「老後2000万円」のはずが…物価高で『老後4000万円』に? お金と生きがい求め「シニア」は働く

止まらぬ「物価高」。このままだと、老後に必要な資金が、倍増する可能性も?

ファイナンシャルプランナー 山崎俊輔さん:いま『老後に2000万円』ともし考えているなら、物価が2倍になった未来については『老後に4000万円』。

そんな中で、シニア世代の働き方にも変化が。今後、さらに貴重な人材となるシニア世代の“いま”を取材した。

■じゃがいもやニンジンが高騰 終わりの見えない「物価高」

大阪市・東住吉区の惣菜店。おいしそうな商品の中で、いまピンチとなっているのが「コロッケ」。

デリカ天寅 澤内善紀さん:やっぱり仕入れ値が上がっていますので、利益が圧迫されてます。

5月、雨が多く降ったことなどが影響し、じゃがいもの卸売価格が高騰している。

デリカ天寅 澤内善紀さん:苦しいですね。本来はもう少し高く設定したいんですけど、そうすると、うちは毎日のお客さんが対象なんで、やっぱり1日に1割のお客さんが減る方が怖いなと。

高騰しているのは、じゃがいもだけではない。大阪府八尾市のスーパーマーケットでは…

フレッシュマーケットアオイ 八尾山本駅前南店 高橋秀光店長:ニンジンが価格がちょっと高騰しております。50パーセント~70パーセントぐらい上がっています。

じゃがいもにニンジンと終わりの見えない「物価高」。

■「老後2000万円問題」 物価高で「4000万円問題」に?

そんな中で、いま「老後2000万円問題」に変化が起きていると言われる。

そもそも「老後2000万円問題」とは、2019年の国の金融審議会の報告書で、「年金をもらったとしても、老後の30年間で2000万円が不足する」と発表されたことをきっかけに注目を集めた問題。 当時の国会では、あの2人が議論する場面もあった。

立憲民主党 蓮舫参議院議員(当時):総理。日本は一生懸命働いて退職金をもらって、年金をいただいて、それでも65歳から30年生きると2000万円ないと生活が行き詰まる。そんな国なんですか?

安倍晋三首相(当時):これ(審議会の指針)は不正確であり、誤解を与えるものだったと。

しかし専門家は、もはや「2000万円問題」どころではないと話す。

ファイナンシャルプランナー 山崎俊輔さん:今年1000円で売ってる商品、毎年3.5パーセントの値上げが20年続いたと仮定すると、20年後の値段はほぼ2000円まで値上がりしていることになります。いま『老後に2000万円』と、もし考えているなら、物価が2倍になった未来については『老後に4000万』。

■“55歳以上を対象にした就職イベント”はほぼ満席

こんな状況の中、いま「シニア世代の働き方」にも変化が起きている。およそ50席がほぼ満席となったのは、55歳以上を対象にした就職イベントさ。

参加者に「働きたい」理由を聞いてみると、やはり出てくるのは「お金」の問題。

参加者 60代:(Qお金の面?)そうなんですよ。いま失業保険もらってるんですけど、それもそろそろ終わる。『2000万円』って聞いただけでもみんな『えっ』て言ってるのに、掛ける2なんて。(Q退職した後、働かないという選択肢は?)ないですね。

一方、お金以外の目的もあるようで…
参加者 60代:健康を維持したいのと、1人では何もすることもなく、時間を持て余しているので。

参加者 60代:ライブ。ちょうど土日で東京行ってきて。これ唯一の推しなんです。『ジミンさん(韓国のアイドル)』。行きたいと思ったときに行けないって悲しい。お金がないのが悲しいじゃないですか。そのためにもちょっと働いて、自分のために頑張る。

「生きがい」や「趣味への投資」のために働きたいという人も多くいました。

■シニア世代を求める企業

そんな中、元気なシニア層を求める企業もある。人気テーマパーク、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンだ。

64歳ツアーガイド:ユニバーサル・スタジオ・ジャパンへレッツゴー!

