【キングレコード×和モノA to Z 2024年版】DJ吉沢dynamite.jp選盤&ディスクレビュー前篇

昨年、好評を博したJapanese Groove Disc Guide『和モノA to Z』監修者/著作者であり、DJとして圧倒的な人気を誇る"DJ吉沢dynamite.jp"とキングレコードによるアーカイヴ音源発掘プロジェクトが今年2024年も実現する運びとなった。
その前篇となるディスクレビューをお届けしたい。

このたびのセレクションは、日本を代表するジャズ/フュージョン創世記の最重要レーベル「Electric Bird (エレクトリック・バード)」のDJ/クラブカルチャーシーンで高く再評価されている作品から。

さらに、1970年代末からの大ヒットアニメ作品(映画、TV)が口火となり勃興したアニメブームと並行して「アニメ声優(第二次声優)ブーム」の折に主に1980年代に人気声優たちが残した作品から。
昨今のシティポップ的アングルからの再評価も手伝い、歌唱のみならず、作詞作曲にも関わるなどアーティスティックな一面も顔を覗かせている。

そして、オリジナルレコード発売当時、特別な脚光を浴びずに現在に至った不世出の作品から。
当時のバブル景気隆盛期前夜という時代背景の中、敢えて現代の再評価を見据えたかのように和モノやシティポップを標榜して作りあげられたような作品たちと出会うことができる。
後世、偉大なミュージシャンに昇華する人たちのキャリアスタート期やビッグプロダクションに発展する音楽制作集団の初期の作品群、偉大なプロデューサー、アレンジャー、クリエイターらによって紡ぎ出された無名のミュージシャンの諸作品など、どこか気になる参加ミュージシャンクレジットやプロデュースワーク的意匠がこれら作品に吹き込まれているようななんとも不思議な存在感を放っている。
いずれも作品発売時の時代背景を反映させながらも革新的なサウンドを試みた末に生み出されているとともに、時代を超越して、現代においてまるで新作であるかのような佇まいで存在しうる先鋭的な作品ばかりである。


水原明子『Love Message』 (1982年作品)

DJ好みなアレンジがその筋に定評ある入江純プロデュースによる洋楽スタンダード・ナンバーをカヴァーしたアルバム。アカペラから始まるディスコ仕立てのG.ガーシュインの「Summertime」のほか、オススメはアイドル声のか細いヴォーカルながら良質のブギー・フュージョンとなったマーヴィン・ゲイの「What’s Going On」のカヴァー!同一ジャケ&内容のJI SOOK名義の韓国盤も存在。

https://lnk.to/amizuhara_lm

Manhattan Focus『Manhattan Focus』 (1979年作品)

日米混成ミュージシャンによるアルバム全体通し粒揃いなラテン/ブラジリアン・フュージョンが奏でられるグループ唯一のアルバム。ソウル・ジャズな「Hocus Pocus」、スキャット入りボサ「To My Lady」ほか。個人的にはブレイクから始まるAl Foster(ds)作のラテン/ブラジリアン「Mixed Roots」とスリリングなピアノから始まるBob Berg(ts)作のスピリチュアルなラテン/ジャズ・ファンク「Amazon」が特にお気に入り。生音系DJ諸氏にオススメのアルバムである。

https://lnk.to/mf_mf

宮間利之とニュー・ハードプレイズ 上田力『ビッグ・スタッフ』(1980年作品)

日本屈指のビッグバンドが上田力をアレンジ&コンダクトに迎えた意欲作。約8分弱の長尺となるディスコ・フュージョン「SAMBOOGIE」。上田力らしいブラック・ムービーのサントラさながらのドープなアレンジが光る「SUNSET VALLEY」。クイーカやパンデイロがブラジル色を醸し出すボサ/サンバ・フュージョン「MAS QUERO DANCAR (BUT DANCING) 」がオススメ。宮間氏曰く”ジャズの下地のあるフュージョン”が聴きどころ。

https://lnk.to/tmiyama_bs

上田力 with ニューハード『HERD LAND』 (1981年作品)

