バイト中に「トイレで出産」赤ちゃんを死亡させた罪「助ける意思はなかった」女に懲役3年 執行猶予5年の判決

大阪市内の飲食店のトイレで出産した赤ちゃんを放置し、死亡させた罪に問われている女に、大阪地方裁判所は執行猶予のついた有罪判決を言い渡した。

■バイト中にトイレで出産 放置して死亡させた罪

小関菜津美被告(35)は去年8月、阿倍野区の飲食店でアルバイト中に、トイレで男の赤ちゃんを出産したものの、放置して死亡させた保護責任者遺棄致死の罪に問われていて、これまでの裁判で起訴内容を認めていた。

■「産婦人科の受診や母親などに相談するなど出産の準備をしなかった」と検察側

検察側は、「被告は周囲の人からも指摘され、去年7月には妊娠を確信した。しかし、産婦人科の受診や母親などに相談するなど出産の準備をしなかった」

「そうしていれば事件は起きず、赤ちゃんが死亡することもなかった。赤ちゃんの命が奪われた被害結果は重大」などと懲役4年を求刑した。

■「妊娠が発覚すると父親は誰かと聞かれ風俗店で働いていたことがわかってしまう」と弁護側

一方弁護側は、「望んだ妊娠であれば、喜んで周りの人にも相談し、準備を整えることもできたが、今回は妊娠が発覚すると父親は誰かと聞かれ風俗店で働いていたことがわかってしまう」

「病院に行かなかったのは、当時保険証を持っておらず、持っていない人は病院で診てもらえないと思っていた」 「母親や当時の勤務先の店長がサポートを約束している」などとして、懲役3年・執行猶予5年を求め、執行猶予期間には保護観察もつけられると提案した。

■「個室トイレの鍵を開かないように手で押さえ、トイレには蓋をして出てきて、助ける意思はなかった」

13日の判決で大阪地裁(三村三緒裁判長)は、「飲食店のトイレで出産した赤ちゃんは鼻や口が水につかり、呼吸ができなくなって10分程度で死亡した」

「当時トイレの外には被告を心配した母親や、店の店長や従業員がいて、出産直後の短時間に便槽の中から赤ちゃんを取り出すことは容易であったとは言わないが、助けを求めて延命措置をしてもらうことは簡単だったのに、被告は母親の呼びかけにも『無理』と返事するのみで、やってきた救急隊員にも出産の事実を告げなかった」

「個室トイレの鍵を開かないように手で押さえ、トイレには蓋をして出てきて、助ける意思はなかったと認められる」

「一方で出産による精神的な混乱があり、全く酌むべきことがないとは言えない。望まない妊娠で、何度も指摘されながらも母親に相談せず、医療機関を受診しなかったのは、自分のことを話すのが苦手という性格や困窮していたこと、健康保険に加入していなかったことなども影響しているとはいえ、自ら現実に向き合わないまま出産に至ったということで、大きく酌むべき事情とは言えない」と指摘した。

一方で「母親が一定期間同居して監督する旨を誓約しているほか、アルバイト先の店長が、被告が希望すれば継続して雇用するなど支援の意思を表明している」などとして、保護観察のついた懲役3年執行猶予5年の判決を言い渡した。

判決の言い渡しの間、小関被告はうなだれるように下を向き、裁判長が執行猶予や保護観察について説明すると、か細い声で「はい」と答えていた。

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