タキシードをまとって乗り込みたい 「ディフェンダー110 V8カルパチアンエディション」

スポーツカーの世界では見た目のカッコよさもさることながら、パフォーマンスも重要な評価軸となる。それは結局のところエンジンのパワーに由来していることが多い。だがオフロード4駆やSUVの世界ではどうか。パワーが足りないのは論外だけれど、パワフル過ぎていいことなんてあるのだろうか?

今回試乗したのはランドローバー「ディフェンダー110 V8カルパチアンエディション」。ボディは90(ショート)、110(ミドル)、130(ロング)と3種類用意されているなかで中間となる4ドアの110。エンジンは5.0リッター、スーパーチャージドV8を積む。カルパチアンエディションは、カルパチアングレイのボディと特別装備を備えたモデルだ。

黒々としたボディの威圧感にため息がこぼれる。サテン(半艶)仕上げのボディは、見ようによっては映画「007シリーズ」で悪役が乗っているクルマのようにも見えるし、一方では漆黒の車体からタキシードを着た男性が降り立ったらカッコイイだろうな、と思えるシックな雰囲気も漂っている。先代から黒っぽいディフェンダーは都市部で乗るスタイリッシュなSUVとして人気だったが、今回の試乗車もまさにそんな需要を狙ったものだろう。

インテリアも黒系でまとめられており、艶感のある表革とスエード調のファブリックのコンビによって外装とシンクロしている。昔ならお洒落好きなオーナーがショップに持ち込んでカスタムしていたような攻めた仕様を、今はメーカーが完璧にプロデュースしてくれる時代だ。それくらい今回のディフェンダーは見た目にスキがない仕上がりになっている。

モノトーンの見た目ばかりに注目してしまいがちだが、特徴はランドローバー「レンジローバー」 シリーズの中でも機能性を重視した簡素な作りにある。価格はシリーズ最高レベルの1685万円だが、運転席からの見た目は855万円からはじまる110のベーシックモデルと比べても大差ない。シートと同じくスエード調の素材でトリムされたステアリングの握り心地がすばらしいくらいである。

V8エンジンのいくぶん勇ましい排気音を聞きながら走り出してみる。スロットルペダルの踏み込みをそのまま反映させるように、大き目のボディがズンッと加速する。2450kgあるはずの車重が半減して感じられるし、有り余る動的性能がクルマ全体のプレミアム度をグンと引き上げていることも実感できた。

試乗前の「SUVにそんな大馬力はいらないだろう!」という込みは、あっという間に霧散してしまった。しかもジャガーランドローバー自製のスーパーチャージドのV8エンジンは、現在レンジローバー系が搭載しているBMW製の4.4リッター、ターボより出力特性がワイルドな感じで、ディフェンダーのキャラクターにもよく合っている。

また大パワーを受けるシャシーのセッティングも入念に行われており、エアサスペンション装備車の特徴である“フワッと引き締まった”乗り心地も洗練されているし、オプション装着されていた22インチのタイヤ&ホイールも見た目と走りの双方にしっかりと貢献している。

黒っぽい見た目もシックだが、走りも全方位的にバランスよくまとめられたディフェンダー110 V8。都会で乗ってもお洒落だし、もちろんカントリーサイドではタフなオフローダーとしても活躍してくれるに違いない。クルマ自体がモノトーン仕上げになっているので、ドライブの際のファッションも楽しめるはず。ボディと同色系も定番だがビビッドな色合いなども似合いそう。今シーズン、自信を持ってオススメできる一台である。

ランドローバー ディフェンダー110 V8カルパチアンエディション 車両本体価格: 1685万円(税込)

  • ボディサイズ | 全長 4945 X 全幅 1995 X 全高 1970 mm
  • ホイールベース | 3020 mm
  • 車両重量 | 2450 kg
  • エンジン | V型8気筒スーパーチャージド
  • 排気量 | 4999 cc
  • 最高出力 | 525 ps(386 kW) / 6500 rpm
  • 最大トルク | 625 N・m / 2500 - 5500 rpm
  • 変速機 | 8速 AT

Text : Takuo Yoshida

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