G7、ロシア凍結資産使ったウクライナ支援で合意 500億ドル融資へ

ヤロスラフ・ルキフ(BBCニュース)、ジーン・マケンジー(BBC特派員)

主要7カ国(G7)首脳会議が13日、イタリア南部プーリア州で始まった。G7は、凍結済みのロシア資産を使って、ロシア軍の侵攻と戦うウクライナを支援するため、500億ドル(約7兆8500億円)の融資を行うことで合意した。

アメリカのジョー・バイデン大統領はこの合意について、「私たちは一歩も引かない」ことを改めてロシアに示すものだと述べた。

一方、ロシアは、「極めて痛みが大きい」報復措置を取ると脅している。

ウクライナに資金が届くのは年末になる見通し。この融資は、ウクライナの戦争遂行と経済を支援するための長期策とされる。

首脳会議ではまた、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領とバイデン氏が、10年間にわたる二国間の安全保障協定に署名した。

この協定は、アメリカがウクライナに軍事支援と訓練を提供することを想定している。アメリカが軍隊の派遣を約束するものではない。

ウクライナ政府は、この協定締結を「歴史的」なものだと歓迎した。

凍結資産の利子を活用

G7は、ロシアが2022年にウクライナに全面侵攻したのを受け、欧州連合(EU)とともに約3250億ドル(約51兆円)相当のロシア資産を凍結している。

この資産は年間約30億ドルの利子を生んでいる。

G7の計画では、この30億ドルを、国際市場で資金調達するウクライナへの融資500億ドルの年利の支払いに充てる。

バイデン大統領は首脳会議の共同記者会見で、500億ドルの融資は「ウクライナのために使われるとともに、(ロシアのウラジーミル・)プーチン(大統領)に私たちは一歩も引かないことを改めて思い知らせるものだ」と主張。「(プーチン氏は)私たちがいなくなるまで待つことなどできないし、私たちを分断することもできない。ウクライナがこの戦争に勝利するまで、私たちはウクライナを支えていく」と述べた。

ゼレンスキー氏は、アメリカをはじめとする友好国の揺るぎない支援への感謝を表明。アメリカとの新たな安全保障協定に関しては、「今日は本当に歴史的な日だ。ウクライナ独立(1991年)以降で最も強力なウクライナとアメリカの協定に双方が署名した」と述べた。

G7各首脳が称賛

G7はカナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、イギリス、アメリカの裕福な国々で構成されている。ロシア占領軍と戦うウクライナを、財政や軍事の面で大規模に支援している。

G7各首脳はこの日、500億ドル融資の合意を称賛。イギリスのリシ・スーナク首相は「ゲーム・チェンジング(形勢を一変させる)」と表現した。

500億ドルという融資額の規模は、アメリカが4月についに予算を成立させたウクライナへの追加軍事支援(約610億ドル)にも匹敵する。

G7が凍結したロシア資産をめぐっては、利子だけでなくすべての放出を求める声がウクライナで出ていた。しかし、欧州中央銀行はそれを退けていた。

アメリカの軍事支援はウクライナの前線に多くのミサイルを送ることに直結しているが、今回合意した融資は年末までウクライナに届かない見通し。そのため、現在の戦況に与える影響は小さいとみられる。

ウクライナは目下、今なお多くの兵器が緊急に必要だとしている。中でも、国内各都市や発電所に対するロシアのミサイルおよびドローン(無人機)攻撃に対応するため、防空システムを求めている。また、長く待ちわびているF-16戦闘機が早ければ今夏にも届き始めることを期待している。

ゼレンスキー氏はG7首脳会議の場で、F-16戦闘機がアメリカから運び込まれることも、新たな安全保障協定に含まれていると述べた。

融資で合意した意義

今回の融資合意は、ウクライナにとって象徴的な意味が大きい。これでロシアは、ウクライナにもたらした荒廃の修復だけでなく、ウクライナの自衛に対しても支出を迫られることになる。

ゼレンスキー氏の最側近の一人は、西側諸国がこうした方法でロシアを罰すると決めたことは、ある意味で戦争の転換点になると述べた。

ただこの融資が、ウクライナで戦争を続けるロシアをUターンさせる可能性は低い。

ロシア中央銀行の凍結された資産の大半は、ベルギーで保管されている。

国際法上、各国がこれらの資産をロシアから没収してウクライナに渡すことはできない。

ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、G7で今回の決定が発表される数時間前に、「極めて痛みの大きい」報復措置が取られると警告した。

(英語記事 G7 agrees $50bn loan for Ukraine from Russian assets

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