地域美化へ「アダプト・プログラム」 市民と行政の協働推進 食品容器環境美化協会

「アダプト・プログラムってな~に」。市民と行政が協働で進める清掃活動をベースとしたまち美化活動「アダプト・プログラム」を、飲料6団体で構成する公益社団法人食品容器環境美化協会(食環協)が中期3か年計画(2024~26年)の中心活動に組み入れ、本格活動を開始。まずは9月29日を「アダプト・プログラム記念日」に制定し、普及、啓発活動から始める。

アダプト(ADOPT)とは英語で「養子縁組をする」という意味。一定区画の公共の場所を養子に見立て、市民がわが子のように面倒をみて(清掃美化を行い)、行政がこれを支援し、市民と行政が連携して美化活動を行う仕組み。

1985年にアメリカ・テキサス州のハイウエイ散乱ごみの清掃から始まったこの活動は、瞬く間に全米に広がった。日本でも1998年に徳島県で初めて導入され、今では全国500以上の自治体が実施しているが、ビールを含めた飲料業界の認識は薄い。そこで食品容器環境美化協会は、今年度から2026年度を最終とする第8期中期計画の活動2本柱の一つにアダプト・プログラムを組み入れ、新たな活動を開始する。

枠組みは「市民・団体・企業」と「自治体」「食環協」のトライアングルで構成。地方自治会や企業、ボランティア、学校、青年会、老人会、商店会などからなる「市民・団体・企業」は定期的に一定区画の清掃やゴミ拾い、除草、花壇の世話などを実施。「自治体」はゴミの回収や清掃用具の提供、貸与、ボランティア保険の加入、サインボードの掲出、活動の紹介などを通して活動を支援。「食環協」は情報センターとして情報発信やパンフレット・DVDなど資料の提供・アダプト教室の開催などを通じて後方支援する。

食環協によれば、今年3月末現在の実施自治体は517自治体にのぼりプログラムは約703プログラム、参加団体は5万8千団体以上、活動者数は約240万人に達するという。全国約1千700自治体の中で、その1/3弱の自治体が導入している計算だが、飲料メーカーが定期的に支援するケースは少ない。

自治体の協力のもとで成立するアダプト・プログラムだが、自治体により道路や公園、河川など対象となる公共の場所が異なるため、担当部署が明確ではなく、公共部分である道路や公園、河川、海岸、駅前、繁華街、公共施設など清掃エリアの管理責任の問題なども指摘されている。

食環協では、中期計画の柱の一つにアダプト・プログラム助成事業を組み入れ、「自治体による認知拡大とプログラムに対するロイヤリティの向上」「資金流入の仕組み作り」「活動者の高齢化への対応」を課題として掲げた。その一環として「アダプト・プログラム記念日」の制定とドネーションプラットフォームの立ち上げなど、様々な角度からの参画機会の創出を図る。

今年度から食環協の新会長に就任した田中美代子氏(日本コカ・コーラ、広報・パブリックアフェア&サスティナビリティ本部副社長)は、「食環協は法人化以来、環境美化活動の推進に努め、まち美化やリサイクル率アップを下支えする役割を担ってきた。今後はアダプト・プログラム助成事業と環境美化教育優良校表彰事業の二つの大きな柱を推進するため、中期計画を作成した」とあいさつ。

加瀬清志代表理事㊧から田中美代子会長に登録証を授与

今年度から専務理事に就任した遠藤順也氏(元農水省四国森林管理局長)は、「事業計画はアダプトと優良校表彰が柱だが、根底には社会の持続可能性の確保が重要なファクターになっている」とし、佐藤克彦事務局長は「アダプトは一般的には知られていないが、認識を広げるために記念日を制定し、多くの人に当事者となってほしい」など抱負を語った。同協会は、1997年9月29日に初めてアダプト・プログラム研究会を開催した日に由来し、9月29日を「アダプト・プログラム記念日」として一般社団法人日本記念日協会に登録を申請。当日は加瀬清志代表理事から田中会長に登録証が授与された。

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