海抜29メートルの防潮堤...女川原発再稼働へ着々 福島民友記者ルポ

総延長約800メートルに及ぶ東北電力女川原発構内の防潮堤。高さは海抜29メートルに達する「巨大な壁」だ=13日午後

 東北電力は13日、再稼働に向けて5月末に安全対策工事を完了した女川原発(宮城県女川町、石巻市)構内や2号機の一部を報道陣に公開した。新たな設備に費やされたのは約11年の年月と約5700億円の工事費。9月ごろの再稼働を見据える原発に入り、現状を取材した。(報道部・多勢ひかる)

 原発と海を隔てる防潮堤。大津波の流入を阻止するため、高さ海抜29メートル、総延長約800メートルの巨大な壁が立ちはだかる。東日本大震災前の敷地の高さは海抜14.8メートルだった。最新の知見による最高水位23.1メートルに十分な余裕を持たせた上、流されたがれきなどが衝突することも想定した。

 2号機の建屋内に入った。少し薄暗い部屋に通されると、いくつものパイプが張り巡らされた中に銀色のタンク3基が確認できた。重大事故時に原子炉格納容器の圧力を下げることで破損を防ぐ「フィルター付きベント」だ。容器内を圧迫する気体を外に放出する際、特殊なフィルターなどを通すことで粒子状の放射性物質の放出量を千分の1程度に抑えるという。気体は建屋の屋上から放出される。

東北電力が報道公開した2号機内の「フィルター付きベント」。パイプが張り巡らされた中に銀色のタンク3基が確認できた(代表撮影)

 原子炉の冷却機能が失われた場合に蒸気の力で注水を行う高圧ポンプや、津波で取水路などから湧き上がった海水が敷地内に流れ込むのを防ぐ防潮壁なども公開された。

 敷地内では、忙しそうに動き回る作業員らと幾度も擦れ違った。約13年ぶりとなる再稼働のため、技術系社員約500人のうち4割ほどは運転経験がない。設備面の工事は完了したが、社員のスキル向上が不可欠となる。東北電は運転シミュレーターなどを使って訓練を進める考えだ。

 阿部正信所長は「安全対策に終わりはなく、再稼働に全力を尽くしていく」と強調した。再稼働を目指す中、今後も徹底した安全管理と住民への丁寧な説明が求められる。

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