊藤恭子さん
「私みたいになりたいって思う職員が増えてくれたらいいなって思いますので、職場でも一生懸命勉強して見せていきたいし、家に帰ったら楽しいお母さんとして子どもたちと息抜きしながら、頑張っていきたい。」

新潟市消防局では、女性の採用に力を入れていて、7月13日に女性向けの職場説明会を開催します。新潟市ホープページから、申し込むことができます。

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