知事のパワハラ疑惑を追及『百条委員会』設置決定 兵庫県議会で51年ぶり 2025年の知事選にも影響か

斎藤知事のパワハラ疑惑をめぐり、兵庫県議会で51年ぶりとなる百条委員会の設置が決まった。知事が百条委員会の調査の対象となるのは極めて異例だ。

■兵庫県議会で51年ぶりとなる「百条委員会」の設置が決定

兵庫県議会 内藤兵衛議長:元県民局長の文書問題の内容調査に関する動議を議題といたします。

13日、兵庫県議会に提案されたのは、議会が強力な権限で関係者の出頭や証言を求めることができる「百条委員会」の設置について。

うその陳述や正当な理由がなく出頭を拒否した場合などは、禁固刑などが科せられることもあり、議会の”伝家の宝刀”ともいわれている。

異例の事態に発展した事の発端はことし3月。当時の西播磨県民局長(60)が、斎藤元彦知事のパワハラ行為などを告発する文書を、一部の報道機関などに配布した。

県は内部調査の結果、告発文は「核心的な部分が”事実無根”」であるとして、元県民局長を停職3カ月の懲戒処分とした。

しかし関西テレビが現職の県職員や、OBなど10数人を独自取材したところ…

県の関係者:内容的には本当のことが、書かれているのかなという印象です。『車から降りて20メートル歩かされた』という部分に関しては、私も聞いたことあります。

知事は地域の市長たちとの意見交換の会場に向かう際、公用車から入口までの20メートルほどを歩かされただけで職員らを叱責したといい、8人の関係者がこの叱責について見たり、聞いたりしたと答えた。

斎藤知事はパワハラには該当しないとしたものの、“叱責”していたことについては認めていて、第三者委員会で再調査する考えを示している。

■「百条委員会」の設置の討論 県民は「不名誉」

13日の本会議で、最大会派の自民とひょうご県民連合は共同で、「百条委員会」の設置を提案。そして賛成と反対双方の立場から討論が行われた。

・反対討論
維新 岸口実議員:百条委員会は第三者機関による調査で解明できない場合、調査が不十分で県民の理解や納得が得られない場合に、設置を検討するものと考えます。

・賛成討論
県民連合 迎山志保議員:知事当局が設置する第三者委員会と、百条委員会は全くの別物であり、百条委員会は県民に開かれた場です。知事当局にとっても事実無根の内容を明らかにし、身の潔白を証明し名誉を回復する機会だと考えます。

そして、議員85人による投票が行われた結果…

兵庫県議会 内藤兵衛議長:投票総数85票。白票(賛成)50票、青票(反対)35票。本動議は可決されました。

兵庫県議会では1973年以来、およそ半世紀ぶりに「百条委員会」の設置が決まった。

全国でも異例となる「百条委員会」の設置に県民は…。

兵庫県民:県民として不名誉ですね。知事がそういうこと(百条委員会に)かけられるのは不名誉なこと。

兵庫県民:悪いことなどが発覚すれば、どんどん取り上げて、正してほしいです。

斎藤知事は…
兵庫県 斎藤元彦知事:全国的にも兵庫県議会でも数十年ぶりで、大きなご判断だったと、私自身も真摯に受け止めている。文書問題等に関してしっかり説明責任を果たす。そして改善すべきところは、きちっと改善して、県政を前に進めるのが私の大きな責任。

知事のパワハラ疑惑で大混乱の兵庫県政。強力な「百条委員会」による調査で真相の解明が待たれる。

■第三者委員会の調査結果が覆った場合…「来年の知事選への影響は免れない」とある県議

これまで取材を続けてきた原田記者が報告する。百条委員会の設置は最大会派・自民党が中心になって求めたが、背景には何があるのだろうか?

原田笑加記者:先ほどまで議会が行われていた兵庫県公館前からお伝えします。私たちが取材を進めていると、当初、自民党内部でも百条委員会の設置について、かなり意見が割れていました。その中でも、自民党幹部はかなり後ろ向きで『第三者委員会の調査結果を見てからだ』という意見もあり、”ことを大きくしたくない”という風にも受け取れました。しかし、知事の会見や議会の答弁のなかで、調査結果に疑念が残るような新たな事実が浮かび上がったことなどから、結果として、百条委員会の提案をせざるを得ない状況に追い込まれていたと見られます。

百条委員会では、具体的にどのような項目を調べるのだろうか?

原田笑加記者:調査の対象となるのは、元県民局長が配布した告発文に書かれている、知事のパワーハラスメント行為など、7つの項目についてです。私たちもこれまでに職員など10数人に取材を行ってきましたが、告発文に書かれている『20メートルほど歩かされただけで、職員らを叱責したのは事実だ』という証言も出ています。今後、議会は職員を中心に聞き取りをしたり、関係者に出頭を求めるなどして、内部調査で”事実無根”とされた内容を検証していくとみられます。

これまで、事実無根とされてきた調査結果について覆るような事があれば、どのような影響があるのだろうか。

原田笑加記者:すでに県議会では、事実が覆った場合の知事の政治的責任について追及する声が上がっていますが、知事は先ほど『仮定の話には答えられない』とした上で、『自分の言葉で文書に関する考え、内容について説明する機会を設けたい』と話しました。ただ、ある県議は『来年の知事選への影響は免れない。われわれは徹底的に事実を明らかにする』という意見や、前回の選挙で斎藤知事を推薦した自民の県議からも『この局面を乗り切りたいなら、調査に対して誠実に説明責任を果たすべき』との厳しい意見も聞かれています。

■「事実の解明の手段としてはどうか」と菊地弁護士

この問題について、番組コメンテーターの菊地幸夫弁護士は次のように話す。

菊地幸夫弁護士:事実を解明するということであれば、例えば関西テレビのインタビューや調査でも、ある程度事実は分かってきます。百条委員会ということになると、そこでしゃべる人は『ウソを言ったら刑罰ですよ』というプレッシャーの中でしゃべらなきゃいけない。そうすると、あやふやだと思ったら『記憶がない』とか、『わかりません』と、かえって事実の調査のためにこれが本当にいい方法かというと、私はちょっと疑問がある。
むしろ政治的な思惑の中で、来年の知事選という話もあり、そういう中で相手を追い込む手段になってしまうじゃないかということで、事実解明ということでは、いい手段かどうかというのは、ちょっと疑問かなと思います。

他にも第三者委員会で調査が進められるということになっている。

菊地幸夫弁護士:屋上屋を重ねてしまうということにもなるかなと。第三者委員会の結論を見てから判断でもよかったのかなと。

■県民に“開かれた場”で真相に迫ることができるのか

今後のポイントはどのような所だろうか?

関西テレビ 神崎博報道デスク:都道府県知事が百条委員会にかけられるのは本当に異例なことで、かつて東京都知事の猪瀬元都知事が一度かけられそうになりましたが、その前に辞めたのでかからなかったのですが、そういう非常事態だと思ってほしいです。
百条委員会というのは、議会というオープンな場でやるという点が、第三者委員会と違うところで、県民にも開かれた場所でやります。あとは調査権限というものがあり、かなり強い権限があるので、職員を実際に百条委員会に引っ張ってきて、そこでしゃべらせることもでき、拒否ができません。そういう意味においては、かなり開かれた場で、実際に真相に迫ることができるかというのは、その議員の腕次第ではありますが、そこに期待したいと思います。

厳正な調査で真相の解明につなげてほしい。

(関西テレビ「newsランナー」2024年6月13日放送)

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