瀬戸内の初夏の味覚、小イワシが豊漁 小ぶりになったことが懸念材料 今後は漁獲量制限の対象にも【広島発】

漁獲量の減少で食卓に上がる魚の種類が減ることが懸念されている。広島では、夏の味覚、小イワシ(カタクチイワシ)とシラス漁が解禁され、水揚げは好調だ。今後は、小イワシも漁獲制限の対象になるとみられているが、はたして、これからも漁獲量を確保できるのかどうかを取材した。

5年間で一番の豊漁

広島市中央卸売市場では漁が解禁された6月10日、小イワシが水揚げされた。ここ5年では、一番の豊漁だという。

広島魚市場鮮魚部・右近浩二次長も「担当して5年目の中だと、これほど豊漁だった年はないかな。ようやく上がってくれたのでほっとしています」と安堵していた。

しかし、1年前、2023年は状況が全く違っていた。水揚げが極端に少なかったのだ。

広島中央卸売市場・吉文 吉本崇仁 専務(当時):
小イワシの水揚げが少ないので、値段は例年より2~3割高い。仕入れの時点で高いのは当たり前ですが、ひどい時には入荷がないことも。漁獲量は2022年の半分くらいですね

瀬戸内海の小イワシは、国が漁獲量の上限を決めるTAC制度の対象になる可能性が高まっていて、関係者による会議もすでに始まっている。

2023年の6月頃、なぜ漁獲量が少なかったのか、国立研究開発法人 水産研究・教育機構・水産資源研究所 河野悌昌主幹研究員に聞いたところ「カタクチイワシ(小イワシ)は産卵期が主に5月から9月と長い。年によってたくさん生まれてくる月が変わってくるので、それが関係していて、たくさんとれる時期も変わってくると思う」と語った。

ーー小イワシは以前に比べとれているのか?

国立研究開発法人 水産研究・教育機構・水産資源研究所 河野悌昌主幹研究員:
今はとれてますね。ここ20年間くらいは小イワシの数は増えていて、漁獲量も緩やかですが、増加傾向に。広島県全体の農林統計からすれば近年安定していて、結構いい状態にあると思っています

漁獲量は減っていないが、小さくなり加工用に

小イワシの水揚げ量の推移を見てみると、広島県では年ごとにバラつきはあるものの、特に減少していないことが分かる。

しかし、「市場では、小イワシの大きさの問題で、年々入荷が減っています。量販店や飲食店で調理するのに手間がかかるので、大きさがある程度ないと市場では扱いが難しい。大きさが小さいと「ちりめん」や「いりこ」の加工業者に持ちこまれて、市場の水揚げにはなりません」と小ぶりのものが多くなり、市場に出回る量が減ったと広島中央卸売市場魚食普及委員会・望月亮委員長は指摘する。

漁獲量は減っていないが、小ぶりなので「シラス」として加工業者に出荷されるケースが多いため、市場で扱う「小イワシ」は減少傾向にあるということだ。

瀬戸内の小イワシは、これからもちゃんとれるのかを改めて聞いた。

国立研究開発法人 水産研究・教育機構・水産資源研究所 河野悌昌主幹研究員:
今のところ増えていますので、今のままの状態で新しい稚魚が入ってきて、今のようなとり方をしていれば、今後も資源のいい状態が続くと考えられます。

広島の小イワシは、資源としては、現在、良好な状態にあるということだが、一方で、水産資源の保護のため国が漁獲量を制限するTAC制度の対象になるとみられている。2024年9月頃には基本方針が決まり、2025年1月に漁獲量制限が始まる可能性が高い。

(テレビ新広島)

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