大島紬の可能性探る 「あまみならでは学舎」=染色職人・元さんが講演、伝統工芸の価値、継承考える

鹿児島県立奄美図書館生涯学習講座「あまみならでは学舎」の2024年度第2回が8日、奄美市名瀬の同館研修室であった。市民ら52人が受講。大島紬の織元、はじめ商事代表取締役で染織職人の元允謙(ただあき)さん(43)を講師に、受講者らは奄美大島が誇る伝統工芸の価値と継承について考えた。

講師の元さんは07年から大島紬製造に従事。「奄美の伝統と技術で新しい物創り」をテーマ掲げ、染色職人としても精力的に創作活動を行う。22年には伊フェラーリ社とコラボレーションし、内装に大島紬の技術を用いたオリジナル生地「奄美布」が使われるなど、伝統工芸の新たな発展を模索する。

講演では「大島紬の可能性」と題して登壇。大島紬の歴史や定義のほか、「伝統に培われた技術は本場大島紬だけにとどまらず、工程を分解し再構築することで、新たな製品を生むことができる」とし、「締め」や「染め」、「織り」など30以上に及ぶ工程の「技術の価値」を事例を交えて紹介した。

元さんは「小物などの二次加工品は他地域でも作れるが、泥染めなど、大島紬の工程にある技術を生かせるのは産地の奄美大島だけ。技術の顕在(見える)化により、製造環境が守られ、伝統継承へとつながる」と語った。

同市出身で東京都在住の泰文奈さん(21)は「ゲーム会社に勤めており、企画中の登場人物に大島紬に携わるキャラクター設定ができないかと考え、勉強のため聴講した。世界に通用する技術だと知り、まったく違う分野ではあるが、私も奄美の『可能性』を発信できるようなものを作りたい」と話した。

大島紬の技術価値について語る元允謙さん=8日、県立奄美図書館

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