【VIDEO CARD LABORATORY】VRAM 8GBに増量されたRadeon RX 6500 XTをじっくりベンチ!ASRock「Radeon RX 6500 XT Phantom Gaming 8GB OC」で徹底テスト【新装第2回】VRAM増のメリット、新旧CPU環境でどう変わる? text by “KTU”加藤 勝明

by “KTU”加藤 勝明

2024年もすでに折り返し地点が目前となったが、ここへ来てRDNA 2世代の「Radeon RX 6500 XT(8GB)」を搭載したカードの流通が始まった。RX 6500 XTの4GB版は2022年に登場済であり、8GB版も海外市場には存在していた。単にマーケティング的事情で国内に入ってこなかったものが解禁された、という話である。

今回筆者はASRock製のファクトリーOCモデル「Radeon RX 6500 XT Phantom Gaming 8GB OC」をテストする機会に恵まれた。価格は税込3万2000円前後とアナウンスされているが、格上のスペックを備えたRX 6600が同価格帯で流通している点を考えると「現時点では」厳しい評価にならざるを得ない(RX 6600の流通在庫が遠からず消滅することをにらんでの投入だと思われるが)。さらにRTX 3050やArc A580といった“ニア3万円GPU”のライバルもいる。はたしてRX 6500 XT(8GB)はその中で戦い生き延びることができるのか? ベンチマークを交えて検証してみたい。

フルHDゲーミングが主戦場のエントリークラスGPU

まず改めてRadeon RX 6500 XT(8GB)について見てみよう。と言っても、VRAMが倍増したことを除くと、技術的な新規要素は特になく、基本設計は2022年に登場したRX 6500 XT(4GB)と同一である。詳細は発表当時のPC Watchでのレビュー記事にあるとおりだが、ざっくりまとめておこう。

  • フルHDゲーミング向けのエントリークラスGPU
  • RDNA 2世代だが6nmプロセスのモノリシックダイを採用
  • メモリバス幅64bit、PCI Express Gen4 x4接続
  • 映像出力はHDMI×1+DisplayPort×1に制限
  • ハードウェアエンコーダー(ACE)非搭載

以上のようにRX 6500 XTはコストダウンのために大胆にスペックを絞ったGPUである。2年前はフルHDかつ画質低〜中設定で動けばよい程度のスペックであったが、2024年の今ではAFMF(AMD Fluid Motion Frames)が利用でき、さらにゲーム側でもFSR 3のフレーム生成を利用したゲームもあるため、RX 6500 XTクラスのGPUでも案外使えるようになってきたのだ。そしてVRAMが4GBから8GBに増量されたことで4GB環境では動作が厳しい処理でも、8GBなら性能が激変する可能性もある。

「Radeon RX 6500 XT Phantom Gaming 8GB OC」はデュアルファン構成で全長240mmに収まっている。予想実売価格は税込み3万2000円前後と、RX 6500 XT(8GB)搭載製品の中ではやや高めの設定
カード後方はヒートシンクがむき出しになっており、ファンの風がカード裏側にも回る定番のデザインとなる
補助電源ケーブルは8ピン1系統。推奨電源容量は400Wとなっている
RX 6500 XTやRX 6400はディスプレイ出力への回路も絞ることで価格を抑えている。ディスプレイ出力がHDMIとDisplayPort各1基に絞られているのはこのためだ
カードの情報:「GPU-Z」で取得。Bus Interface欄を見ると「PCIe x4 4.0 @ x4 4.0」となっているが、これはPCI Express Gen4 x4接続のGPUが、実際にGen4 x4でリンクしていることを示している

ニア3万円GPUで勝負する

今回の検証環境は以下のとおりだ。RX 6500 XT(8GB)との比較用にRDNA 3世代では一番下のRX 7600を、RDNA 2世代ではRX 6600とRX 6500 XT(4GB)を準備。さらにRTX 3050(8GB)とArc A580を準備した。RX 7600を除けば、すべてニア3万円GPUになる。ドライバーは検証時点で最新のものを使用した。RadeonはRadeon Software 24.5.1、GeForceはGameReady 555.99、Arcは101.5534となる。また、Resizable BARやSecure Boot、メモリ整合性やHDRといった機能は一通り有効としている。

高負荷な状況ほど差が拡大する

では定番「3DMark」のスコア比較から検証を始めよう。これまでDirectX 12ベースのテストではTime Spyを使っていたが、先日のアップデートでテスト内容を刷新(CPU単体の物理演算テストを省略)したSteel Nomad Light/ Steel Nomadを使用している。今回の検証環境ではTime SpyとSteel Nomad Lightで同じようなスコアの出方になる。

