蛇口界の異端児「株式会社カクダイ」 岐阜の山奥にひっそり佇む巨大工場に潜入!

料理に洗濯にお風呂…生活に欠かすことのできない水を届けてくれる“蛇口”。今回は、大阪に本社を構える蛇口メーカー「株式会社カクダイ」の岐阜工場に潜入! 工場では、想像のはるか斜め上をいく“ユニークな蛇口”を製造している。

1000種類以上の蛇口を世に送り出す「株式会社カクダイ」

蛇口メーカー「株式会社カクダイ」は、1897年に呉服店として創業。戦後は水回り製品を取り扱うようになり、1963年には刃物の町・岐阜県関市に工場を建設。これまで1000種類以上の蛇口を世に送り出してきた。

まずは、スタンダードな蛇口の製造工程から見ていこう。最初は、機械で鋳物砂を練るところから始まる。熱による膨張が少ない鋳物砂(以下、砂)は、鋳物を冷やす効果が高い特殊な砂だ。この砂に連結剤を注入して混ぜていく。

連結剤によりドロドロになった砂は、こちらの機械へ。板の表と裏に突起が付いていて、上下の物体が砂を挟み込む。物体の中は空洞になっており、先ほど混ぜた砂を充填。完了したところで中を見ると、上下の砂に突起の痕が付いていた。この砂の塊が、蛇口の金属部分の型になるのだ。

そして型の上に、砂でできた「中子(なかご)」を置く。中子は、部品内部に水の通り道となる空洞を作る重要なパーツだ。再び機械で上下を重ね合わせ、枠を外したものが、こちらの黒いボックス。その上に穴の開いた鉄板が載せられ、ベルトコンベヤーで次の工程へ。

1200℃で溶かした銅を一気に流し込む!

待っていたのは、マグマのような液体が入った溶解炉! ここで蛇口の材料となる銅を1200℃の熱で溶かしていく。完全防備の作業員は、手作業で溶解炉の銅を特殊な容器に移し替える。

熱々の銅を、先ほど作った蛇口の型に注湯。1つの型に対して、注ぐのは1回のみ。数回に分けると、途中で固まってしまう恐れがあるからだ。鋳造部の坂田勇真さんは、「大きいやけどをしたことはないが、小さいやけどをしていることはある」と話す。足元を見ると、作業着は火の粉で穴だらけ。「難しい作業なので、今も勉強中です」(坂田さん)。蛇口にかける熱い情熱が伝わってくる。

2時間ほど冷まし、いよいよ型から蛇口本体を取り出す。連結剤で固めた砂は熱への耐久性はあるが、衝撃を与えると簡単に崩れる性質を持っている。型から姿を現したのは、“蛇口の卵”だ。

蛇口本体にこびりついた砂は、直径1ミリの鉄球を大量に噴出する「ショットブラスト」で落とす。

作業前と比べると、その違いは一目瞭然。頑固な砂の汚れもきれいに落ちてピカピカに! 型の中に置かれた中子も、ショットブラストで一緒に砕かれ、見事、水の通り道となる穴ができていた。

お次は、不要な部分を切り落とす工程。蛇口に使われるのは、赤く色付けしてある両端の部分のみで、中央にある銅の通り道と、型の“つぶれ”を防ぐ4本の柱は、ここでお役御免となる。つまり、半分近くがカットされてしまうのだ。

この段階で不良品が見つかることもあり、工場長の吉岡透さんは、「お風呂の蛇口は15%ほど不良品が出てしまう」と話す。先ほどカットした部分や不良品は、もう一度溶かして再利用されるとのこと。

ようやく蛇口の原型が見えてきたが、完成までには、まだまだ多くの工程が待ち受けていた。

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