阪神・豊田 プロ初安打&マルチ 打線起爆23イニングぶり得点呼んだ 2年連続リーグ30勝一番乗り

 4回、フェンス直撃の二塁打を放つ豊田(撮影・山口登)

 「オリックス0-5阪神」(13日、京セラドーム大阪)

 “ヒロシ”が得点力不足に悩むチームに新風を吹き込んだ。阪神・豊田寛外野手(27)が2年ぶりとなる今季初スタメンで二回にうれしいプロ初安打を記録した。四回には左翼フェンス直撃の二塁打で好機を広げ、23イニングぶりの得点を呼び込んだ。チームは連敗を2で止め、2年連続セ・リーグ30勝に一番乗り。関西ダービー3戦目でオリックスに一矢報いた。

 やっと、やっとだ。緊張が解かれ、豊田の顔がほころぶ。これまでの日々がすべて詰まった言葉だった。

 「本当にほっとしている。プロ野球始まったなって感じです」

 岡田監督の期待に応え、起爆剤になった。「7番・左翼」で22年4月20日・DeNA戦以来のスタメン。「やるしかない」と気合を入れた。想像以上の緊張に初回、先頭の来田の打球を落球。それでも梅野、西勇に「思い切ってやれ」と背中を押され、打席に向かった。

 二回2死一塁から田嶋のフォークを右前へ。プロ通算11打席目、ついに出たプロ初安打。「ファームでやってきた形のヒットだった」と右手を突き上げた。四回1死一塁の2打席目でも141キロ直球を強振。打球は左翼フェンスを直撃。あと少しでプロ初本塁打という特大二塁打で好機を拡大し、先制劇を呼んだ。

 東海大相模では3年時に4番打者として全国制覇に貢献。国際武道大、日立製作所を経て、2021年度ドラフト6位で入団した。しかしプロ入り後は「苦しいことしかなかった」と振り返る。一年目はプロ初出場を果たすも安打を放てず。昨季は春季キャンプ中に両足ふくらはぎの肉離れを発症。1軍昇格を果たすことができなかった。

 その中でチームはリーグ優勝と日本一に。戦力外も頭をよぎった。オフには結婚も発表。「家族もできたし頑張らないと」と奮い立った。昨季、ファームの遠征先、食事の席で高山(現オイシックス)からこんな言葉をかけられた。「外野手は打撃が8割。(打率)2割5分台なんかいらんやろ」。圧倒的数字を残さないといけない。1軍の厳しさを知る先輩からのメッセージだった。

 「今年ダメだったら終わる。中途半端な数字ではダメだ」。豊田もその覚悟で今季に臨んだ。オフから下半身を使って打つことを意識。巡ってこないチャンスに気持ちが切れそうになった時もあったが、「絶対にチャンスは来る」と自分に言い聞かせて奮い立った。ファームでは打率・331。圧倒的数字を残して1軍にはい上がってきた。

 この日は愛妻も応援に。支えてくれた人にも活躍を届けられた。「守備でミスをしてしまったので練習して、打撃も良くなるように。出された場所で結果を出せるように」。やっとスタート地点に立った。豊田寛のプロ野球人生はここからだ。

 ◆リーグ30勝一番乗り 阪神のリーグ最速30勝は2年連続で12度目。過去11度の内、最終的にリーグ優勝したのは3シーズン。また、62試合での30勝リーグ一番乗りは最も遅いペースとなる。なお、過去5シーズンでリーグ一番乗り球団の最終順位は19年・広島=4位、20年・巨人=1位、21年・阪神=2位、22年・巨人=4位、23年・阪神=1位。

 ◆豊田 寛(とよだ・ひろし)1997年4月28日生まれ、27歳。横浜市出身。178センチ、88キロ。右投げ右打ち。外野手。東海大相模、国際武道大、日立製作所を経て2021年度ドラフト6位で阪神入団。プロ初出場は新人だった22年4月3日・巨人戦で代打。同年オフに結婚。今季ウエスタンは51試合で打率.329、20打点でアピールし6月7日に1軍昇格を果たした。

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