ドラムの頭打ちリムショットと女性コーラスがソウルフルでメロウな「Part 1: Enchant」。ジャズファンクから一転し間奏が「聖者の行進」風なデキシーランド・ジャズに一瞬変化する「Herdland」。ゆったりとしたメロウなジャズファンク「Soul Market」。ラテン・ジャズファンク「Qué Lastima」。前作でのニューハードとのコラボがニューハード寄りとすれば、こちらはソウルフルでファンキーな上田氏寄りのテイストを感じ取れる作品。

https://lnk.to/cueda_hl

益田幹夫『Silver Shadow』 (1980年作品)

ジャズ鍵盤奏者による全体的にラテン/ブラジリアン・テイストが加味されたフュージョン・アルバム1980年作。バトゥカーダ・リズムなイントロ・ブレイクから始まる疾走感あるサンバ・フュージョン「My Delight」。女性コーラスとエレピが心地良いしっとりメロウ「All About You」。ディスコティックなクラップ入りのジャズファンク「Goody - Goody」。クールでソリッドな演奏が抜群にカッコイイ「Inner Urge」 。

https://lnk.to/mmasuda_ss

沢井原兒&ベーコンエッグ『Skip Jack』 (1981年作品)

サックス奏者、沢井原兒が自身のグループ、ベーコン・エッグを率いての1981年の初リーダー作。氏曰く”ベーコンがロックなら、エッグの黄身がジャズ、白身が中道、3者がうまく融け込んだ形を模索している”~バンドと言うように、録音のミックス・バランス含め凡庸なフュージョンとは少々違うその感じが受け取れる。なかでも金子マリがスキャットで参加した2曲のブラジリアン・フュージョン「Hand And Foot」とスキャット・ソロもイカす同系の「What Comes Next?」が特に好みである。ほかタイトル通り微睡の中のそよ風吹く朝を連想させるチルアウト・メロウ「Morning Breeze」も良し。

https://lnk.to/gsawai_sj

戸田恵子『Looking For Love』 (1982年作品)

女優・声優としてお馴染みの彼女の1982年リリースの2nd.アルバム。B面のオールディーズ・カヴァーは割愛して特筆すべきはA面!ピアノのアルペジオから始まるディスコ「LOVE ME AGAIN」、織田哲郎:作曲のソウル/AOR「TWENTY-FIVE(25)」、亜蘭知子:作詞のスペクトラムばりのブラスがカッコイイ四つ打ちディスコ「FALL IN LOVE TONIGHT」以上3曲の作曲・編曲は元ウエスト・ロード・ブルース・バンド、後に日本コロムビアの社長に就任する中島正雄によるもの。シティポップ&ブギー・ファンには高村亜留「恋は最高」の作曲者と言えばお分かりだろうか?そのほか惣領泰則:作曲・編曲のミディアム・ソウル「LOVELY NIGHT」も良い。元々は”あゆ朱美”名義で16才で歌手デビューしている抜群の歌唱力あっての安定感は言うまでもない。

https://nk.to/ktoda_lfl

戸田恵子『Naturally』 (1983年作品)

人気女優・声優の1983年作の3rd.アルバム。全ての作曲・編曲が美乃家セントラル・ステイションの佐藤健だけありファンキーな好楽曲が目白押し!まるでアニメ主題歌を彷彿させるディスコ/ブギー「OVERTURE~序曲~」。失恋から次の恋への序章?を歌う哀愁アーバンAOR「FADE IN~溶明~」。EPO「Girl In Me」と相性良さそうな歌い出しのブギー「RUN THROUGH~通し稽古~」。パティ・オースティン「Do You Love Me?」風に始まるアーバン・ディスコ「AD-LIB~即興の台詞~」 。微かにボサ風味のアーバンAOR「それはそれ」など充実した内容。シティポップ/ブギーファンク好きも反応するであろう今こそ”旬”な隠れ名盤。

https://lnk.to/ktoda_naturally

水島裕『YOU』 (1979年作品)

