夫〈月収42万円〉×妻〈月収38万円〉、共に教師の40代安泰夫婦が「破産危機」に陥ったワケ

(※写真はイメージです/PIXTA)

複雑怪奇な日本の年金制度。きちんと理解していないと、思わぬ損をすることもしばしば。そこなかでも理解が難しいのが、働きながら受け取る「在職老齢年金」。場合によっては「年金支給停止」という、なんとも悔しいことが起きることもあるようです。みていきましょう。

毎年、約7万人が自己破産…原因1位は「生活苦・低所得」だが

裁判所『令和5年司法統計年報(民事・行政編)』によると、2023年、裁判所で新しく扱った破産事件は7万8,215件。そのうち、7万0,589件が個人の自己破産でした。過去5年の破産事件の推移をみていくと、7万~8万件で推移。その9割が個人の自己破産で、毎年6万~7万人にのぼります。

【破産事件数の推移】

2019年:8万0,202件

2020年:7万8,104件

2021年:7万3,457件

2022年:7万0,602件

2023年:7万8,215件

自己破産は、借金を返済できなくなってしまった人が裁判所に申立てを行なうことで、一般的に破産手続きといわれているものは、「破産」の手続きと「免責」の手続きに分かれます。「破産」は財産を処分して債権者に配当すること、それでもなお借金が残ってしまった場合は、借金を免除=免責してもらいます。

自己破産の主なメリットは「借金の支払いが免除される」「99万円以下の現金や20万円以下の預貯金など、裁判所で定める一定基準の財産を残すことができる」の2つ。一方で「財産を処分する必要がある」「クレジットカードやローンを5年以上利用できなくなる」「官報に公告される」「職業・資格に制限がかかる」といったデメリットがあります。また税金や社会保険料、罰金、科料など、免責されない借金もあります。

日本弁護士連合会が行った『2020年 破産事件及び個人再生事件記録調査』によると、借金を負った原因として最も多かったのは「生活苦・低所得」で61.69%。「病気・医療費」23.31%、「負債の返済(保証以外)」20.48%、「失業・転職」17.58%、「事業資金」16.13%、「生活用品の購入」14.76%と続きます。また平均負債額は1,449万9,580円でした。

やはり、低収入などの理由から生活が苦しく、借金を重ねてしまうケースが多くみられますが、なかには安泰のイメージがある人たちが借金を重ね、自己破産に至るケースも。

弁護士に自己破産の相談にきたという40代夫婦のケースもそう。共に小学校の教師だというふたりは、世間からは破産からほど遠いとイメージされる夫婦ではないでしょうか。

なぜ、ゆとりあるはずの40代教員夫婦は、借金を重ねていったのか?

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』によると、男性の小・中学校教員(平均年齢40.4歳)の平均給与は月収で42.2万円、年収で677.6万円。女性の小・中学校教員(平均年齢40.2歳)の平均給与は月収で38.9万円、年収で603.2万円。平均的な給与を手にしているとすると、世帯年収は1,200万円を超え、世間的には十分に余裕があると考えられるでしょう。また「学校の先生は無理な借金なんてしない」というイメージがあり、破産からはほど遠いふたりといえます。

それにも関わらず、なぜ夫婦は借金を重ねてしまったのか。そこには、昨今言われている、教師の劣悪な労働環境に原因があるようです。

夫「ストレス解消で始めたギャンブルに、のめりこんでしまい……」

妻「わたしもストレス発散のために、借金までして買い物を続けてしまいました」

自己破産の危機にある教師が、すべてストレス発散のためにギャンブルや散財のために借金を重ねているわけではありません。ただ教師はその職業から信用力が高く、金融機関や消費者金融もどんどん貸してしまう……結果、返せなくなるまで借金を重ねてしまうケースがみられるようです。

文部科学省『2022年度学校教員統計調査』によると、精神疾患により離職をした小学校教員は581人。2010年調査では359人で、1.6倍に増えています。その背景にあるのが、前述の通り、労働環境にあるといわれています。また誰もがスマホで簡単に連絡を取り合えるような世の中になり、以前よりも保護者とのコミュニケーションが個人単位で活発になり、大きなストレスになっているという現場からの声も。

日々、たまるストレスの解消のため、借金を重ねてしまう……自己破産寸前の夫婦の背景には、教員を取り巻く諸問題があるようです。

[参考資料]

裁判所『自己破産の申立てを考えている方へ』

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』

文部科学省『2022年度学校教員統計調査』

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