『366日』HYの楽曲をなぜタイトルに? 狩野雄太P「要素が合わさってできている」

広瀬アリスが主演を務めるフジテレビ系月9ドラマ『366日』が、毎週月曜21時より放送中。本作は、HYの楽曲「366日」にインスパイアされたオリジナルラブストーリーだ。

初回から反響を呼び、第1話と第2話が放送後のTVer総合ランキングで第1位を獲得した本作。さらにエンディングでは、スキマスイッチの大橋卓弥、川崎鷹也、JO1の與那城奨、INIの藤牧京介といった豪華アーティストたちが、HYの仲宗根泉と楽曲「366日」でデュエットを果たしており、放送後にドラマや楽曲の関連ワードがSNSでトレンド入り。物語・楽曲共に大きな盛り上がりを見せている。

HYの楽曲をドラマのタイトルにした狙いにはどのような意図があるのだろうか。『366日』のプロデューサー・狩野雄太氏に話を聞いた。(編集部)

●脚本を担当している清水友佳子は「出力がすごい方」

――ドラマの反響はいかがですか?

狩野雄太(以下、狩野):たくさんの反響をいただけて、ありがたいです。業界関係者の方から連絡をいただくこともありますし、プライベートでお店で並んでいるときに、駅の改札などで偶然ドラマの感想が聞こえてきたこともあり、驚きました。

――『最愛』(TBS系)などの人気ドラマを手がけられた清水友佳子さんに脚本をお願いした理由を教えてください。

狩野:『最愛』や『リバーサルオーケストラ』(日本テレビ系)、『エール』(NHK総合)を書かれた方が「366日」の曲をモチーフにオリジナルラブストーリーをやるとなれば、僕が視聴者なら「観たい!」と思いました。そこで、清水さんにお会いして企画を伝え、ご一緒することができました。清水さんご自身もX(旧Twitter)に書かれていますが、キャラクター設定などは最初の段階で今とほぼ同じ形のものが出てきているので、やはり出力がすごい方だと感じました。

――なぜHYさんの楽曲「366日」をドラマのタイトルにしたのでしょうか?

狩野:もともとこの曲がすごく好きで、いろんな人のカバーも聞いていました。去年の1月ぐらいに川崎鷹也さんと仲宗根泉さんが歌っているMVをたまたま拝見し、やっぱりいい曲だなと。連ドラの企画を考える中で、フジテレビは昔、楽曲をタイトルにしたドラマがあったけれど最近やっていないよな、と考え始めたのが一番大きなところですね。

――「366日」は特に今30代前後の人にとって、まさにドンピシャで思い入れのある楽曲だと思います。

狩野:まず、世代の方にドンピシャの楽曲だというのはヒシヒシと感じております。今でもカラオケでたくさん歌われているし、たくさんの人の思いが乗っている曲なので、自分的には必死でやるしかないなと。もちろんHYさんにも相談させてもらいながらやっていますが、曲を汚すことのないように真剣にやらなきゃいけないというのは、自分も含め監督も脚本家もキャスト、スタッフみんなが思っています。

●描きたいのは「すごく大切な人を強く思い続ける気持ち」

――「366日」は失恋ソングですが、これまでのシーンに要素として取り入れている部分があれば聞かせてください。

狩野:おっしゃる通り失恋のイメージが強い楽曲ではありますが、HYのメンバーにこの楽曲の意味を伺ったところ、「すごく大切な人を強く思い続ける気持ち」とおっしゃっていて。365日1年中思っても足りないから、もう1日足して「366日」のタイトルがつけられたというお話を聞きました。そんなこともあり、主人公の明日香(広瀬アリス)が遥斗(眞栄田郷敦)をどれだけ強く思い続けるのかを中心に描いていきたいと考えて作りました。失恋的な要素だと、第4話で莉子(長濱ねる)と彼氏の別れもありましたが、話によっては歌詞を部分的にモチーフとして考えています。 “恋がこんなに苦しいなんて 恋がこんなに悲しいなんて”のように、歌詞の一部を拾って各話を作れないかと思って考えました。

――歌とストーリーを重ねる部分で難しかったことはありますか?

狩野:オリジナルのラブストーリーは難しいなと思いましたね。広瀬アリスさん演じる明日香は音楽教室の事務の仕事をしていますが、そんなふうにキャラクターの設定を市井のな街の人々にするということをやりたかったんです。加えて、嫌な人を出したくないということもありました。なるべく嫌な気持ちにならないようにしたいなと。

●キャラクターには『あの花』からの影響も?