人気声優による1979年作の1st.アルバム。全演奏は謎のザ・ファンタスティック・バンド(以下:TFB)であるが、同じく声優で事務所の先輩でもあった富山敬の良質な和モノ・グルーヴが収録されたアルバム『ロマン』のバックもTFBである事から恐らくレーベルのスタジオ・ミュージシャンと思われる。アイドル然な時代感ある歌詞&歌唱だが複数あるブレイクのフルートが渋く演奏は侮れないディスコ・ファンク「真赤なヘッドフォーン」。合間に入る声優らしいセリフが味あるミュンヘン・ディスコ歌謡「星空の抱擁」、スウィング歌謡好きはディキシーランド・ジャズ調の「哀愁バカボンド」をどうぞ。後半はオールディーズの日本語カヴァー。

https://lnk.to/ymizushima_you

三ツ矢雄二『シナモンの香り』 (1980年作品)

アニメ『タッチ』の上杉達也役でお馴染みの声優による1980年の1st.アルバム。凡作な歌謡曲のなか最高なDJグルーヴが1曲。作詞・作曲は幻のバンド、スーパーパンツの高瀬清志、編曲はジャズ系ギタリストの直居隆雄が担当したジャジーなイントロから始まる大野雄二を彷彿させるカッコイイ高速ジャズファンク「シナモンの香り」が少々笑える奇天烈な歌詞と演奏とのアンバランスが逆に絶妙で癖になる。

https://lnk.to/ymitsuya_cinnamon

三ツ矢雄二『to NICOLE』 (1980年作品)

ファースト『シナモンの香り』と同年の1980年リリースのよりポップさが増した2nd.アルバム。陽気なサンバ・ディスコ歌謡「かるなばーる」。ブッカー・T & ザ・MG’s「グリーン・オニオン」風なやさぐれブルース「プラトニック・ぶるーす」。そして笠井紀美子「バイブレイション」のベース・ラインをテンポ・アップしたような途中パーカッション・ブレイクも入る高速サンバ/ラテン・ディスコ「マンハッタン・コミュニケーション」。亜蘭知子:作詞、中村正雄:作曲・編曲のファンキーなディスコ/ブギー良曲「Give Me One More Kiss」が特にオススメ。

https://lnk.to/ymitsuya_nicole

三ツ矢雄二『Modern Boy』 (1981年作品)

ジャズやオールディーズをモダン・アレンジで日本語カヴァーした1981年リリースの3rd.アルバム。演奏はレーベル・メイトであり織田哲郎との関係も噂されるバンド、イースト・ロード。ディスコ/ブギーなアレンジとなった「シング・シング・シング」。クラップ入りのロッキン・ツイスト「カモナ・マイ・ハウス」。シンセ・ブラスが効いた小粋な80sスウィング「ダイナ」。軽いラテン調グルーヴな唯一のオリジナル「Good Old Song」など。

https://lnk.to/ymitsuya_mboy

三ツ矢雄二『Hi Touch』 (1983年作品)

人気声優による1984年リリースの7thアルバム。清涼感あるギター・カッティングから始まるシティポップ/ブギー「サマー・メモリーズ」 。ゆったりしたラテン風味のトロピカル・グルーヴ「Shining Eyes」。そして私DJ的に1番のお気に入りはパトリース・ラッシェン「Forget Me Nots」 を下敷きにしたと思われるシンセティックなアーバン・ブギー「After Five At Café-Bar」。氏の諸作の中でも一番シティポップに接近したアーバン&リゾート感溢れるアルバムである。

https://lnk.to/ymitsuya_hitouch

選盤&ディスクレビュー:DJ吉沢 Dynamite.jp

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