スーパーで店員を怒鳴る来店客!「カスハラ」現場に遭遇…あなたはどうする?識者が提案する対処策

企業や店などに対する顧客が優位な立場を利用して従業員に言い掛かりや理不尽なクレーム、暴言などをする迷惑行為「カスタマーハラスメント」、略して「カスハラ」が社会問題になっている。日常生活でも、訪れた店舗などで偶然、カスハラの現場に遭遇してしまった時、見て見ぬふりをするのか、間に入って収拾できるように協力すべきか、悩ましいところだ。「大人研究」のパイオニアとして知られるコラムニストの石原壮一郎氏がその対応策を提言した。

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【今回のピンチ】

スーパーで自分の前のおじさんが、店員の女性をしつこく怒鳴り続けている。後ろに並んでいたおばさんに「おにいちゃん、どうにかしてあげなよ」と言われた……。

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どうやら、お釣りの渡し方が気に入らなかったようです。店員の女性はひたすら頭を下げていますが、会社員風のおじさんの「客を何だと思ってるんだ!」といった怒声は、収まる気配がありません。絵にかいたようなカスハラ(カスタマーハラスメント)です。

おじさんの迫力に気圧されてドキドキしていたら、後ろのおばさんに「どうにかしてあげなよ」と背中を押されました。助けたいのは山々ですが、どうすればいいのか。

そりゃまあ、「いや、でも……」とモジモジし続けていたり、「ぼく、関係ありませんから」と逃げたりしたところで、非難されるいわれはありません。そのうち店長か誰か別の人がやってくるでしょう。

しかし、何もできなかったとなると、きっと後で激しい自己嫌悪に陥ります。おばさんにも、冷ややかな目で見られるでしょう。店員と自分の両方のピンチを救うには。何らかの行動を起こす必要があります。

怒っているおじさんに、ドスの利いた声で「おっさん、いいかげんにしろよ」と言える度胸があれば、おばさんに促される前にそうしているでしょう。「まあまあまあ」と割って入るのも、ハードルが高そうです。

おじさんへの直接のアプローチは避けつつ、例えば店の奥に向かって「あー、警備員さん、こっちですこっちです!」と叫んでみるのはどうでしょう。もちろん、警備員の姿が見えていなくてもかまいません。

あるいは、後ろのおばさんも巻き込んで、一芝居打つのも有効かも。おばさんに、

「これってカスハラですよね。こういうときは警察に連絡していいんですよね」

なるべく大きな声でそう話しかけて、スマホを取り出します。おじさんがこっちに向かって「おい、なにやってんだ!」とスゴんでくる可能性もありますが、「わー、暴力反対!」と叫べば、きっとおとなしくなります。そういうおじさんは、「自分は客だから店員に強く出ていい」という〝計算〟があるので、客同士だと強くは出られないはず。

無言でスマホを向けて動画を撮ることで、おじさんを威嚇する手もあります。ただ、それをやるとおじさんをいたずらに刺激して、厄介な展開になりかねません。

そうこうしているうちに、店長なり先輩なり、助けがやってくれば、自分の役目は終わりです。おばさんとにっこり笑い合って、せいいっぱい戦った満足感に浸りましょう。被害者の店員の女性はショックを受けて混乱しているので、お礼なんて期待しちゃいけません。

ただし、怒鳴っているのが見るからにコワモテの人だったり、明らかにややこしそうなタイプだったりした場合は、派手に動くのは危険。こっそり列を離れて助けを呼びに行くのが、精いっぱいの対処です。相手を見て〝計算〟するのは、動機や目的はいろいろにせよ、誰しも無縁ではいられないようですね。

(コラムニスト・石原 壮一郎)

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