――メインキャストの皆さんのお芝居についてはいかがですか?

狩野:皆さん真剣に考えながらお芝居をしてくれていて、ト書き一つも漏らさない迫力があります。ちょっと話しかけづらいくらい本気になる瞬間もあって。広瀬さんは現場でも「366日」を聴いて気持ちを作っていますし、郷敦さんもめちゃくちゃ本を読み込んでお芝居を作ってくれています。目線一つ取ってもどういう理解で芝居してくれたのかが伝わってきます。坂東(龍汰)さんは明るいキャラクターなので地に近いのかなというところもありながら、締めるところは締めるようなお芝居をしてくれています。長濱(ねる)さんは自分の演技はこれでいいのだろうかと考えてお芝居をしているので、どんどん上手くなっていて、最初に会った頃と全然顔つきが違うなと。綱(啓永)さんは第3話の泣き芝居が凄すぎて、普段話している時とのギャップに驚きました。

――5人のキャラクターの中に意識してグラデーションをつけているということは?

狩野:一応、考えています。太陽みたいな遥斗がいたり、遥斗とは違う意味で周りを明るくする智也(坂東龍汰)がいる。智也は当初は実はジャイアンみたいなイメージでした。和樹(綱啓永)は、最初は天才肌の男の子みたいな表現をしてみたり。5人が被らないようにすごく考えました。『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(以下、『あの花』)の実写版にも携わったのですが、こちらの6人のキャラクターとかが好きだったことも影響しているかもしれません。

――私は「366日」世代ですが、『あの花』も当時話題になっていたのを覚えています。

狩野:『366日』はいろんな好きなものの要素が合わさってできている側面もあります。劇伴も、『あの花』の音楽を担当していたREMEDIOSさんにお願いしています。『あの花』以外にも、『白線流し』、『あすなろ白書』、『若者のすべて』のような往年のフジテレビドラマや群像劇、もちろん映画なども含め、いろんな作品を参考にしています。

●「茨城の龍ヶ崎や土浦にシナハン(台本を書くための取材)に行きました」

――舞台設定はどのように決めましたか?

狩野:今年は2月29日があるから366日あることなどを加味して、12年間の話をやろうと思いました。しかし高校時代、大学時代、社会人ごとに描いていくと、登場人物が増えすぎてしまって感情を乗せることができないので、高校と現代で切り分けて考えることにしたんです。脚本の清水さんとも相談して、舞台は龍ケ崎にしました。龍ケ崎は自分が高校時代、何回か行くことがあったので、個人的な思い出を乗せているというところが大きいです。

――回想シーンでは、自転車通学、野球部、ブラスバンドなどの「恋愛あるある」がたくさん登場します。リアルな青春シーンはどこから着想を得たのでしょうか?

狩野:実際に茨城の龍ヶ崎や土浦にシナハン(台本を書くための取材)に行きました。そこで見た風景をイメージして「田んぼ道とかあぜ道を自転車でバーッと走ったらグッとくるよね」とか、「野球部とサッカー部だったらやっぱり野球部かな」とか、そんな感じで一つ一つ決めていきました。ブラスバンドは脚本の清水さんが音楽好きなことも影響しているかなと思います。

――映像が綺麗なことも話題になっています。

狩野:それはスタッフのみんなが本当に頑張ってくれているおかげです。カメラマンと照明は、普段映画やCMを方々だからか、ハイクオリティな映像を作り上げて下さっています。

――他にもこだわって制作しているポイントがあれば教えてください。

狩野:第1話の回想シーンで「スカイツリーをでデートの約束をする」というシーンがあるのですが、竣工日が2012年2月29日だったので、場所をスカイツリーにしました。また、現代パートは2023年から始まっているので、ドラマはこのあとうるう年である2024年2月29日を踏むことになります。その日に何が起きるかに注目していただきたいです。

――最後に今後の見どころを教えてください。

狩野:前半は割と人間ドラマ的な要素が強かったかなと思いますが、今後は驚きがありながらも、無理のない形で2人の恋が二転三転していくのが一番面白いところだと思います。よりラブストーリーっぽさが増しますので楽しみにしてください。智也、莉子、和樹らにもいろいろな転機が訪れるので、そこにも注目していただければと思います。
(文=Nana Numoto)

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