『ONE PIECE』『葬送のフリーレン』『お隣の天使様』etc. ドイツ人に好きなアニメと理由をヨーロッパ在住ライターが聞いてみた!【ドイツのアニメ事情①】

ヨーロッパのアニメ・マンガ事情はどんな感じなのでしょうか?
どんなジャンルのアニメが人気があるのか、日本と海外の文化の違いからアニメの世界はどう見えているのか、など……。

そこで現在オーストリア・ウィーン在住の30代オタク女子ライターが、ドイツのアニメ・マンガファンに向けて広くアンケートを実施
ドイツはフランスやイギリスなどと並んでヨーロッパのなかでもアニメ市場が大きく、国内最大級のアニメイベントでは15万人以上の来場者数なども記録しています。

今回は、アンケートの中からドイツに住む方々の「好きなアニメとその理由」を紹介します。

『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』のファンですごい熱量で長文の回答をしてくれた方や、ひとつに絞れずに15以上のタイトルを挙げた方など……たくさんの回答をいただきました。Vielen Dank!(日本語訳:本当にありがとうございます!)

筆者がこれまでドイツのアニメファンと知り合ったなかでの所感としては、ドイツのアニメファンは『進撃の巨人』や『鬼滅の刃』のようなバトルありのシリアス系が人気な印象だったのですが、果たして……?

『FAIRY TAIL』『CLANNAD』…アニメで自分自身も変われた「視聴後は世界が変わって見える」

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『葬送のフリーレン』
「これは答えるのが難しい質問だ。私はアニメという芸術形式に大きな敬意を持っている。たくさん語りたい作品もあれば、そうでもない作品もある。そして子どもの頃に印象に残っている作品もあれば、大人になって好きになった作品もあるし。今はたとえば『葬送のフリーレン』を好きで観てるよ。このアニメはとても平穏で、80年代にドイツで放送されていた古いアニメを思い出させるね」(40歳)

『ダイヤのA』
「いろんな感情が伝わってきて、本当に熱中する!キャラクターの成長もわかりやすく表現されているよね」(19歳)

『Re:Creators』
「理由はたくさんあるよ。多くのアニメでは今社会が抱えている問題、もしくはこれから私たちに待ち受ける問題に焦点を当てているよね。『Re:Creators』はストーリーが本当によく出来ていて、それに素晴らしい作画と私の大好きな作曲家の音楽が付属してる!」(26歳)

『SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん』
「このマンガは日本語のものしか見つけられなかったから、日本語を勉強したんだ。だから私にとってはすごく大切なものになったし、さらにマンガ自体すごくおもしろい」(29歳)

『FAIRY TAIL』/『CLANNAD』
「私がたくさんのことを学んで、かつ私自身を変えてくれたアニメ。たとえば『FAIRY TAIL』にはルーシィというキャラクターがいるんだけど。お金持ちの家で育ったから働く必要がないのに、彼女は安いアパートに住んで仕事をしているんだ、それが彼女の幸せだから。それを観て私は、車とかオシャレな家、ロレックスの時計みたいな高いモノとかは、私が幸せになるためには別に必要ないって気付いたんだ。『CLANNAD』も同じ。『CLANNAD』を観た人は、視聴後に世界が変わって見えると思う。もっと語りたいけど、この質問の範囲を超えるかな 😀 」(23歳)

『HUNTER×HUNTER』
「私は少年マンガとファンタジーアニメが好きで、特に「キメラアント編」は私がこれまで観たなかで一番の鬱アニメ」(25歳)

『もののけ姫』『ナウシカ』ドイツでも名作は名作のまま「夢中にならないわけがない!」

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『とらドラ!』
「『とらドラ!』は私が初めて観たアニメで、これまで観たアニメのなかでも一番素晴らしいアニメ」(21歳)

『もののけ姫』
「好きなアニメが多すぎて選べません!でも私は『もののけ姫』に決めました。なぜならこれまでで一番、それはもう何日も何日も私を夢中にさせたアニメだから。どうしてもDVDが欲しくて買ったよ、しかも私が初めて手にしたアニメDVD。
夢中にならないわけがない!まず信じられないくらい素晴らしい作画と(もちろんジブリクオリティだから。でも当時はアニメについてよく知らなかったんだ)、そしてたくさんの自然と日本文化の要素が表現されているから。神秘的だけど残酷な完成された面白いストーリーも。(退屈なハッピーエンドの物語は好みじゃない)
私にとって良いアニメに重要なのは音楽。『もののけ姫』の音楽も大好き!」(30歳)

『夏目友人帳』
「ニャンコ先生に夢中です =^_^=」(42歳)

『風の谷のナウシカ』
「『ナウシカ』のディストピアな世界にものすごく魅力を感じる!宮崎駿は女性の主人公をステキに描写できているし、自然と戦争に関して、表面化していないにも拘らず感じられる曖昧な両面性を非常によく描写している」(19歳)

