【e-bike試乗レビュー】パナソニックの子供向けクロスバイクe-bike、大人と同じような爽快感で走れそう!

by 河原塚 英信

左が大人向けの「XEALT S3F」、右が子供向けの「XEALT SJF」。価格は順に195,000円、172,000円

パナソニック サイクルテックの「XEALT(ゼオルト)」ブランドから、親子で無理なくサイクリングを楽しめそうなe-bike(電動アシスト自転車)が、6月上旬に発売される。

大人向けのクロスバイクe-bikeは珍しくないが、それがそのまま小さくなった子供向けは珍しい。筆者の子供は小学校の4年生で、身長は同年代では少し高めの143cm前後。今回発表された、子供向けの「XEALT SJF(ゼオルト エスジェイエフ)」の適応身長が135~150cmのため、ちょうど適応範囲内だ。

発売に先立ち、試乗の機会を得たので、子供と一緒にサイクリングへ出かけることを想定して、大人向けと子供向けの2台を、お台場周辺で乗ってみた。

お台場を試乗してきた

子供向けの「XEALT SJF」も、大人向けの「XEALT S3F」も、フレームの大きさが異なるだけで、基本的な性能は同じ。どちらもモーターには、2軸の「カルパワードライブユニット」を採用し、容量302.4Wh(25.2V/12.0Ah)のバッテリーを搭載する。

ライトやベルも装備しているので、購入後すぐに乗り始められる
2軸モーターの「カルパワードライブユニット」を採用
容量302.4Wh(25.2V/12.0Ah)のバッテリーを搭載

大きな違いは、大人向けのアシストモードは「HIGH/AUTO/ECO」から選択できるのに対して、子供向けではAUTOモードのみという点。AUTOモードのみにしたのは、子供の場合は、いろいろと切り替えられると気が散って、走行に集中できないためだという。

大人向けの「XEALT S3F」のみ、左手側の操作部でアシストモードを「HIGH/AUTO/ECO」から選択できるほか、距離やケイデンスなどの表示に切り替えられる

まずは大人向けの「XEALT S3F」に乗ってみた。ペダルを踏み込む力に過度に反応することなく、スムーズな走り出し。そのまま踏み込む力を加えて行くと、汗をかくことなく時速24kmまでスピードがスゥ?っと上げられる。停止した状態でペダルを踏み込むと、不自然なほどグンッ! と体が前に持っていかれるようにスタートする、我が家の子乗せの電動アシスト自転車とは大違いの快適さだ。

走り始めてしばらくは、高低差がなく舗装されている道。こうした環境で、時速10km以上のスピードまで上がっていれば、時々ペダルを漕ぐだけで、ほとんど漕がなくても惰性で進んでくれる。

しばらくすると夢の大橋が前を立ちはだかる。東京の湾岸エリアは、一見すると平地がずっと続いているようだが、実はこうした橋が多い。当然アップダウンがあるので、普段は一般的な小径のロードバイクに乗っている筆者は、汗をかくことになる。だが今回は、自転車の本領を試す場所だ。

橋の上り坂を走ってみると……やや大げさに感じるかもしれないが、このくらいの勾配を時速10?20kmくらいで走る程度であれば、平地を走っているときと同じくらいにラク。むしろもっと速度を上げて走りたくなるし、もっと勾配が続いたほうが楽しいのになと思ってしまうほど。

子供が坂道も楽しく走れるe-bike

ここで子供向けの「XEALT SJF」に乗り換えてみた。大人が? と思うかもしれないが、筆者の身長は160cm台の後半と小柄のため、筆者本人はそれほど違和感なく乗れる。もう少しサドルを高く固定できれば、普段使いしても良いような気もする。

右が大人向けで、左が子供向けの「XEALT SJF」
子供向けの「XEALT SJF」に乗り換えた。フレームカラーはマットブラウニッシュブラック

ペダルを踏み込んでみると、加速していく感覚は、大人向けのそれと同じだ。先述のとおり搭載するドライブユニットは同じで、大人向けと同じ「XEALTチューニング」なので走行感も変わらない。

また、大人向けも子供向けも、変速ギアが外装7段と同じなのも、地味な点だがうれしい(子供向けは操作性の良いグリップ回転式)。うちの息子だけかもしれないが、緩い勾配でも、ぜぇぜぇ苦しそうに走っていることがある。たいていは、高速走行用の重い段数に設定していたりする。もし今回の「XEALT SJF」と「XEALT S3F」を親子で乗っていれば、「ここは何段くらいにしたほうが良い」など、子供にアドバイスしやすいはずだ。

両モデルとも外装と内装の差はあるが、変速ギアは外装7段
切り替え用のシフトレバー。子供向けはライドに集中するためにシンプルな操作方法を選択したという

一点気になったのは、大人向けと比較するとフレームが小さく、前輪と後輪の距離……ホイールベースが狭いため、ややハンドリングが敏感に感じたこと。ただしこれも、e-bikeでなくても同じだ。

子供も楽しく坂道を走れそう

一般的に子供と大人の違いは、身長や体重のほかに、脚力と体力が異なること、それに自身のパワーを制御しにくいところだろう。はじめは元気に飛ばして走るが、急にバッテリーが切れたように元気がなくなったりする。そのため1~5kmくらいの平地をサイクリングするのであれば、電動アシストである必要はないかもしれないが、それ以上の距離や、アップダウンのある道のりだと、親も本人もかなり不安になる。

そうした時に「XEALT SJF」があれば、長距離でもアップダウンがあっても、子供がなかなか親のペースについていけなかったり、途中で気持ちが萎えてしまうリスクも少なく、安心して子供とサイクリングに出かけられそうだと感じた。そうしてラクに長距離や坂道を走り切れれば、自転車の楽しさを感じやすいはず。

子供とサイクリングへ行きたくなった!

今回の試乗会では、約8kmの道のりを走ったという。

そのほとんどを大人向けの「XEALT S3F」に乗っていたが、ストレスをまったく感じない加速の仕方なうえに、適切なアシストで坂道でも疲れを感じなかった。試乗会が終わった後に、そこから約10kmの自宅に乗って帰りたいとすら思った。

筆者は以前、片道10km弱の道のりを自転車通勤していたが、e-bikeであれば……今回の「XEALT S3F」であれば……電車通勤よりもラクなのは当然として、筆者の自転車よりも通勤がラクだっただろうなぁと感じた。「XEALT S3F」には……子供向けの「XEALT SJF」にもだが、前後輪にしっかりとしたフェンダー(泥除け)が装着されているため、雨の後で路面が濡れていても走りやすいだろう。また、チェーンカバーが付いているので、ズボンの裾がチェーンに巻き込まれたり汚すリスクも限りなく少ないはずだ。そうした点で、サイクリングだけでなく、通勤用としてもかなりおすすめしたモデルと言える。

通勤用を想定した際に、チェーンカバーがあるのはうれしい

子供向けの「XEALT SJF」については、小学校4年生で既に身長が143cm前後ある息子に「買ってあげる」となると、価格面でお父さんとしてはキツイなと正直感じる。適応身長がいちおう150cmまでとなっているので、乗れてあと1年くらいと考えてしまうからだ。

ただし、例えば山間の観光地で、この自転車がレンタサイクルとして貸し出されていたら、借りて息子と一緒にサイクリングを楽しみたいと思った。

初めて自転車に乗れるようになった時に、これでどこでも行けると思ったように、この子供向けの「XEALT SJF」を息子に使わせたら、どれだけキツイ道のりでも、息子と一緒に楽しめるだろう。そんな、ワクワク感を抱いたe-bikeだった。

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