-Q.大変失礼なんですけどおいくつですか?
64歳 ツアーガイド:私いま64歳です。ツアーガイドをいまさせていただいておりまして。

USJでは、55歳以上のミドルシニアを積極採用中。約1万4000人いるクルーのうち、400人ほどが60歳以上だ。

パーク内で道案内をするこちらの男性は65歳。前職は広告関係のデザイナーだった。

65歳 パークの警護担当:パークセキュリティーをさせていただいております。道案内もしますし、レストランのおすすめとかもしますね。

警護担当の方が65歳だと聞いて…
パークを訪れた人 19歳:思ったより若い。元気ですね。こっちも元気な気持ちになりました。

一方で、シニア世代の就労を支援する大阪府の担当者は課題もあると話す。

大阪府 商工労働部雇用推進室 杉山勝さん:一般的にやっぱり高齢者になると、健康面であるとか、体力面については低下をしていくというふうに、企業さんは思われている。

■シニア世代がやりがいをもって働ける環境作りが求められている

そんなシニア世代の労働力をうまく活用するにはどうすればいいのだろうか。大阪・門真市の保育園では、60代~70代は10人が働いていて、通園バスや保育の補助などを担当している。過去には88歳まで働いていた人もいたということだ。

-Q.以前はこういったお仕事をされていた?
保育補助3年目 山城きよさん(71):してません、初めて。シルバーの方から紹介されて、今年で3年目なんです。家にずっといるよりは元気になります。顔と名前を覚えるのが大変ですけど。

子どもたちとの外遊びは体力勝負。そのため、この保育園ではほとんどの人が3時間~4時間の勤務で、継続して無理なく働いてもらえるよう勤務体制を整えているということさ。

保育補助8年目 松本アケミさん(70):体力要ります。でもね子どもたちの笑顔に癒されてます。

シニア世代の弱点をうまく補うことで、これまで子どもや孫と接してきた経験や、子どもたちを引き寄せる優しさといった「強み」が活かされる。

保育教諭:やっぱり安心感があるので、子供たちもすごく懐いて遊びに行ったりだとかして、シルバーの先生たちにすごく助けられています。

保育補助8年目 松本アケミさん(70):あるお子さんが私のこと『ばぁば』って呼ぶんですよ。おばあちゃんの気持ちで私は接しているんです。体力が続く限り頑張れたらしようかなと思うんですけどね。

止まらぬ物価高の中、シニア世代がやりがいをもって働ける環境作りが求められる。

■働きたいシニア層と企業のニーズをマッチさせていくことが課題

シニアの皆さんにはスキルがあるので、それを生かせる場が増えたらいい。

菊地幸夫弁護士:接客なんていうのは、やっぱりある程度経験を積んだ人の人生がにじみ出てくるようなやり取りが、むしろいい面もあると思うんです。

菊地先生は弁護士という“スキル”をお持ちだが、いつまで仕事をしようと考えているのだろうか?

菊地幸夫弁護士:私は今月で67歳なんです、70歳半ばぐらいまでは働こうかなと、いま思っているんですけど、その時になったら分かりません。『もういやだ』か『まだやるか』。

企業の側には定年の壁というのがある。

関西テレビ 神崎報道デスク:シニアの人にどこで働いてもらうかというのは大事で、一番は今働いている企業が定年を伸ばしていって、そこでどう活用するか。いま60歳で一回定年になって、65歳までは雇用延長があるんで、これが多分70歳まで伸びると思うんです。この60歳~70歳の間に会社内でどういった仕事をしてもらうのか。実は企業も探りながら考えているところです。企業のある種理想の形、シニアをどうやって活用するかという理想の形ができれば、もっとうまいこと社会が回ってくるのかなと思います。

働きたいシニア層と企業内で必要な労働力をどうマッチさせていくのかが、これからの課題だと言えそうだ。

(関西テレビ「newsランナー」 2024年6月13日放送)

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