XG、『Mステ』で日本のテレビ番組初歌唱 何者にも定義されない“宇宙人”が与える衝撃

ガールズグループ・XGが、6月14日放送の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)にて日本のテレビ番組で初歌唱する。2022年1月に突如その姿を現した彼女たちはいったい何者なのか。知っているようで実は知らない人も多いXGのこれまでの活動を辿りながら、満を持して日本のテレビで初披露される最新曲「WOKE UP」についても紐解いていく。

XGの起源は、「XGALXプロジェクト」にある。同プロジェクトでは世界に通用するアーティストの育成・デビューを目的に、K-POP式の過酷なサバイバル合宿を導入。2017年から5年の時を経て誕生した。常識にとらわれない規格外なスタイルの音楽やパフォーマンスを通じて、世界中の様々な境遇の人たちにパワーを与える、それがXGの目指す姿だ。メンバーは、JURIN、CHISA、HINATA、HARVEY、JURIA、MAYA、COCONAの7名。全員が日本国籍だが、オーディションには韓国、ベトナム、タイなどさまざまな国籍を持つ志願者が集った。デビュー後も全編英詞や欧米トレンドのサウンドを軸とした音楽活動、韓国における音楽番組への出演など、世界をフィールドに活動している。

XGが従来のK-POPアイドルグループやガールズグループと異なる点は、固定概念を良い意味で壊すような唯一無二の世界観と独自性、カルチャー踏襲への姿勢にある。それは音楽性だけでなく、衣装やヘアメイク、映像やコンセプトメイキングにおいても一貫して言えることだ。5月30日から6月8日にかけて、最新曲「WOKE UP」の活動で韓国の音楽番組に連日出演した際にも、メンバーの魅力を際立たせる個性溢れるメイクや、毎回異なるインパクトを残す衣装、時にパンクバンドを彷彿とさせる奇抜なヘアスタイルが話題となった。CHISAは2024年4月に『VOGUE SINGAPORE』がリリースしたインタビューで、「毎回新しいテーマに合わせてスタイルを変えている。それは私たちの美学やアイデンティティの大きな一部であり、いつも少し過激にして境界を広げたいと考えている」(※1)とコメントしている。

XGのデビュー曲「Tippy Toes」のMVは公開約2週間で1000万回再生を突破、日本やアメリカをはじめ7カ国のiTunesチャートでトップ10入りを果たす好スタートを切ると、2023年1月リリースの3rdシングル『SHOOTING STAR』の収録曲「LEFT RIGHT」は、アメリカで最も権威のあるラジオチャートとして知られる「Mediabase Top 40 Radio Airplay Chart」に、アジアのガールズグループ初の快挙にして最長記録となる10週連続ランクインを果たした。本チャートへのランクインは日本人女性アーティスト・日本人グループとしても初の出来事であり、XGのアメリカでの人気を立証することとなった。

では、デビュー2年強でこれほどの躍進を遂げてきたXGは、世に打ち出した最新曲「WOKE UP」で何を伝えるのか。

HINATAが歌う特徴的なリフレインの〈Woke up lookin’ like this/So don’t get under my skin〉というフレーズを曲の持つ意思に沿って解釈すると、「私はありのままこんな感じ。だから私の気に触れないで」といったニュアンスになるだろうか。全てにおいて異色の存在感を放ちながらも、「生まれた(目覚めた)時からこの見た目」とでも言うようにXGのアイデンティティを再び提示しているようにも思える。一方、5月16日に公開された同曲のMVティザーでは、COCONAが自らバリカンを手に頭を丸刈りにする様子が映し出され、SNSで話題となった。こういった衝撃的な姿を音楽的にも攻めた「WOKE UP」のリリースタイミングで披露したのも、XGの独自性を可視化する意味で非常に大きな意味を持つこととなったのではないだろうか。

実際、XGのHIPHOP/RAPカルチャーへの向き合い方は非常にアンダーグラウンドな側面を持つ。普段からラップパートを担うことが多いJURIN、HARVEY、MAYA、COCONAの卓越したフロウは、デビュー前から公式YouTubeで更新され続けているラップカバーコンテンツ「MIXTAPE」、中でもビートジャックを主とする「XG TAPE」シリーズで確認できるため一聴の価値ありだ。「WOKE UP」では普段ボーカルを主軸とするCHISA、HINATA、JURIAも含む7人でマイクリレーを行っており、全員がMCとしての高次元なスキルを持つXGのポテンシャルを大衆に知らせるきっかけにもなっている。

活動3年目を迎え、世界を驚かせ続けるXGが視線の先に捉えるのは、『Coachella Valley Music and Arts Festival』や『Super Bowl』のハーフタイムショーといったアメリカの大きな舞台に立つこと、そしてワールドツアーだろう。たくさんの夢を持つ彼女たちが成功のために一番大事にしたいのは、“過程”だという。華々しい功績がゴールではなく、あくまで世界中のたくさんの人々にXGの音楽を通して夢や希望、勇気を与えることが、彼女たちの最大の目標だ。メンバーが自分たちを「宇宙人」と称するのも、国や人種を超越して影響を及ぼす存在になるという潜在意識の表れなのかもしれない。一方、プロデューサーのJAKOPS(SIMON)はXGと成し遂げたいことについて、彼女たちが『Super Bowl』の舞台に立つことはもちろん、「健康で幸せでありながらカリスマ溢れるアジア人アーティストグループとして、その名を広く知らしめ、世界中の人々に音楽でインスピレーションとエネルギーを届けられるガールズグループ、7人組のXtraordinary Girlsになること」だと語っている(※2)。

XGは現在、5月から『XG 1st WORLD TOUR “The first HOWL”』を開催中だ。5月18・19日に大阪城ホール、5月25・26日にKアリーナ横浜で行われた日本公演は大盛況を呈し、7月11日の韓国公演を皮切りに、台湾、シンガポール、フィリピン、タイ、マレーシアといったアジア諸国を、さらに10月からは北米8都市、11月からは欧州7都市をまわることも発表された。

夢の1つであったワールドツアーをまさに叶えている最中も、彼女たちは常にステレオタイプや境界を打破し続ける。7つの魂を持った“狼”たちが台風の眼となり巻き起こす強大なムーブメントは、今後世界にどう影響を与えていくのだろうか。「ずっかぞ(ずっと家族)」の合言葉のように、血よりも濃い絆と愛で結ばれた7人が時代を動かした時、その歴史的瞬間の証人になるのはあなたかもしれない。

※1:https://vogue.sg/xg-woke-up-single/
※2:https://youtu.be/EN_nxxrTu8Y?si=arlTa5X_68ubranH&t=3747

※記事初出時、本文に誤りがありました。以下訂正の上、お詫び申し上げます。(2024年6月14日10:10、リアルサウンド編集部)
誤:CHISAは20224年4月に『VOGUE SINGAPORE』がリリースしたインタビュー
正:CHISAは2024年4月に『VOGUE SINGAPORE』がリリースしたインタビュー

(文=風間珠妃)

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