「企業の求める職業能力・人材に関するニーズ調査結果」から見る求められる人材とは?

企業の求める職業能力・人材に関するニーズ調査結果とは?

2024年3月27日に独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構は「令和5年度 企業の求める職業能力・人材に関するニーズ調査結果」を発表しました。
この調査は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の各職業開発施設が、2023年4月~9月までの期間に全国のさまざまな分野・業種の企業を対象に、企業の職業能力・人材ニーズを調査したものです。
多くの業界で人材不足が叫ばれる昨今、企業では「具体的にどのような人材が求められているのか」をこの調査結果を元に読み解いていきます。

多くの企業で課題となっている「人材不足」

そもそも、どれくらいの企業が人材不足を課題としているのでしょうか?
全分野の企業を対象にした「貴社の経営戦略上、以下の項目についてどの程度重要と思われますか」という問いでは、「人材育成(89.8%)」「優秀な人材確保(87.0%)」「顧客満足度の向上(83.8%)」「技術力の強化(81.7%)」が上位でした。
この結果から、分野を問わず多くの企業が、直接的な利益となるサービスや製品の質の向上と同じくらい、「人材の確保」を重要視しているということがわかります。
また、「人材の育成」が最も重要視されているという点から、確保した人材を指導するマネジメントスキルを持つ人材についても社内、社外問わず求められていると推測されます。

事業主が重要視するスキルとは?

人材として特に重視する事項

「中途採用に当たって、人材として特に重視する事項は何ですか」という問いでは「人柄(77.7%)」、「職歴、キャリア、実務経験(71.0%)」が上位でした。
反対に「資格(20.6%)」「学歴(5.1%)」は2割以下と職歴や実務経験はもちろんのこと、技術や資格よりも人柄が重視されていることから、業務への姿勢やコミュニケーション能力の高い人材などが求められていると推測されます。

デジタル人材の採用

さらに「デジタル人材の採用予定はどのようにお考えですか」という問いには、新卒では「現在、採用を考えている(19.3%)」「現在考えていないが、今後は必要になる(41.7%)」、中途では「現在、採用を考えている(22.5%)」、「現在考えていないが、今後は必要になる(44.4%)」があがりました。
昨今の状況から企業のDX化が求められていることは意識しつつも、実際の採用には消極的な企業が多いようにうかがえます。

まとめ

今回の調査結果から、分野や業種を問わず多くの企業で人材不足が課題となっており、特に「職歴、キャリア、実務経験」と「人柄」を重視していることがわかりました。
また、同じく「人材の育成」についても重要視している企業が多いという結果から、「人材の育成ができるマネジメントスキル」を持った人材も必要とされると推測されます。
反対に、デジタル人材についてはDX化の必要性を意識はしているものの、採用活動には踏み切っていない企業が多く、この点に関しては企業側の今後の課題といえるでしょう。

他にも企業の今後の課題として、確保、育成した従業員の定着化が挙げられます。
せっかく採用や育成に力を入れても、定着しなければ根本的な改善とはいえず、むしろ無駄なコストが発生してしまう可能性もあります。
このまま人材不足が悪化すれば、今いる従業員にさらなる負担を強いることになり、離職率の増加につながる可能性もあります。
前述のとおり、今はどの企業も人材が不足しているため、従業員の転職は比較的難しくない状況です。
特に優秀な人材の流出を防ぐためにも、企業側は職場環境の改善や従業員の満足度の向上など、長期的、包括的な改善策が今後求められていくのではないでしょうか。

<参考>
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「令和5年度 企業の求める職業能力・人材に関するニーズ調査結果について」

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