3DMark:ラスタライズ系テストのスコア
3DMark:レイトレーシング系テストのスコア

Fire StrikeやFire Strike Ultra、Steel Nomad Lightの3テストにおいて、RX 6500 XTのVRAM搭載力の差はほぼ観測できない。テストによっては8GB版のほうがわずかに高いというレベルだ。しかしSteel Nomad、レイトレーシング系のPort RoyalやSpeed Wayといったより負荷の高いテストにおいては8GB版が4GB版の4〜5倍のスコアを出している。最近のPCゲームはフルHDであっても4GBで足らないような状況になりやすいため、RX 6500 XTクラスであってもVRAM 8GBの恩恵は非常に大きいと言える。

ではここで消費電力をチェックしよう。電力計測にはHWBusters「Powenetics v2」を利用した。アイドル時(3分間放置した場合の平均値)ならびに前述のSteel Nomad Lightの描画開始〜終了までの消費電力(平均値、99パーセンタイル値、最大値)を計測した。また、システム全体の消費電力とは、ATXメインパワー+EPS12V+PCI Express x16スロット+PCI Express補助電源ケーブルに流れた電力の実測値を、Total Board Powerとはシステム全体の消費電力からPCI Express x16スロット+PCI Express補助電源ケーブルに流れた電力だけに注目したものとなる。

システム全体の消費電力
Total Board Power

今回集めたビデオカードの中でもっとも消費電力が高いのがArc A580だった。消費電力という観点において、A580はアイドル時の消費電力もムダに高く(TBPを見ても明らかだ)、ワットパフォーマンス的にも今一つであることが一目瞭然。続いてRX 7600やRTX 3050、RX 6600と続くが、RX 7600は3DMarkにおけるスコアも良好であるため、性能なりの消費電力と言えるだろう。

一方このクラスのGeForce、今回はRTX 3050は消費電力のわりにスコアも今一つ。ただRTX 3050は今回のメインであるRX 6500 XTに相当するセグメントの製品であると考えると、消費電力は性能相当である、と考えることもできる。

そしてRX 6500 XTだが、システム全体の消費電力で見ると4GB>8GBだが、Total Board Powerで見ると逆に8GB>4GBとなっている。一見矛盾しているようだが、4GB版のRX 6500 XTではVRAMが少ないためよりメインメモリへのアクセス頻度が高まり、8GB版ではメインメモリへのアクセスが減った一方でGPUコアがより活発に動作した結果、と考えることができる。

Stable Diffusionでも少しは戦えるように

ゲーム検証に入る前に少しだけ生成系AIでの検証もしておこう。ここではStable Diffusion 1.5を実際に動かす「UL Procyon」の“AI Image Generation Benchmark - Stable Diffusion 1.5”を利用する。

先日公開した「GPU Round-Robin Benchmark」では上位GPUに合わせVRAM要求量の多いStable Diffusion XL(SDXL)を利用したが、今回は512×512ドットの画像を16枚(4枚×4回)出力するStable Diffusion 1.5ベースのテストを利用した。推論エンジンはRadeon勢ではONNX、GeForceはTensorRT、ArcはOpenVINOをそれぞれ利用している。スコアのほかに1枚あたりに要した平均処理時間も比較するとしよう。

UL Procyon:AI Image Generation Benchmark - Stable Diffusion 1.5のスコア。エラーで処理が完走しなかったGPUについては空欄としている
UL Procyon:AI Image Generation Benchmark - Stable Diffusion 1.5における、画像1枚あたりの平均処理時間

この検証ではVRAMの要求量が8GB以上となっているが、RX 6600のように完走しなかったGPUも出現した。同じVRAM 8GBでもRX 6500 XT(8GB)はなんとか完走できているが、完走したRX 7600/RTX 3050/Arc A580に比べると画像1枚出力するにもかなりの時間がかかっている。RDNA 2世代のRadeonにはまだGPU内にAIに特化した演算ユニット(RDNA 3におけるAI Matrix Accelerator)が存在しないため、生成系AIを攻めるには向いていないのだ。

RX 6500 XT(4GB)に比べると生成スピードは6倍以上に改善していると言えるが、生成系AIも試したいと考えているなら、素直にCUDAやTensorRTの使えるRTX 3050、VRAMを考慮に入れればRTX 3060 12GBを選ぶのがよりスマートなチョイスになるだろう。

8GBならゲームも快適になる?

