『瑠璃色の地球 ~風のうた パイプオルガンで聴く想い出のポップス』リリース記念、小坂明子×石丸由佳 特別対談

多彩なレパートリーを高度な技術と豊かな音楽性で弾きこなし、オルガンの魅力を多くの人々に伝えているオルガン奏者の石丸由佳。最新盤『瑠璃色の地球~風のうた』では昭和・平成を彩ったヒット曲を集め、楽器の新たな可能性と楽曲の新しい魅力を届けてくれている。今回は収録曲の一つ、「あなた」を作詞・作曲・歌唱している小坂明子を迎え、楽曲や楽器について対談して頂いた。

ふたりのはじめての出会い

ーーおふたりは2018年の「美少女戦士セーラームーン」Classic Concert 2018でご一緒されていますね。

小坂 私が書いた「美少女戦士セーラームーンCrystal」のエンディング曲「月虹」がパイプオルガンをフィーチャーした曲なのですが、こちらを石丸さんが演奏してくださいましたね。とても素晴らしい演奏で、「こんなにいい曲だったかしら!?」と感動しました。

石丸 セーラームーンが本当に大好きで、小学校のときの話題の中心でしたね。楽曲を聴くたびに場面が浮かぶのですが、特に小坂さんの「タキシード・ミラージュ」は大好きな曲でした。まさか小坂さんの作品をオーケストラと一緒に演奏できる機会があるとは…とあの時は感動でいっぱいでした。

ーー今回、石丸さんの新譜に小坂さんの代表作でもある「あなた」が収録されたのはなぜですか?

石丸 まず、ポップスを集めたアルバムにしたのは、パイプオルガンにふだん馴染みのない方にもっと聴いて頂くにはどうしたらいいだろうと考え、多くの方に愛されている楽曲にしようと思いました。そこで、音楽とは全くかかわりのない両親に聴きたい曲を尋ねたところ、父が「『あなた』だけは入れてほしい!」と言っていて。

小坂 わあ嬉しい!
石丸 学生時代、父が母や友人とスキー場に行くとき車でいつも聴いていたそうです。父にとって、そして母にとっても青春時代を彩った大切な曲で、私が生まれた後も車でかかっていたので、私にとっても思い出の曲でした。

小坂 演奏をお聴きして、「あなた」はもちろんですが、全ての曲がとても歌を意識して演奏されているなぁと感じました。オルガンで演奏するのはとても大変だったのではないですか?

石丸 ありがとうございます!そうですね、特に今回の楽器は一段鍵盤で、メロディと伴奏が同じ音量で鳴るものだったので、音のつくり方やバランスにはかなり気を遣いました。歌詞の「もしも」とか「小さな家」など、細かい歌いまわしのところで、原曲で拍から外して歌われているので、そういった表現のニュアンスを表すのが難しかったですね。

小坂 ありがとうございます!よく聴いてくださっていたのですね。演奏をお聴きして、「すごくわかってくださっている」と感じました。拍の中に収めてしまうとコードの色合いや言葉のニュアンスが変わってしまうのですよね。ここを理解してくださって嬉しいです。

石丸 ありがとうございます!頑張ってよかったです(笑)。ピアノでは打鍵で音色が変わりますが、オルガンの場合は離鍵が音の形や性格を決めるので、それを工夫し、なるべく歌っているような演奏ができるよう心掛けました。

小坂 アルバムをお聴きして、私が大好きな曲ばかりでとても嬉しく聴かせて頂きましたし、また聴いていると風景が見えてくるような感覚もありました。色々な観点から曲を選ばれていると思いますが、特に石丸さんにとって思い出深い曲はあるのですか?

