イングラムは降格裁定でBMWのヒル連勝。フォードの王者サットンも待望の今季初勝利/BTCC第4戦

 ドライバーズコースとして名高い英国が誇る超高速トラック、スラクストンにて6月7~9日に開催されたBTCCイギリス・ツーリングカー選手権第4戦は、レース2を制覇して通算30勝に到達したかと思われた2022年王者トム・イングラム(ブリストル・ストリート・モータース・ウィズ・エクセラー8/ヒョンデi30ファストバック Nパフォーマンス)が、最終シケインの攻防により「不当なアドバンテージを得た」とみなされ降格処分に。

 代わってオープニングヒートの覇者ジェイク・ヒル(レーザー・ツールズ・レーシング・ウィズ・MBモータースポーツ/BMW 330e Mスポーツ)が連勝を手にするリザルトとなり、最終レース3ではディフェンディングチャンピオンのアシュリー・サットン(NAPAレーシングUK/フォード・フォーカスST)が待望の今季初勝利をマーク。開幕から連続表彰台記録を続けていた王者が選手権リードを拡大している。

 前戦スネッタートンのフルコース“300”でシートを獲得し、セッション首位タイムからワン・ツーにも貢献するなど鮮烈なスピードを披露していたボビー・トンプソン(ゼウス・クラウド・レーシング・ウィズWSR/BMW 330e Mスポーツ)が、このラウンドを前に「資金的なサポートの障害」で急転直下、参戦見合わせの憂き目に遭う悲しいニュースで始まった週末は、ヒルとイングラムがフリー走行から火花を散らす展開に。ここで実力者同士のFF対FR予選真っ向勝負を制したヒョンデの元王者が、今季2度目のポールポジションを獲得した。

「今日のマシンは素晴らしかった。一生懸命に取り組んできたが、レースウイークに自信を持って臨むことができるよ」とタイトル争いの重要な1日となる可能性がある決勝に向け、準備を整えたイングラム。

「最初からクルマは活き活きと感じたし、チームの全員が素晴らしい仕事をした。今日は今季最大の予選日で、ここは厳しい場所だし全員が非常に緊張していたんだ。この場所を攻略するのは本当にユニークなチャレンジで、いつも本当に楽しんでいるサーキットではあるが、すべてが揃う必要があるんだ。明日はポイント獲得の可能性を最大限に高める必要があるね」

 しかし迎えたレース1で主役の座をさらったのはヒルのBMWで、グリーンシグナル点灯と同時に2列目3番手から飛び出したトラクションに優れるFR車両は、フロントロウに並ぶポールシッターのヒョンデと、その隣に陣取ったダン・カミッシュ(NAPAレーシングUK/フォード・フォーカスST)の間を縫うように首位浮上に成功。序盤のセーフティカー(SC)介入にも動じず、カミッシュとサットンのフォード艦隊をノーミスで抑え切っての今季3勝目を飾った。

まずは2022年王者トム・イングラム(ブリストル・ストリート・モータース・ウィズ・エクセラー8/ヒョンデi30ファストバック Nパフォーマンス)が予選最速を記録する
スラクストン現地では“Kids-in-Motorsport”のアクティビティも催された
ダン・カミッシュ(NAPAレーシングUK/フォード・フォーカスST)も予選フロントロウに滑り込む
レース1スタートで主導権を握ったジェイク・ヒル(レーザー・ツールズ・レーシング・ウィズ・MBモータースポーツ/BMW 330e Mスポーツ)

■最終シケインでの動きが「不当なアドバンテージ」に相当

 このヒートで最上位スタートの栄誉に対するビハインドとして、共通ハイブリッド機構の出力を絞られ4位にまでドロップしていたイングラムは、続くレース2で前方の3台を鬼気迫るドライブで追い詰めると、まずはシケインでカミッシュに肉薄。ボディを寄せサイド・バイ・サイドの勝負を演じた影響で、インカット防止のタイヤスタックを避ける動作をしながら、まずはフォードの一角を仕留める。

 続いて照準をサットンに合わせると、今度は首位攻防のなかヒルのBMW 330e Mスポーツに迫ったサットンのフォード・フォーカスSTが姿勢を乱し、後半セクターで派手なスライドを演じてフロントスプリッターを破損してしまう。

 これで残すはBMWのみとなったヒョンデのエースは、狙い澄ましたラインクロスのスイッチバックムーブでヒルを仕留め、今季3勝目を飾った……かに見えた。しかしスチュワードはカミッシュを巻き込んだ最終シケインでの動きが「不当なアドバンテージ」に相当するとしてタイム加算となり、イングラムは3位へと降格。結果的にヒルが連勝で今季4勝目を手にすることとなった。

 迎えた最終ヒートは、グリッド4番手から蹴り出しこそ遅れたものの、猛チャージを披露したチャンピオンが前方3台を蹴散らす展開に。まず僚友カミッシュの前に出たサットンは、好調ジョシュ・クック(LKQユーロ・カーパーツ・ウィズ・シネティック/トヨタ・カローラGRスポーツ)も早々に仕留めると、勢いに勝るフォード艦隊がリバースポールシッターのアダム・モーガン(チームBMW/BMW 330e Mスポーツ)に襲い掛かる。

 そのままシケイン切り返しで難なく首位攻略に成功したサットンは、僚友を従え今季初勝利を獲得。2位カミッシュの背後では、名門ウエスト・サリー・レーシング(WSR)との激しい肉弾戦でやり返したイングラムが、意地の表彰台をもぎ取った。

「ようやく重荷が下りた」と、まずは表彰台中央の位置にカムバックを果たした勝者サットン。

「今週末も最速のマシンではなかったが、今は最高の気分だ。昨年とほとんど同じで、週末に初勝利を収めることができたのは最高だし、チーム全体にとって大きなご褒美だ」

「レース1ではハイブリッドが絞られているにも関わらず、思わぬ挽回が見せられた。続くレース2ではペースが良かったが、切り返しのコンプレックスでジェイク(・ヒル)と接触してフロントスプリッターが壊れた」

「チームはレース3に向けマシンを修復するため大変な仕事をしてくれた。クルマはめちゃくちゃだったからね。スタートは最悪だったが、前進するだけの力は充分にあった。チャンピオンシップのリードは維持できが、それは(次戦)オールトンパークに着いたときハイブリッドが不足していることを意味する。そこは……楽しみじゃないね!」

 そのBTCC第5戦オールトンパークは、6月21~23日に争われる。

レース1に続き、レース2でも勝利を手にしたヒルは今季4勝目と、スタンディングでも2位に浮上
最終ヒートのレース3は、フォード艦隊が前方のWSR陣営を次々と仕留めていく展開に
ジョシュ・クック(LKQユーロ・カーパーツ・ウィズ・シネティック/トヨタ・カローラGRスポーツ)は終盤立て続けにポジションを失うことに
「オールトンパークに着いたときハイブリッドが不足していることを意味する。そこは……楽しみじゃないね!」と王者サットン

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