では実ゲームでの検証を始めよう。RX 6500 XTという製品の性格を考慮し、今回の検証は解像度フルHD(1,920×1,080ドット)1本に絞っている。画質は最高設定相当だが、RX 6500 XTクラスでレイトレーシングは現実的な選択とは言えないため、レイトレーシングは除外している。

まずは先日ようやく不具合の修正版(v1.1)がリリースされた「ファイナルファンタジーXIV: 黄金の遺産」ベンチマークで試してみよう。画質は“最高品質”とし、アップスケーラーはFSR 2、レンダースケールは100%に固定した。なおDLSSは動的に解像度が変わるオプションと連動してしまうため使用していない。テストはベンチマークを1巡させ、最後にレポートで表示されるスコアとフレームレートをそれぞれ比較する。

ファイナルファンタジーXIV: 黄金の遺産ベンチマーク:1,920×1,080ドット時のスコア
ファイナルファンタジーXIV: 黄金の遺産ベンチマーク:1,920×1,080ドット時のフレームレート

スコアトップはRX 7600、続いてA580と続きRX 6500 XTはワースト1&2という結果が出た。RX 7600やRX 6600は設計そのものがRX 6500 XTより格上だから当たり前だし、FF14はもともとGeForce有利な設計だからRTX 3050が有利なのも当然だ。A580が3番手だったこと、フレームレートもそう悪くないことは意外な収穫だった。RX 6500 XTに関しては8GBのほうがわずかにスコアもフレームレートも高いが、これは今回使用した8GB版と4GB版のカードのOC設定の違い(クロックは8GB版のほうがわずかに高い)に起因すると考えられる。

続いてeスポーツ系FPSから「VALORANT」および「オーバーウォッチ 2」で検証する。VALORANTは最高画質(MSAA x4+異方性16x)に設定。マップ“ロータス”内の一定のコースを移動した。一方オーバーウォッチ 2は画質“エピック”+アップスケーラー(DLSS/ FSR)オフ+レンダースケール100%に設定し、マップ“Eichenwalde”におけるBotマッチを観戦した。いずれもフレームレートは「CapFrameX」で計測している。

VALORANT:1,920×1,080ドット時のフレームレート
オーバーウォッチ 2:1,920×1,080ドット時のフレームレート

フレームレートの傾向は3DMarkやFF14の強い順とほぼ一致している。ここでもRX 6500 XTはVRAM搭載量に関係なくニア3万円GPUの中では最下位で終わっている。安いもので2万9000円、高いものだと3万2000円程度という現時点における価格設定では、RX 6600のほうがより快適に動作するし、A580も価格のわりには結構使える。RX 6600の代替品としてはRX 6500 XTはVRAMを8GBにしてもかなり弱い。VALORANTでは十分なフレームレートが出てくれるが、オーバーウォッチ 2ではもっと画質を下げないとプレイには向かない。

では描画の重いゲームでも検証してみよう。まずは「Ghost of Tsushima DIRECTOR'S CUT」で試してみる。画質は“非常に高い”を選択し、FSR 3“バランス”およびフレーム生成機能を有効化した。こうすることで今回使用したどのGPUでもフレーム生成機能が利用可能になる。マップ“日吉の湯”における一定のコースを移動した際のフレームレートをCapFrameXで計測した。

Ghost of Tsushima DIRECTOR'S CUT:1,920×1,080ドット時のフレームレート

まずRX 6500 XT(8GB)のフレームレートは、4GB版に比べ約2倍に増加している点に注目。3DMarkのSteel Nomadのように、VRAM使用量が多いゲームの場合は8GBであるメリットは非常に大きい。FSR 3のフレーム生成の助けを借りれば、RX 6500 XTクラスでもフルHD&最高画質で十分遊べる。VALORANTやオーバーウォッチ 2ではより高いフレームレートを出していたRTX 3050とRX 6500 XT(8GB)がほぼ並んでいる点にも注目だ。A580のフレームレートが出ない理由はArcドライバーに特有の“ゲームを選ぶ”という点にあると思われる。

最低フレームレート(正確には1パーセンタイル点より下の平均)にはさらにおもしろい結果が示されている。RX 7600は平均フレームレートが非常に高い割に平均と最低フレームレートの落差が非常に大きい。その一方RX 6600では、平均フレームレートはそこそこ高い程度だが最低フレームレートとの落差がわずか。どちらもPCI Express Gen4 x8接続、メモリバスは128bit幅構成、さらにInfinity Cacheの量も32MBと足回りに関しては同等となっており、RX 7600に明確な弱点はないはずだ。だが今回の検証においてはRX 7600に対してゲーム側の処理にまだ何か詰め切れていない部分があるのかもしれない。

