旧優生保護法の下で不妊手術を強制されたのは憲法違反だとして、聴覚障害のある福岡県の夫婦が国に損害賠償を求めた裁判で、国は12日、賠償を命じた1審の福岡地裁判決を不服として福岡高裁に控訴しました。
聴覚障害のある夫婦が訴え 夫の死後親族が引き継ぐ
この裁判は、障害者に不妊手術を強制した旧優生保護法の下、聴覚障害のある夫が約50年前に不妊手術を受けさせられたのは憲法違反として、聴覚障害のある80代の妻と親族が国に対して1人あたり2200万円の損害賠償を求めたものです。
2019年に夫婦で提訴しましたが、夫が3年前に亡くなったため親族が裁判を引き継ぎました。
福岡地裁は5月30日の判決で、旧優生保護法について「差別的な思想に基づくもの」などと指摘し、憲法に違反すると判断。
国が、不法行為から20年以上が経ち損害賠償を求められる「除斥期間」が過ぎているとして棄却を求めていた点については、「著しく正義・公平の理念に反する」と指摘し、国の責任を認めて約1600万円の賠償を命じました。
国は12日、この判決を不服として、福岡高裁に控訴しました。
旧優生保護法の強制不妊手術をめぐっては、東京・大阪など5件の訴訟で高裁判決が出され、いずれも「憲法違反」と判断しました。
一方、除斥期間については、5件のうち4件が適用を制限し国に賠償を求めており、司法の判断が分かれています。
この5件の訴訟について、最高裁大法廷が7月3日に判決を言い渡す予定で、どのような統一判断を示すのか注目されます。