偕楽園 ホタル再生へ 茨城県、新たな誘客策に

県とホタルネットワークmitoが整備している偕楽園拡張部の「蛍谷」=水戸市千波町

日本三名園に数えられる偕楽園(茨城県水戸市)で、県がホタルの生息域の再生に乗り出した。民間の環境団体と連携し、月池周辺の湿地帯に水路や池、あぜなどを整備。成虫や卵を放つことで、ホタルが飛び交う環境づくりを進める。夏の新たな魅力として、偕楽園周辺の誘客につなげていく方針だ。

整備を進めているのは、偕楽園拡張部の月池南東部に位置する「蛍谷」と呼ばれる湿地帯。2~5月にゲンジボタルの生息や産卵に必要な水路、あぜ、岩ゴケのほか、ヘイケボタルが生息する池などの環境を段階的に整備した。

月池南側に隣接する湿地帯でも、ヘイケボタルが生息できる環境にするため、土入れや水性植物の植栽などを行った。周辺の園路灯や樹木の電飾も配慮し、6月から7月上旬にかけて、消灯や減灯も実施する。

整備は、環境保全活動を手がける逆川こどもエコクラブや水戸市などで構成する環境団体「ホタルネットワークmito」と連携。同団体の川島省二事務局長は「環境を維持できれば、来年度には50~100匹ほどのホタルが定着し、舞うのでは」と期待を寄せる。

同団体が6月、近くの逆川で増やしたゲンジボタルの成虫や卵を県に提供。大井川和彦知事が5日、蛍谷を訪れ、水路などへ放虫した。6月下旬にはヘイケボタルの成虫を池やあぜなどに放つ予定だ。

県や同団体によると、蛍谷で約40年前にはホタルの生息が確認されていた。近年は雑草が生い茂るなど管理が行き届かず、「見かけるケースはほぼなかった」(同団体)。ホタルが生息するには卵を産み付ける岩ゴケや、さなぎがふ化するためのあぜ、餌となるタニシ、カワニナの生息が条件という。

偕楽園の誘客は、観梅シーズンを迎える2~3月の「水戸の梅まつり」期間が中心で、夏季などの誘客策が課題となっている。ホタルの生息環境を新たな魅力として整備し、インバウンド(訪日客)も含めた誘客促進を目指す。将来的には、ホタル観賞や環境学習の場としても活用していきたい考えだ。

大井川知事は「偕楽園の魅力向上策の一つとして、ホタルの再生は大きな意義がある。もう一度、この場所にホタルが舞う環境を復活させたい」と、意気込みを語った。

ホタルを放つ大井川和彦知事=水戸市千波町

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