20代の息子が「一生役職にはつきたくない」と言っています。平社員のままでも年収は上がるのでしょうか?

ずっと平社員のままだとどれくらい年収は上がる?

会社にもよりますが、定期昇給がある場合は、平社員のままでも年齢や勤続年数によってある程度は年収が上がると期待できます。昇進を断って平社員のままでいると、どのくらい年収は上がるのでしょうか?

個々の年収は会社やその人によって差が出ますが、年齢別の平均年収を目安にできます。厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると「非役職」の年齢別平均年収は以下の通りです。

・20~24歳:343万7400円
・25~29歳:423万3600円
・30~34歳:464万9600円
・35~39歳:491万5200円
・40~44歳:505万500円
・45~49歳:507万5900円
・50~54歳:522万200円
・55~59歳:528万1400円

同調査から、一般的には年齢とともに年収も少しずつ上がっていくことが分かります。

課長に昇進した場合の平均年収の差は?

平社員のままでも年収は上がっていくと想定しても、昇進した場合と比較するとどうなのか気になる方もいるでしょう。

ここでは、同じく厚生労働省の調査を参考に、一例として課長に昇進した場合の年齢別平均年収と非役職との差(カッコ内)を以下にまとめます。

・20~24歳:565万4600円(221万7200円)
・25~29歳:572万8300円(149万4700円)
・30~34歳:629万8200円(164万8600円)
・35~39歳:749万7400円(258万2200円)
・40~44歳:790万9800円(285万9300円)
・45~49歳:807万6700円(300万800円)
・50~54歳:826万9000円(304万8800円)
・55~59歳:839万1100円(310万9700円)

同調査から、課長クラスに昇進することで、平社員と比較して年齢別の年収は149万4700円~310万9700円も多いことが分かります。若い頃の年収は平社員の同期と変わらなくても、周りが昇進するようになると同年代との年収に大きな差が出てくることが考えられます。

20代で役職につきたくない人の割合と理由

内閣府男女共同参画局が実施した調査によると、20代の時点で「いずれは管理職につきたいと思っていた・いる」に対する男性の回答は以下の通りです。

・当てはまる:15.6%
・どちらかといえば当てはまる:28.2%
・どちらかといえば当てはまらない:26.5%
・当てはまらない:29.8%

同調査から、20代の頃から仕事での昇進に消極的な人は56.3%と半数以上いることが分かります。役職につきたくない理由としては、以下のようなことが考えられます。

・責任が増えて負担になる
・仕事が増えて自分の時間が減ってしまう
・自分のやりたい仕事ができなくなる
・家事や育児との両立が難しくなる

昇進を断り続けることにリスクはある?

役職につきたくない理由はさまざまですが、安易に断ることにはリスクもあるため注意が必要です。まず、昇進を前提として雇われている可能性があります。

例えば総合職の場合、将来の幹部候補として期待されているかもしれません。就業規則に昇進に関することが明記されている場合もあるようです。会社には人事について一定の裁量権があり、これには昇進も含まれます。

まず昇進を打診してから辞令を発することが一般的ですが、正当な理由がないのに断ると、業務命令違反として懲戒処分が下される可能性があります。育児・介護・健康上の理由など、正当な理由がある場合は、会社に相談すれば配慮してもらえるでしょう。

ほかにも、会社によっては実力や能力を評価して給料を決めることもあり、昇進を断る社員は評価が得られずに年齢を重ねても年収が上がりにくいケースが考えられます。

昇給しないことで仕事に対するモチベーションが下がったり、周囲からの評価が厳しくなって会社にいづらくなったりする場合もあるようです。

昇進を断る場合は思いつきで決めるのではなく、就業規則を確認して、上司と相談するなどして慎重に決定するとよいでしょう。

平社員のままでも年収は少しずつ上がる可能性あり……役職者と比較すると大きな差がつくことも!

年齢別の平均年収を見ると、会社にもよりますが、平社員のままでも少しずつ年収は上がっていくことが分かりました。

しかし課長クラスと比較すると、年齢別に149万4700円~310万9700円の差が出る可能性があります。

役職につきたくない理由はさまざまですが、昇進を前提として雇われていて、その旨が就業規則に明記されている場合もあるため注意が必要です。正当な理由なく昇進を断ると、場合によっては業務命令違反として懲戒処分が下される可能性もあります。

20代の息子が「役職につきたくない」と言う場合は、打診を安易に断るのではなく、将来起こり得る同年代との年収差や会社の意向も考慮しつつ、慎重に決定するようアドバイスしてもよいでしょう。

出典

厚生労働省 政府統計の総合窓口e-Stat 賃金構造基本統計調査 令和5年賃金構造基本統計調査 表番号1 役職、学歴、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額 産業計
内閣府 男女共同参画局 令和4年度 新しいライフスタイル、新しい働き方を踏まえた男女共同参画推進に関する調査報告書 第2章 調査結果 (9)「仕事での昇進」20代時点での考え方(全体、初職の雇用形態別)(43ページ)

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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