石丸 やはり「あなた」は小さい頃からずっと聴いてきたというところで大きいのですが、槇原敬之さんの「遠く遠く」も大切な曲です。ヨーロッパに6年ほど留学していたのですが、なかなか海外生活に馴染めず、ホームシックになっていました。そのときずっと聴いていたのがこの曲で、遠い場所から故郷を想いながら頑張るという決意が歌われているのに凄く共感しました。今回の収録曲はそれぞれに多くの方にとっての思い出があると思います。オルガンで演奏することで、歌詞がないぶん、いろいろな想像や思い出とリンクさせながら楽曲をお楽しみ頂けたら嬉しいです。

二人の音楽活動の背景には吹奏楽があった

小坂 石丸さんがオルガンをはじめたきっかけについて伺ってもいいですか?

石丸 中学の授業でパイプオルガンを演奏しているビデオを見たのがはじまりですね。バッハの「小フーガト短調」でした。一人なのにあらゆる声部を演奏している姿を見て感動してしまって。もともと中学生になってから吹奏楽をはじめて、いろいろな楽器を演奏して楽しんでいたのですが、オルガンだったら「一人で吹奏楽ができる!」と思ったのをよく覚えています。鍵盤楽器としてより、管楽器として魅力を感じたのですよね。ちょうどその頃、地元の新潟に大きなホールが開館し、オルガンを弾けるイベントがあったのですが、そこで先生に「よく足が動くね。続けてみない?」と誘われたのがはじまりでした。

小坂 私も学生時代、吹奏楽をやっていました。そこで多くの楽器に触れられたことやフルスコアを見たことで、作曲や編曲することによって全部の楽器が奏でられる、という喜びに気が付いたのです。私たち、音楽にはまっていったきっかけが少し似ていますね!

お互いに聴いてみたいこと、そして…

ーーせっかくの機会なので、お互いに聞いてみたいことがあればぜひお尋ねください。

石丸 小坂さんの作品は聴いた瞬間に観ていたアニメの場面が浮かぶくらいに作品とすごくリンクしているのですが、作曲は実際にアニメを観てから作られたのですか?

小坂 そうです。完成品ではないのですが、絵コンテやキャラクターのデザインや設定などを見せて頂きました。ただ、作曲時点ではそれぞれのキャラクターがどんな声で話すのかなどわからないので、とにかくイメージを膨らませるのがとても大切でした。あとはそのアニメのターゲットとする年齢層などを考えるのも重要ですね。「子どもたちが聴いて歌ったり遊んだりしてくれるかな?」とかそういうことも考えながら作ったりしました。

小坂 さきほど吹奏楽の話もでましたが、石丸さんはこれからもパイプオルガンオンリーで演奏活動をされるのですか?

石丸 もちろん他の楽器もやってみたいという気持ちはあるのですが、やっぱりパイプオルガンと共に生きていくと思います。

小坂 パイプオルガンはおひとりで演奏されることが多いと思いますが、ぜひいつかピアノとオルガンのコラボレーションができたらいいですね。

石丸 それは光栄すぎます!クラシックの作品で実際にピアノとオルガンが共演するような作品もあるので、不可能なことではないと思います。

小坂 パートや音使いを工夫すれば面白いものができそうですよね。

石丸 ピアノは打楽器的要素があり、オルガンはキーを押している限りずっと音が鳴るので、オルガンをオーケストラ的に扱って、ピアノをソリスト、というようにしたらうまくコラボレーションできるかもしれません。以前、サン=サーンスの「動物の謝肉祭」でそのようなことをしました。

小坂 あえて逆のやりかたをするのも面白いかも。ピアノがカーンと鳴らした響きのなかで、オルガンが動く音型を演奏したりとか、かけあいをしたり・・・色々なことができるような気がするのです。なんだかとっても楽しそう!いつか実現しましょうね!その日を楽しみにしています。

取材・文=長井進之介

Information

石丸由佳『瑠璃色の地球 ~風のうた パイプオルガンで聴く想い出のポップス』ご購入はこちら:

https://www.kingrecords.co.jp/cs/g/gKICC-1614/
ダウンロード・ストリーミングはこちら:

https://king-records.lnk.to/Yuka_kazenouta


小坂明子 & 濱田金吾一夜限りの百年祭 ~二人でハモリたい夜だから~
開催日:7月13日(金)
イベント詳細:

https://c-laps.jp/events/240713_kosaka-hamada/

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