『ONE PIECE』
「尾田栄一郎が作る物語は本当にとんでもないよ!世界を構築するさまざまな理論と伏線、たくさんのプロット。『ONE PIECE』は20年以上前から私とともにあり、私の一部。どんな状況下でも『ONE PIECE』はそこにいるんだ。そしてこの『ONE PIECE』愛のおかげで世界中の人と出会うことができたんだ」(26歳)

アニメ『お隣の天使様』からドイツの社会問題への提起?「より良い世界への希望を与えてくれる」

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『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』
「主人公たちの思いやりのある愛にあふれた関係が好き!彼らがゆっくりとお互いを知っていき、誰にも邪魔できない深くて近い繋がりを築く様子を描いているんだ。2人はお互いを知ることで、辛い過去を忘れていくんだよ。相手との親密さの表れであるボディタッチがあるのも好きな点かな(日本文化が関係しているんだろうけど、他の恋愛系アニメではそういった描写が少ないと思う)。

ドイツでは最近恋愛をすることが難しい社会になってきているんだ。(中略)“自己表現”とキャリアに重きが置かれていて、恋人との時間を取れなくなってきている。ドイツの女性の1人当たりの出生率は現在1.36人で…(中略)これは人間関係や家族に対する責任を負えないっていう、一種の社会の病気が原因だね。

『お隣の天使様』の主人公たちは、真に愛情にあふれた関係がどのようなものか示してくれてるんだ。それは私を慰めて、より良い世界への希望を与えてくれる。もし多くの人がこの物語を観たら、愛とか人間関係とかについてより思いやりを持って、かつ責任ある観点から考えられるようになると思う。

それと、もうひとつ。私は長い髪のキャラクターが大好き。だから真昼(※本作のヒロイン)も大好き!多分当時観ていた『1000年女王』の影響が大きいかな」(年齢非公開)

『少年のアビス』/『サイバーパンク エッジランナーズ』
「『サイバーパンク』はストーリーのテンポが完璧で、悪い結末もなくキャラクターの成長も良かった。『少年のアビス』は私が初めてマンガで泣いた作品」(19歳)

『サムライチャンプルー』
「素晴らしいアートスタイルとジャズ音楽がかっこいい!あとロードムービーみたいな作り方が、ストーリーをさらに面白くしてるね」(24歳)

多すぎて選べない?いくつも作品を書き連ねる回答も

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「ジャンル別のランキングなら浮かんでるけど。『黒執事』『PSYCHO-PASS サイコパス』『DRIFTERS』『とある科学の超電磁砲』『ワンパンマン』『サイバーパンク エッジランナーズ』『鋼の錬金術師』『BROTHERHOOD FINAL FANTASY XV. 』などなど……。
どのアニメも異なった雰囲気を私にもたらしてくれるから。主人公側と敵側は一貫しているべきだよ。どの作品もキャラクターたちの住んでいる世界が、政治や経済、文化、科学などを通してよくわかるよね」(33歳)

「アニメなら『BLACK CAT』『美少女戦士セーラームーン』『会長はメイド様!』『NARUTO -ナルト-』『Angel Beats!』、マンガなら『夢幻伝説タカマガハラ』『満月をさがして』『チャームエンジェル』が大好き!
『BLACK CAT』は主人公が最高 xD(笑)それに面白くてロマンティックでかわいくて、いろんな感情を持っているから。マンガは読んでいる時に別の世界に連れて行ってくれるような作品が好きかな、現実を忘れられる。自分と同じように感じて、似たような経験をしているキャラクターを見つけるのも楽しい」(26歳)

『赤髪の白雪姫』『ドラゴンボール』『キャプテンフューチャー』『シャングリラ・フロンティア』『ゆびさきと恋々』『薬屋のひとりごと』『道産子ギャルはなまらめんこい』『異世界でもふもふなでなでするためにがんばってます。』(以下略。なんと15以上の作品を挙げてくれました)
ドキドキさせてくれる、笑わせてくれる、そしてリラックスさせてくれるような作品が大好き!あと、たいてい道徳的な要素が入っているかな」

ドイツでもアニメ・マンガオタクの熱量は変わらない!

アンケート結果からドイツのオタクも『ONE PIECE』や『葬送のフリーレン』などの有名作品から少しコアな作品まで、さまざまなジャンルの作品を楽しんでいることがわかりました。

筆者が印象に残ったのは、今回一番の長文回答だった『お隣の天使様』ファンの方のドイツの出生率問題と絡めたコメント。ドイツには議論好きな方が非常に多いのですが、その片鱗が見えた気がします。

次回の【ドイツのアニメ事情②】では「好きな声優とその理由」と「どこで、どのようにアニメ・マンガと出会ったか」のアンケート結果から、ドイツのアニメ事情を深掘りします!

調査概要

調査タイトル:「Umfrage für die deutsche Anime Situation」
調査対象:ドイツに住むアニメ・マンガファン
調査方法:インターネット
調査期間:2024年2月25日~2024年3月28日

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