「ユーチューバーを名乗る覆面の男たちに…」強盗殺人裁判で被告の男は無罪主張 検察側は供述の矛盾を指摘【大分発】

2020年、大分県宇佐市の住宅で親子2人を殺害し現金を奪ったとして強盗殺人などの罪に問われている男の裁判員裁判。法廷で男は一貫して無実を訴えている。5月20日から始まった裁判を振り返る。

事件発生は2020年2月

この裁判は2020年2月、宇佐市安心院町の住宅に侵入し、住人の親子2人を殺害した上、現金を奪ったとして、大分市の会社員・佐藤翔一被告39歳が強盗殺人などの罪に問われているもの。

起訴状などによると、佐藤被告は農業の山名高子さん(79)と長男で郵便配達員の博之さん(51)を包丁やはさみなどで何度も突き刺すなどして殺害し、現金約8万8000円を奪ったとされている。

「僕は犯人ではありません」

事件発生から約1年8か月後に佐藤被告は逮捕され、2024年5月20日に裁判員裁判が始まった。大分地裁によると、公判前整理手続きが2年以上かけて行われたケースは初めてだという。初公判の中で佐藤被告は「全て僕はやっていません。僕は犯人ではありません」と起訴内容を全面的に否認し、無罪を主張した。

検察側「借金返済のために犯行を考えた」

検察側は冒頭陳述で「被告は借金をしていて、返済のために犯行を考えた」などと動機を説明。その上で、事件当日に佐藤被告が運転していた車のトランクから被害者のDNA型と完全に一致する血痕が検出されたことや、自ら警察に嘘の電話をかけアリバイ工作などを行ったと指摘。その電話は「プロレスマスクをつけた男に車を貸した」という内容だったという。

一方、弁護側は「被告は事件の2日前に覆面の男たちから動画撮影への協力を依頼された。男たちから指示を受けて行動し、真犯人に陥れられた」などと主張した。

防犯カメラには被告が雑巾や洗剤などを買う様子が

5月24日の裁判では検察側が事件後の防犯カメラの画像を公開。
画像には佐藤被告が事件翌日に大分市内の店で雑巾などを購入し、その次の日には別府市内の店で洗剤などを買う様子が映っていた。
検察側は事件後に佐藤被告が証拠隠滅を行ったと指摘している。

被告「ユーチューバーを名乗るプロレスマスクの男たちと合流」

6月10日から12日の3日間は被告人質問が行われた。
弁護側の質問の中で、佐藤被告は事件当日、「ユーチューバー」を名乗るプロレスマスクの男たちと合流し、このうち1人を「車に乗せて現場近くに向かった」と説明。
その後、男たちから血の付いた服などが入った袋をトランクに積みこまれ、「処分してほしい」と頼まれ、コインランドリーで洗って捨てたと話した。

検察側は供述の矛盾点を指摘

しかし、これまで佐藤被告はプロレスマスクの男に「車を貸した」と供述していた。被告人質問の中で「車に乗せて現場近くに向かった」と説明したことに対し、検察側は矛盾があると指摘した。これに対し、佐藤被告は供述が変わっていることを認めた上で、「現場付近にいたと言ったら、疑われると思った」と弁解し、「男たちは大量殺人犯でその濡れ衣を着せられると思った」などと話した。

また、遺族から心境を聞かれた際には「本当の犯人を目の前にしていない事が不幸で残酷な事実だと思っている。証拠の1つ1つに目をつむらず、ちゃんと見てほしい」と述べ、佐藤被告は改めて無実を訴えた。

大分地裁で開かれた裁判員裁判の中で過去最多13回の公判期日が設定された今回の裁判。
6月17日に結審し、判決は7月2日に言い渡される。

(テレビ大分)

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