FSR 3に対応した「Starfield」でも検証しておこう。画質“ウルトラ”をベースに、FSR 3のフレーム生成を有効とし、レンダースケールは58%(“バランス”相当)とした。また異方性フィルタリングも16xに設定。都市マップ“ニューアトランティス”のMAST地区を移動する際のフレームレートを計測した。

Starfield:1,920×1,080ドット時のフレームレート

Ghost of TsushimaではRX 6500 XTはかなり頑張っていたがStarfieldではフレームレートの伸びは今一つ。だがRX 6500 XTはFSR 3のフレーム生成がなければ平均30fps前後でしか動かないことを考えると、FSR 3の存在は実に偉大だ。肝心のVRAM容量の差だが、RX 6500 XT(4GB)に比べると8GB版のほうが最低フレームレートの落ち込みが小さく、よりカクつきにくくなったと言える。

最後に「サイバーパンク2077」で試す。画質はRX 6500 XTのスペックを考慮しレイトレーシングのない“ウルトラ”設定とした。アップスケーラーはFSR 2/ DLSS/ XeSSとし、それぞれ“バランス”設定を選択。Radeon勢に関してはAFMF(AMD Fluid Motion Frames)を有効化してフレーム生成を追加している。ゲーム内ベンチマーク再生中のフレームレートをCapFrameXもしくはRadeon Software(AFMF利用時のみ)で計測した。

サイバーパンク2077:1,920×1,080ドット時のフレームレート

RX 6500 XT(4GB)でもレイトレーシングさえ入れなければなんとか動く程度だったものが、VRAMが8GBになったことで一気に描画が軽くなる。さらにAFMFを利用することにより平均100fps程度出せるようになるのは大きい。RX 6500 XT(4GB)でもAFMFは効くが、VRAM使用量の大きいこのゲームでは焼け石に水だ。RTX 3050も頑張ってはいるものの、AFMFのようなフレーム生成機能がないため今一つパンチに欠ける。ただA580に関しては新興GPUのわりにはかなり頑張っていると言えるだろう。

これまでの検証結果をまとめると、RX 6500 XT(8GB)はVRAM使用量の多い状況(Ghost of Tsushimaやサイバーパンク2077等)ではRX 6500 XT(4GB)を大きく上回る性能を出せ、FSR 3やAFMFの利用で重い設定でもわりと遊べるパフォーマンスを得た。しかしながらRX 6600やRX 7600といった格上Radeon(“500番台”Radeonに対する“600番台”Radeon)のほうが常に性能で上回っているため、特に価格帯が被っているRX 6600が流通している現時点では費用対効果では今一つ。しかし時間が経過すればRX 6600の流通在庫がさすがに消滅していると考えられるため、RX 6500 XT(8GB)が本来の輝きを得るのはもう少し先のことになるのではないだろうか。

もっと古めのCPU環境ではどうなる?

さて、ここまでの検証はCPUにPCゲーミングでは最強クラスのRyzen 7 7800X3Dを使用したときのものだ。だが今RX 6500 XTクラスのGPUをあえて購入しようという人が、Ryzen 7 7800X3Dを選ぶケースは少ないだろう。むしろ旧世代CPUを使っているユーザーが予算3万円前後でビデオカードを新しくしたいとか、比較的安いCPUと組み合わせて組みたい、というシチュエーションにおいてRX 6500 XTを選ぶ方が多いのではないか。

そこで検証パート2では、Socket AM4向けの新旧CPUを使って同様の検証を試みる。ただし検証内容は実ゲーム系のみに限定している。検証環境は以下のとおりだ。CPUは現在2万3000円程度で流通している「Ryzen 7 5700X」のほか、旧世代代表として「Ryzen 7 2700X」を用意した。Ryzen 7 5700XはPCI Express Gen4対応かつResizable BARが有効化できるが、Ryzen 7 2700XはPCI Express Gen3かつResizable BAR非対応である。もともとPCI Express Gen4 x4接続のRX 6500 XTにとって、PCI Express Gen3 x4接続はそうとうなハンデになりそうだ。

Ryzen 7 2700X環境にRX 6500 XT(8GB)を装着するとPCI Express Gen3 x4でリンクするだけでなくResizable BARも非対応となる

旧世代CPU環境で気兼ねなく!?

