インドのIT人材、9割が「年収300万円前後でも日本で働きたい」と回答。「給与」を上回る最多の理由は?【インドの工科系大生へのアンケート結果】

日本での就職を希望するインド人学生(ベンガルール)

インドは世界最多の人口を誇り、IT人材の成長が著しい国でもある。日本のIT企業にとっても、優秀な人材が多いインド人ITエンジニアの存在は欠かせない。他先進国と比べれば給与水準が高くない日本だが、彼らにとって、日本は働き先としてどのように映っているのだろうか。インド人学生へのアンケート結果をZenkenの田中志穂・ダイバーシティ事業部・部長が解説する。

日本で働きたい理由

海外人材の紹介などを手掛けるZenkenが3月に実施したインドの工科系大学の学生を対象としたアンケート調査によると、「年収280~350万円程度でも日本で働く」との回答が9割を占めた。

日本で働きたい理由は「スキルアップ」との答えが最多で、「給与」との回答を大幅に上回った。インドの工科系大学の学生たちが、平均的な給与でも技術力のある日本企業で働きたいと考えていることが浮き彫りになった。

インドのシリコンバレー「ベンガルール」などで調査

調査はZenkenがインド・ベンガルールなどにある19の工科系大学で海外就職を希望する3年生と4年生を対象に3月23~27日に実施し、1202件の回答を得た。ベンガルールはIT産業の集積地として知られ、インドの「シリコンバレー」とも言われる。

アンケートで「日本で働きたいか」と聞いたところ、「はい」との回答が91.8%を占めた。日本で働きたいと答えた学生に「なぜインドではなく、日本で働きたいのか」と質問すると、最も多かったのは「スキルアップ」で32.6%を占めた。海外市場でも活躍している日本企業の技術力の高さにはインドでも定評があり、多くの学生が日本で働きたいと考える背景となっている。

日本は米国など他の先進国と比べれば給与水準が高くないことから「給料が良い(仕送りができる)」は16.9%にとどまった。歴史的な円安・ドル高もこの傾向に拍車をかけている。「海外で働きたい」という答えも16.2%あった。保護主義の色彩が強いインドでは、国内の製造業が育ちにくく、就職先が限られるためだ。「日本が好き」との回答も27.7%に達した。

インド人学生の希望年収は意外に低く

世界で多く活躍しているインド人の理系学生について「希望する年収が高いのではないか」と考える向きも多いだろう。実際、欧米諸国で大企業のトップなどとして働くインド人エンジニアは多い。しかし、アンケートで「日本の新卒の平均的な年収(280~350万円)でも日本で働きたいか」と聞いたところ、「はい」との回答が89.4%を占めた。「いいえ」はわずか10.6%だった。

インド国内ですでに内定を得ている人に対して想定年収額を聞いたところ、最も多かったのは「55万~90万円」だった。急激な経済成長を続けるインドだが、なお日本との収入格差は大きい。このため、日本企業はインドの有能な人材を獲得しやすい面がある。

一方で「いいえ」を選択した人に対して、「どのくらいの年収であれば日本で働きたいか」と聞いたところ、最も多かったのは「543万~724万円」で21.9%だった。次に多かったのが「452万~543万円」で21.1%だった。「年収に関係なく、日本での就職に興味がない」という人も21.9%いた。

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