【水戸×愛媛戦】で見えた「勝利」への課題(2) 首位・清水エスパルスと激突 7試合ぶりに勝利【愛媛FC】「見直したい」マークの受け渡し

7試合ぶりに勝利した愛媛FC。次節、首位を走る清水エスパルスと戦う。撮影/中地拓也

明治安田J2リーグ第19節、愛媛FC(以後、愛媛)対水戸ホーリーホック(以後、水戸)戦が行われた。
試合は、前半16分に谷本駿介があげたゴールを愛媛が守り切って勝利を収めた。愛媛は7試合ぶりの勝利となり、水戸は3連敗となった。
この試合の後の6月12日の天皇杯2回戦では、愛媛はファジアーノ岡山に1-7で大勝し、水戸はロアッソ熊本に2-1で逆転勝利した。両チームともリーグ戦で出場機会にあまり恵まれていない選手が試合で活躍したので、選手間の競争意識を持たせるためには貴重な勝利だった。
6月16日に行われる第20節では、愛媛が首位の清水エスパルスと対戦する。チームとして、水戸戦での奮闘をきっかけにして粘り強く守り切れるのか。一方の水戸は、ブラウブリッツ秋田と戦う。天皇杯での勝利の流れをリーグ戦にも持ち込みたいところだ。

■愛媛の両CBが水戸の両FWを「マンマーク」

では、引き続き、リーグ戦の第19節の愛媛対水戸戦を振り返りながら、両チームの課題を見ていこう。

水戸は12分、右サイドに流れたフォワード(以後、FW)の落合陸にボールが渡り、走り込む右サイドハーフ(以後、SH)の山本隼大にパスが出る。山本は寺沼にいったんボールを預けて、自分に戻された瞬間にシュートを放つ。ボールは左ポストの脇に外れていった。
愛媛はセンターバック(以後、CB)の小川大空が落合をマークして、もう1人のCBの森下怜哉が寺沼についている。
愛媛の両CBがマンマークのように水戸の両FWをケアしている。こうした守備がいいのかどうかは疑問がある。CBの小川が左SBの山口竜弥にマークを受け渡したほうがリスクは少ないからだ。
小川がタッチライン近くまで釣り出されてしまうと、ペナリティエリアの中央の守備が薄くなってしまう。落合がタッチラインに寄って行ったときに、小川がついていくのではなく、山口が落合をケアしに行って小川は山本についていくべきだ。
そうすれば、CBの2人でラインを整えられるのだが、おそらく愛媛は戦術的にこうした受け渡しをしなくてもいいことになっているのだろう。だから、小川が落合について行ったのである。しかし、タッチラインに相手選手が行ったときは、SBが対応しないと中央にスペースを与えてしまうことになる。

■16分の愛媛の得点「水戸のGKが前に…」

この場面でも水戸の選手の選択には、もう少し工夫があってもいい。シュートを打つことは悪いことではないのだが、寺沼に預けたボールが自分に戻ってきたときに、もう一度、寺沼にボールを渡してワン・ツーで愛媛ディフェンス陣を突破できたように見える。
なぜならば、CBの小川がタッチラインまで落合をケアしていたので、ペナルティエリアには寺沼についている森下しかいないからである。戦術的にCBは相手FWについていくから、本来ならCBとSBの受け渡しの場面は行われない。したがって、ペナルティエリアにスペースができてしまう。
16分の愛媛の得点の場面。谷本が渡されたボールをトラップミスして水戸のCBの山田奈央のおなかにボールが当たって、そのボールが谷本に戻されて倒れ込みながらシュートを放つ。
水戸にとっては守っている人数も足りていたので、不運な面があった失点であるのだが、GK松原修平がかなり前に出過ぎていたように見える。ディフェンダーの裏に出てこられると考えたのか、ポジションを前にとっている。通常のポジショニングをしていればシュートには届いていた。
後半になっても水戸は積極的にゴールを狙うのだが、同点弾は生まれなかった。試合を通して見れば、愛媛の粘り強い守備が水戸の単調な攻撃を抑えたと言っていい。
愛媛は、守備に関する戦術がマイナスに働いているように見えた。受け渡しをしたほうがいい場面でもマークにこだわるやり方は、失点を増やすことになる。
水戸は、選手のプレー選択のアイデアにもう少し工夫があってもいい。「ここはパス」で「そこはシュート」の選択が逆のケースが目についた。
たとえば、後半開始早々の新井のプレーがそれを象徴している。左サイドからペナルティエリアに切り込んで行った後、中央にパスを選択した。
思い切ってシュートを打ってもいい場面だった。選手のプレーにもう少し工夫があれば得点を奪うことはできる。次節の秋田戦では、選手がどんなプレーを選択するのかに注視して見てみたい。

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