『ぼっち・ざ・ろっく!』初登場1位 トップ10の半分は国内アニメのシリーズ作品に

公開9週目の『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』、公開3週目の『帰ってきた あぶない刑事』が息切れする中、その合間を縫って6月第2週のトップに立ったのは、『まんがタイムきららMAX』に連載中の4コマ漫画を原作とする2022年に放送されたTVアニメを再編集した『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:』。オープニング3日間の動員は14万人、興収は2億1800万円。同作は2部作の前編で、8月9日からは後編の『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:Re:』も公開される。このペースでいくと、入場者プレゼントなども最大限に利用して、後編の公開時までうまくバトンを繋いでいけそうだ。また、昨年のハリウッドのストライキなどの影響もあって、今年の夏は有力作品不足による空前の「夏枯れ」になりそうなので、2作連続でトップになることも十分あり得るだろう。

アニプレックス単独配給の作品がトップに立つのは、昨年9月公開の『劇場版シティーハンター 天使の涙』以来、約9ヶ月ぶりのことだが、先週末のランキングには他にもシリーズものの国内アニメーション作品がズラリと並んでいる。『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:』のほか、2位の『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』、5位の劇場版『ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』、7位の『コードギアス 奪還のロゼ 第2幕』、8位の『劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD』と、実に10作品中5作品。ランキングのトップ10のうち外国映画は1作品だけ(『マッドマックス:フュリオサ』)、シリーズものではない実写のフィクション作品も1作品だけ(『違国日記』)、みたいなこの状況にもすっかり慣れてしまった。

来月の7月3日、2015年8月にリアルサウンド映画部の発足と同時にスタートさせた本連載を9年分(本の論点を明確にするために収録されているのは2016年下半期以降の記事)まとめた『映画興行分析』が刊行される運びとなったが、そこには上記のような日本の映画興行が変容していく過程が克明に記録されている。特にコロナ禍の2020年と2021年を経てからのここ数年の動きはあまりにもダイナミックなもので、それを象徴するのが先週末のランキングと言える。この傾向はこれからも加速することはあっても、減速することはないだろう。つまり、ふと冷静になって考えてみると、これからの日本国内の映画興行分析は、自分のような映画プロパーの人間ではなく、国内アニメーション作品のエキスパートがするべき仕事なのかもしれない。そんな自問自答の日々は続く。

(文=宇野維正)

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