ではCPUを旧世代にした場合のゲーム検証を実施しよう。検証時の設定や計測手法については前述のものと同一である。まずはFF14のベンチマークから始める。

※グラフ詳細はクリックしてご覧ください

ファイナルファンタジーXIV: 黄金の遺産ベンチマーク:Ryzen 7 5700X環境、1,920×1,080ドット時のスコア
ファイナルファンタジーXIV: 黄金の遺産ベンチマーク:Ryzen 7 2700X環境、1,920×1,080ドット時のスコア

Zen+世代のRyzen 7 2700XとZen 3世代のRyzen 7 5700Xでは同じ8コアでもCPUそのもののパワーが段違い。これはPCゲームグラフィックスにおけるパフォーマンスにも強く影響する。FF14ベンチでは上位GPUほどCPUの影響を強く受けている。RX 6500 XTもRyzen 7 2700X環境ではスコアを落としているが、平均フレームレートで見ると57fps→56〜55fpsに落ちただけで、ほとんど変わっていない(RX 7600の場合114fps→98fps)。RTX 3050やA580もCPUの影響を受けているが、特にA580の下がり幅が大きいのはResizable BAR非対応環境だからだと考えられる(Arc AシリーズはResizable BAR対応を推奨)。

続いてはVALORANT、オーバーウォッチ 2、Ghost of Tsushima DIRECTOR'S CUT、Starfield、サイバーパンク2077による検証をざっと見てみよう。

VALORANT:Ryzen 7 5700X環境、1,920×1,080ドット時のスコア
VALORANT:Ryzen 7 2700X環境、1,920×1,080ドット時のスコア
オーバーウォッチ 2:Ryzen 7 5700X環境、1,920×1,080ドット時のスコア
オーバーウォッチ 2:Ryzen 7 2700X環境、1,920×1,080ドット時のスコア
Ghost of Tsushima DIRECTOR'S CUT:Ryzen 7 5700X環境、1,920×1,080ドット時のスコア
Ghost of Tsushima DIRECTOR'S CUT:Ryzen 7 2700X環境、1,920×1,080ドット時のスコア
Starfield:Ryzen 7 5700X環境、1,920×1,080ドット時のスコア
Starfield:Ryzen 7 2700X環境、1,920×1,080ドット時のスコア
サイバーパンク2077:Ryzen 7 5700X環境、1,920×1,080ドット時のスコア
サイバーパンク2077:Ryzen 7 2700X環境、1,920×1,080ドット時のスコア

ここまでの結果から、3D V-CacheのないRyzen 7 5700Xでもフレームレートの出方は7800X3Dとそう変わらない。唯一差らしい差が出たのがVALORANTだが、RX 6500 XTのようにもともとのパフォーマンス上限が低いGPUでは5700X環境でもほとんど性能は変わらない。Ryzen 7 2700X環境ではCPU性能がフレームレートに非常に強く影響しているが、RX 6500 XTではやや下がる程度であり、RX 7600やRX 6600ほどには低下しないケースが多い。

このことをポジティブにとらえるのであれば、RX 6500 XTは旧世代CPU環境においても性能の低下をあまり気にせずに使えるため、アップグレード用には好適であると言える。言い換えるならRyzen 7 2700Xのような設計の旧いCPUを使っているのにRX 7600より上のGPUを狙っているならそれは大いなる予算のムダであり、CPU強化も考えるべき、と言える。

そのほかの注目ポイントとしては、ここでもGhost of TsushimaとRX 6600の組み合わせにおいて最低フレームレートと平均フレームレートの差が小さいことが確認できた。また、A580に関してはRyzen 7 2700Xで著しいフレームレートの落ち込みが観測されたが、これはCPU性能の影響に加え、Resizable BAR非対応という点が大きな律速になっていると考えられる。

今後の価格推移しだいでは“アリ”な選択に変わる可能性

以上でRX 6500 XT(8GB)の検証は終了だ。RX 6500 XTはとにかくコスト最重視で仕様を詰めた結果誕生したGPUであるため、同価格帯に上位GPU(今の場合RX 6600)がいる限りは、安易にオススメできるGPUとは言えない。今ほど円安になっていない時代に仕入れられたRX 6600と、円安が深刻になってから仕入れされたRX 6500 XT(8GB)でマトモな勝負にはなるはずがないのだ(価格交渉についてメーカーは十分頑張っていると思うが、為替は非情である)。RX 6600の新品流通在庫が消滅して初めて、RX 6500 XT(8GB)は低予算ゲーミングPC向けオプションとして語られるだろう。

4GB版よりも高負荷な状況に強く、FSR 3やAFMFの登場によって重めのゲームでも臆せず遊べるようになった。もともとのパフォーマンス限界が低いため、旧世代CPUと組み合わせてもそれほど“もったいない感”がないというのもある意味メリットと言えるだろう。

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