日米の「ヘルスリテラシー」の差とアメリカの世界基準ともいわれるサプリメントの品質基準を専門家が解説

新型コロナ流行の影響もあり、近年世界的に高まっている健康志向。それに合わせ、健康食品(サプリメント)市場も成長を続けています。

しかし、日本ではまだまだ健康や医療に関する知識を個人が十分に持っているとは言えない状況です。

今回は日本とアメリカの「ヘルスリテラシー」の差や、サプリメント市場でトップを誇るアメリカのサプリメント品質の高さと安全性について、一般社団法人日本健康食品・サプリメント情報センター(Jahfic) 理事・宇野文博さんに話を伺っています。

日本は個人のヘルスリテラシーが低くアメリカは高い?

「ヘルスリテラシー」とは、健康や医療に関する情報を入手し理解、活用するための能力のこと。アメリカ国民はこの能力が高く、日本国民は低いと言われています。

その理由としては、日本では個人のヘルスリテラシーを向上させる必要が少ない状況にあることが考えられます。日本は国民皆保険などの理由から容易に医療にかかれる環境にあり、「病気になったら病院へ気軽に行ける」という感覚がヘルスリテラシーの向上を阻んでいると推測できます。

一方、医療に多額の費用が掛かるアメリカでは、日本ほど気軽に病院に行くことはできません。たとえば胃腸炎(初診)で病院に行ったとしても日本では 3,000 円程度の費用負担のところ、アメリカだと約 1.6 万円~3.2 万円もの費用が掛かってしまいます。

このような状況の中、アメリカでは 1994 年に国民が自力で健康を守ることを目的とした DSHEA法(栄養補助食品健康・教育法)を施行。この法律は「ダイエタリーサプリメント」(≒健康食品)の有効性を表示できるようにし、消費者のヘルスリテラシーを向上させ、疾病を予防することにより医薬品に頼らないようにしようと設けられたものです。

施行後はドラッグストアチェーンを中心にサプリメントの適切な販売が始まり、消費者のヘルスリテラシーが向上。健康食品の購買意欲が高まり、市場拡大にも繋がったのです。

アメリカの品質管理は世界基準

DSHEA法に加え、アメリカ国民の健康意識の底上げに一役買ったのが「ナチュラルメディシン・データベース(NMDB)」です。 NMDBは世界中の健康食品、サプリメントの有効性や安全性などをエビデンスによってレビューしている世界でもっとも権威のあるデータベースです。

アメリカ軍や、医療現場をはじめエンドユーザーが自身の健康を守るための資料として使用するなど、幅広く頻繁に利用されていることが推測できます。

また、アメリカでは製造工程において「cGMP基準」と言われる基準をクリアした工場で製造されたもの以外は、ダイエタリーサプリメントを名乗り、販売することが禁じられています。

GMPとは、製造における人為的な誤りを最小限にとどめること、医薬品の汚染と品質変化を防止すること、高度な品質を保証することの 3 点を目的とした、医薬品の製造とその品質管理に関する国際基準であり、cGMP基準は最新のGMPを意味します。

誰が製造しても、成分のばらつきや変化、異物の混入などが起こらず、安定した品質の商品を製造できるようにすることを目的に、原材料の入荷、製造、出荷まですべての過程を徹底的に管理したもので、そのガイドラインは 815 ページにも及びます。

このようにアメリカではサプリメントに関し、世界基準と言われる品質管理の基準を設けています。

アメリカ基準のサプリメント摂取で医療費が削減

アメリカの CRN財団の調査結果によると、アメリカで医療費の多くを占める「冠動脈心疾患」「認知症」「加齢性眼疾患」「骨粗鬆症」などにおいて、「ダイエタリーサプリメント」の摂取習慣が医療費の削減につながっていることが明らかとなっています。

(出典:『Supplements to Savings』2022|CRN FOUNDATION| https://www.crnusa.org/sites/default/files/HCCS/00-CRN-Supplements-to-Savings-2022- FullReport.pdf)

これは、アメリカのcGMP のルール下で流通した製品の摂取が、医療費の適正化に寄与していることを示す数値となります。通院件数が減った、など直接的な数値で表すことは難しいですが、同じくらい価値のある結果といえるでしょう。

日本でもこれからますます広がっていくであろうサプリメント市場。それぞれがヘルスリテラシーを高め、サプリメントに関する正しい知識、理解をし、高い品質管理基準の下で作られた安全・安心なサプリメントを摂取することが重要です。

一般社団法人日本健康食品・サプリメント情報センター 理事 株式会社 同文書院 代表取締役 宇野文博氏

2011年一般社団法人日本健康食品・サプリメント情報センター理事就任、2018年健康食品・ サプリメントの健全な流通を考える会発起人。現在、株式会社 BECENMJ・株式会社 DBS 代表取締役、一般社団法人 日本健康食品・サプリメント情報センター、健康指導支援機構理事、また日本自然科学書協会、日本栄養学教育学会幹事を務める。

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